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掲載日:2022/12/02

企業人事の実態に関する調査結果を発表

従業員視点を重視する人事部の非管理職層 戦略人事実現に向けては、
経営視点・事業部視点の育成・強化が必要

 

株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都港区、代表取締役社長:萱野博行)は、企業人事の実態に関する調査結果を発表いたします。

本調査は、企業人事の実態を明らかにすべく経営層・人事部管理職層を対象に実施した前回調査(2022年5月リリース)に続き、「人事部の非管理職層」に焦点を当てたものです。人事部の非管理職層社員のキャリア志向などの実態を定量的なデータで把握することにより、前回調査にて実現率が29.7%であった戦略人事※1の推進に向けた取り組みのポイントを見いだすことを目的に実施しました。

※1 戦略人事(戦略的人的資源管理):本調査では、「経営資源の一つである『ヒト』の価値を最大化するために、経営戦略と連動した人事戦略を策定・実行すること」を指す。『人事戦略』との大きな違いは、「企業のミッションや経営目標」にコミットしているか、否かという点。
 

■要旨

  1. 人事部の非管理職層が、これまでに経験したことのある人事職域は「人材採用」「労務管理」が多い傾向
  2. 人事部の非管理職層が、今後経験したい人事職域ついては、「組織開発」「人事戦略・企画」「人材開発・育成」に対して意向が高く、「人事管理」「労務管理」「労使管理」に対して意向が低い傾向
  3. 人事部の非管理職層の管理職意向は、「人事戦略・企画」「人材開発・育成」の担当者では高く、
  4. 「労務管理」「人事管理」「HRテクノロジー推進/人事データ活用」の担当者では低い傾向
  5. 人事部の非管理職層がやりがいを感じる業務の特性は、「従業員対応」「従業員支援」「専門性発揮」
  6. 人事部の非管理職層が業務上、強く意識している視点は、「従業員側の視点」
  7.  人事部の非管理職層の70.7%の人が何らかの学習行動をとっている
     

■  調査結果概要

① 人事部の非管理職層が、これまでに経験したことのある人事職域は「人材採用」「労務管理」が多い傾向

人事部の非管理職層の総合職478人に対し、これまでに経験したことのある人事職域を聞いたところ、「人材採用」(61.9%)、「労務管理(給与・勤怠・福利厚生)」(57.1%)が多い。しかし、労務管理は「経験があり、今後やりたくない」人も33.9%と多い。「人事戦略・企画」「組織開発」は、「経験はないが、今後やりたい」人が多い傾向がある。
 

② 人事部の非管理職層が、今後経験したい人事職域ついては、「組織開発」「人事戦略・企画」「人材開発・育成」に対して意向が高く、「人事管理」「労務管理」「労使管理」に対して意向が低い傾向

人事部の非管理職層(総合職)に、経験したことのある人事職域に対して、今後もやってみたいかの経験意向を聞いたところ、「組織開発」「人事戦略・企画」「人材開発・育成」への意向が高く、「人事管理(評価・報酬・異動管理)」「労務管理(給与・勤怠・福利厚生)」「労使管理(組合交渉・転身支援など)」への意向が低い結果となった。また、未経験だけれどやってみたい人事職域については、「人事戦略・企画」への意向が28.9%と最も高い。
 

③ 人事部の非管理職層の管理職意向は、「人事戦略・企画」「人材開発・育成」の担当者では高く、「労務管理」「人事管理」「HRテクノロジー推進/人事データ活用」の担当者では低い傾向

人事部の非管理職層(総合職)に対し、現在担当する人事職域別にキャリア意向を聞くと、「人事戦略・企画」「人材開発・育成」の担当者では管理職意向が高く、「労務管理(給与・勤怠・福利厚生)」「人事管理(評価・報酬・異動管理)」「HRテクノロジー推進/人事データ活用」の担当者では管理職意向が低い傾向が見られた
 

④ 人事部の非管理職層がやりがいを感じる業務の特性は、「従業員対応」「従業員支援」「専門性発揮」

総合職に限らず人事部の非管理職層650人(*)がやりがいを感じる業務の特性を見ると、「現場に寄り添い困りごとを解決している」などの『従業員対応』、「社員の成長を感じる機会がある」などの『従業員支援』、「高い専門性・スキルを要する仕事をしている」などの『専門性発揮』において、やりがいを強く感じる傾向が見られた。
*「総合職」に加え、「地域限定総合職」「一般職」の人を含めた対象者に調査。
 

