月間分析レポート[2022年9月]

2022年8月と比べて検索数の上昇が顕著だったHRワードは「給与デジタル払い」「106万円の壁」「リスキリング」でした。上昇の要因と検索意図について考察します。

給与デジタル払い

「給与デジタル払い」とは、従業員の給与を現金で支払ったり銀行口座へ振り込んだりするのではなく、決済アプリなどの資金移動業者のアカウントに支払うこと。厚生労働省が中心となり、デジタル時代の新たな給与の支払い方法の実現を目指して検討が進められています。導入によって、労働者は賃金の受け取る方法の選択肢が増えること、企業は多様な支払い方法を用意することで労働者を確保しやすくなることなどの効果が期待されています。

2022年9月には、労使の代表などでつくる審議会が開催。厚生労働省が「給与デジタル払い」の最新案を示し、おおむね議論は尽くされたとして国への答申に向けた詰めの作業を進めることになりました。こうした審議会の動きから注目を集めたと考えられます。

審議会の資料によると、資金移動業の利用状況は2020年度で年間送金件数1,006百万件(前年比110%増)、年間取扱額42,555億円(前年比81%増)と大きく増えています。また、利用意向の調査(2020年)では、決済アプリを利用していると回答した4000人のうち約4割が、自身のアカウントに賃金の一部を振り込むことを検討すると回答しており、一定のニーズがあると考えられます。

サジェストワードでは「給与デジタル払い いつから」が検索されているため、解禁される時期を気にする人がいたと考えられます。なお、現状では2023年4月に解禁される見通しです。

「給与デジタル払い 厚生労働省」というサジェストワードも検索されました。厚生労働省のHPを使って「最新で正確な情報を知りたい」と考える人がいたと推測されます。

また、「給与デジタル払い デメリット」というサジェストワードも検索されました。給与デジタル払いを懸念する声として「資金移動業者が経営破綻したときの補償はどうなるのか」「個人情報保護の観点からセキュリティーを確保できるのか」「出金や資金移動時に手数料がかかる」などが挙がっており、これらを気になる人が検索したと推測されます。

「給与デジタル払い」についてもっと知る

106万円の壁

「106万円の壁」とは、社会保険の扶養に入るかどうかの境目を表現した言葉です。2022年10月から、社会保険適用拡大によって、従業員101人以上の企業であれば、週所定労働時間が20時間以上、かつ月収が平均8万8000円(年収約106万円)以上などの条件を満たす短時間労働者は、新たに社会保険の適用対象となりました。扶養から外れると自分で社会保険料を支払うことになり、手取り収入が減ります。

2016年に社会保険の適用拡大が行われたときは従業員501人以上の企業が対象でしたが、2022年10月より「101人以上の企業」に拡大されることで、注目を集めたと推測されます。

サジェストワードでは「106万円の壁 2022」と検索されており、2016年時の改正内容ではなく、2022年の改正内容を特定するために検索されたと推測されます。

「106万円の壁 条件」とも検索されています。2022年10月現在の条件は「1ヵ月の賃金が8万8000円(見込み年収106万円)以上」「労働時間が週20時間以上」「勤務期間が2ヵ月以上見込まれる」「勤務先が従業員101人以上の企業」「学生以外」です。どんな人が改正の対象になるのか、当事者としても、企業の人事担当者としても気になっているのではないでしょうか。

類似の言葉として「130万円の壁」があり、「106万円の壁 130万円の壁 違い」も検索されています。「106万円の壁」の条件に該当しない場合でも、給与収入が130万円を超えるとすべての人が社会保険の扶養から外れることになります。このことを「130万円の壁」と呼んでいます。

「106万円の壁」についてもっと知る

リスキリング

「リスキリング(Reskilling)」とは、職業能力の再開発や再教育のことです。近年では、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略において、新たに必要となる業務・職種に順応できるように、従業員がスキルや知識を再習得するという意味で使われるケースが増えています。

最近は、政府もリスキリングに注目。9月には岸田文雄首相がニューヨーク証券取引所での講演でリスキリング支援を強化する方針を示し、総合経済対策の重点分野としてリスキリングなど人への投資を挙げたことで、多くの人がリスキリングに関心を持つようになりました。

2022年9月25日に初回放送されたNHKスペシャルで「リスキリング」が紹介されたことも、検索回数の増加につながったと考えられます。放送では、賃金アップにつながる成長産業を生むため、リスキリングに取り組む日本企業などが紹介されました。

「リスキリング」はHRトレンドワードの2022年6月度の月間分析レポートでも取りあげています。2022年6月には「日本リスキリングコンソーシアム」が発足。主幹事をGoogleが務め、国や地方自治体、民間企業などが一体となって、日本のあらゆる人のスキルをアップデートする「リスキリング」に取り組もうとしています。

サジェストワードでは「リスキリング とは」といったワードが検索されました。「リスキリング」という言葉の知名度は高まってきましたが、その概要はあまり知られていないことから検索されたと推測されます。

同様に、「リスキリング 何を学ぶ」というサジェストワードも検索されており、リスキリングについてより理解を深めようとする検索意図が読み取れます。

「リスキリング」についてもっと知る

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