月間分析レポート[2022年12月]

2022年11月と比べて検索数の上昇が顕著だったHRワードは「諭旨解雇」「ホワイト企業」「2025年問題」でした。上昇の要因と検索意図について考察します。

諭旨解雇

諭旨とは趣旨を諭し、告げるという意味です。「諭旨解雇」とは、企業が従業員に対して、最も重い処分である懲戒解雇に相当する事由がありながら、企業の酌量により懲戒解雇よりも処分を若干軽減した解雇のことをいいます。企業と従業員が話し合い、あくまでも両者納得の上で行われる解雇処分です。

12月28日に、帝京大学の男性教授がハラスメント行為によって「諭旨解雇処分」を受けたというニュースが報道され、検索回数が増えました。ゼミに応募した男子学生に対して、教授が「あなたが女子だったら、優先的に採る」などと回答したことがわかり、大学側が処分を発表しています。この対応は、学生に対して絶対的優位の地位にある「教授」によるハラスメント行為であり、広く学生を受け入れるべき大学において、またダイバーシティの観点からも逸脱した行為といえます。

サジェストワードでは「諭旨解雇 とは」が検索されていました。解雇には「懲戒解雇」などの似た言葉があり紛らわしいため、検索されたと推測できます。「諭旨解雇 退職金」も検索されています。諭旨解雇となった場合に退職金の扱いがどうなるのかを知りたい人が検索したと思われます。諭旨解雇の場合は企業の退職金規程を確認する必要があり、自己都合退職と同様に扱うとしている場合は、通常通り支払われます。

他には「諭旨解雇 転職」が検索されています。諭旨解雇となった場合に再就職にどのような影響があるのかを知りたい人が検索したと考えられます。諭旨解雇の場合は通常の退職として扱われるため、基本的には諭旨解雇された経歴が転職時に分かることはないでしょう。

「諭旨解雇」についてもっと知る

ホワイト企業

「ホワイト企業」は、社員の待遇や福利厚生などが充実し、企業の中でも働きやすさにおいて特に優れている企業という意味合いで使われます。ホワイト企業に共通する特徴として、「待遇が良い」「離職率が低い」「残業が少ない」「休暇が取りやすい」「福利厚生が充実している」「誰もが働きやすい環境がある」などがあります。就職や転職で企業を調べる際に、ホワイト企業かどうかを意識する人は少なくありません。

12月は複数の日で検索回数が増えていました。2024年卒が就活解禁になる2023年3月に向けて、「ホワイト企業」への関心が高まっていると考えられます。また、全国新聞紙や全国放送のテレビなど複数のメディアで、「ホワイトすぎる職場」というテーマのコンテンツが発信されたことも影響している可能性があります。これらのコンテンツでは、社内の規律が緩かったり、負荷の軽い仕事しか任されなかったりする労働環境だと、若手社員は「成長機会が少ない」と感じ、離職につながるケースがあると述べています。

サジェストワードでは「ホワイト企業ランキング」が検索されていました。「ホワイト企業」の企業名や労働環境を知りたい人が検索したと推測されます。ホワイト企業はさまざまなメディアや企業によって選定されており、ランキングは複数あります。厚生労働省にはホワイト企業に関連する要素を示す「安全衛生優良企業認定 ホワイトマーク」制度もあります。

また、「ホワイト企業 転職」も検索されています。「仕事環境をより良くしたい」と考え、ホワイト企業への転職を考えている人が検索したと推測されます。そのほかには「ホワイト企業 特徴」が検索されていました。ホワイト企業にどのような特徴があり、どのように見分けるのかを知りたい人が検索したと考えられます。

「ホワイト企業」についてもっと知る

2025年問題

「2025年問題」とは、2025年頃に日本の人口のボリュームゾーンである“団塊の世代”の人々が、75歳以上の後期高齢者になることによって起きる、社会におけるさまざまな問題を指します。75歳を境に要介護(要支援)になる可能性が高まり、2025年頃には医療・介護などの負担と給付のバランスが崩れ、持続可能な社会保障財政の運営にも影響がおよぶことが懸念されています。

12月下旬に向けて検索回数が増えましたが、12月中に複数のメディアで取り上げられたことが影響したと考えられます。また、2023年への変わり目が近づくにつれて、「2025年問題」まで2年しかないことを認識し、関心が高まったことも考えられます。「2025年問題」に起因する人材不足は介護分野だけでなく、製造業界やIT業界、小売業界やサービス業界などにも影響が波及すると予測されています。解決策にはICT(情報通信技術)の活用による生産性向上などがありますが、ICTの活用は十分に進んでいないのが現状です。

サジェストワードでは「2025年問題 2040年問題」が検索されています。2040年問題とは、団塊ジュニア世代が高齢者(65歳以上)になることで、高齢者人口が最大になる2040年頃に直面する財政問題や社会保障などへの問題のことです。2025年から2040年の15年間で現役人口(20歳~64歳)が約1000万人減少すると予測されており、日本はこれまで経験したことのない「超高齢化社会」を迎えます。

ほかに特徴的な検索は「2025年問題 IT」です。同じ2025年でも「2025年の崖」と混同した人がいたことが推測されます。「2025年の崖」とは、現状、企業が使用している既存のITシステムにおいて、現在の課題を克服できずにデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進できなかった場合、2025年以降に生じてくるさまざまなリスクのことです。経済産業省のレポートによれば約4兆円の経済損失が発生すると推測されています。

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