⑤ 人事部の非管理職層が業務上、強く意識している視点は、「従業員側の視点」

人事部の非管理職層に、誰の視点を意識しながら仕事をしているかを聞いたところ、全体的に、経営視点に近い「人事部長」の視点や、事業部視点に近い「事業部長」の視点よりも、「従業員」の視点を強く意識している傾向が見られた。
 

⑥ 人事部の非管理職層の70.7%の人が何らかの学習行動をとっている

人事部の非管理職層に学習行動について聞いたところ、総合職の70.7%の人が、「人事労務に関することを自ら学んでいる」「人事労務以外の領域(経営や心理学など)について自ら学んでいる」「人事に関する勉強会・交流会に参加している」のいずれかの学習行動をとっている。
 

■分析コメント

戦略人事の実現に向けて、《従業員視点》に加え、《経営視点》《事業視点》を身につけるための育成プログラムやタレントマネジメントが求められる

企業の経営層・人事部管理職層を対象とした前回の調査(2022年5月リリース )では、戦略人事を実現できている企業が29.7%であることから、戦略人事の実現がまだ道半ばである実態が見えた。そこで今回は、将来的に今後の戦略人事の推進を担うと考えられる人事部の非管理職層に対して、どのような視点を意識し、どのようなキャリアを志向しているのかを調査することで、戦略人事の今後の実現に向けた企業における取り組みのカギを探った。

今回の調査からは、人事部の非管理職層は、従業員に寄り添った視点を意識的に持っている人が多く、人事職域の経験意向や昇進意欲の傾向から、多くが「従業員目線に立った人事企画や人材開発・育成」を好んでいる様子もうかがえた。また、7割の人が人事業務に関する学習を自ら行っているなど勉強熱心な側面も見て取れた。

人事企画や人材開発・育成は重要な人事の役割であり、それらの役割を志向する割合が高いことや、従業員に寄り添う視点、学習行動の実態は素晴らしいものだ。一方で、経営や事業部の視点に対する関心度については、今後の戦略人事の実現において懸念が残る。戦略人事には、《従業員視点》、《事業視点》、《経営視点》の3つの視点が必要だ。特に、そのうちの《経営視点》については、次世代経営人材プールに早々にエントリーされるようなポテンシャルと意欲を持つ人材を、人事部に配置することが欠かせない。人事部としてのタレントマネジメントが求められているといえよう。

また、今後の経験意向が比較的低かった「人事管理」「労務管理」「労使管理」といった人事運用の業務は、人事の基幹となるような難度の高い業務である。ともすれば、定型的な運用に陥りがちなそれらの業務の本質的な意味や価値を理解し、経験することで、事業部門とのハブとなるHRBP(Human Resource Business Partner)※2の育成にもつながる。定型的な業務部分はできるだけアウトソースしつつ、《まさに人事》というべき高難度のこれらの業務を人事部の非管理職層が経験できるプログラムを用意することも必要だろう。

※2 HRBP:戦略人事実現のため、事業部の経営目標を人事観点から支援する役割・組織。
 

■調査概要
調査名:人事部大研究 -非管理職の意識調査
調査内容:
・人事部に所属する非管理職から見た人事部の魅力と課題を明らかにする
・人事部に所属する非管理職のキャリア意識の実態を明らかにする
・戦略人事実現企業における人事部に所属する非管理職のキャリア意識や育成環境を明らかにする
調査対象:全国の正社員 20~64歳男女 従業員規模300名以上企業対象 一般社員・従業員、係長相当除く、農業、林業、漁業、鉱業
※人事部以外非管理職は、事務職、理美容師、医療・福祉専門職、教育関連、幼稚園教諭・保育士、その他職種を除く

調査時期:2022年 6月16日-20日
調査方法:調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
調査実施主体:株式会社パーソル総合研究所
※報告書内の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計と内訳の計は必ずしも一致しない場合がある。
※凡例の括弧内数値はサンプル数を表す。
※第1回調査とは異なり、日系企業・外資系企業を問わずに分析を実施(日系企業が全体の92.3%を占める)。

 

◆本調査の詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社パーソル総合研究所 / 11月28日発表・同社プレスリリースより転載)