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掲載日:2022/04/28

第9回 働く人の意識調査

調査研究や提言、実践活動により生産性向上をめざす公益財団法人 日本生産性本部(東京都千代田区、会長:茂木友三郎)は4月22日、新型コロナウイルス感染症が組織で働く人の意識に及ぼす影響の継続調査(第9回「働く人の意識調査」)結果を取りまとめ、公表しました。本調査は、組織で働く雇用者を対象に、勤め先への信頼度や雇用・働き方に対する考え方などについて、2020年5月以降、四半期毎にアンケートにより実施しているものです。9回目となる今回は、国によるまん延防止等重点措置の解除後、約3週間が経過し第7波の予兆が懸念される4月11日(月)~12日(火)、20歳以上の日本の企業・団体に雇用されている者(雇用者=就業者から自営業者、家族従業者等を除いたもの)1,100名を対象にインターネットを通じて行いました。


【第9回「働く人の意識調査」概要】
調査結果から、前回に続き働く人の景気見通しが一段と悲観的になり、新型コロナの新規感染者数の高止まりや円安・物価高が生活に影を落としていることが確認されました。テレワーク実施率は、過去最低を記録した前回から20.0%に微増。背景には、感染に対する中堅・大企業の慎重姿勢があるものと推察されます。また、在宅勤務の満足度は84.4%と過去最高を記録し、約2年前(2020年5月調査)の57.0%から大幅な伸びとなりました。さらに、今回の調査で新設した職場における生産性向上への取り組みに関しては、何らかの取り組みを経験した雇用者は4~5割に上り、テレワーカーと非テレワーカーの取り組み実施率に大きな差があることが明らかになりました。主な特徴は以下の通りです。


【第9回「働く人の意識調査」主な特徴】

1. わが国の景況感:現在の景気、今後の景気見通しともに悲観的な見方が強まる

  • 現在の景気について、悲観的な見方(「悪い」「やや悪い」の合計)は67.6%と、前回の66.4%より僅かながら増加。
  • 今後の景気見通しについて、悲観的な見通し(「悪くなる」「やや悪くなる」の合計)が51.4%と2回連続で増加。新型コロナの新規感染者数が高止まり、円安や物価高が生活に影を落とす等、働く人の景気見通しは一段と悲観的になっている。
     

2. 労働時間等の変化:労働時間・業務量・家事時間がすべて増加、家事時間は女性に偏り

  • 3か月前(1月頃)と比べた労働時間、業務量、余暇時間、家事時間の増減について、各項目を「増加した」(「増加した」「どちらかと言えば増加した」の合計)から、「減少した」(「減少した」「どちらかと言えば減少した」の合計)を引いた割合(D.I.:Diffusion Index)をみると、余暇時間以外は、全てのD.I.がプラスとなり、「増加」の割合が「減少」の割合を上回った。業務量D.I.は+8.8、労働時間D.I.は+4.5と、これまでで最多。経済活動がコロナ禍以前に回復しつつある一方で、余暇時間が削られている構図。
  • 性別の家事時間D.I.は、男性・女性ともプラスであり、3か月前より増加。男性+3.7、女性+10.6と、今回も女性の家事時間増加の割合が男性を上回っており、働く女性の家事負担が男性と公平ではない状態は解消していない
     

3. 職場における生産性向上の取り組み:従業員規模やテレワーク有無で実施率に差

  • 最近1年間の職場(*1)での生産性向上への取り組みについて、「業務の進め方の効率化」「情報共有の推進」「業務の改廃」「コストの削減」「商品やサービスの改善」「新商品や新サービスの提供」という6つの典型的な項目を挙げて質問した。「取り組みが行われたか」という質問に「当てはまる」「やや当てはまる」と回答した割合の合計は、「業務の進め方の効率化」が52.0%と最多。「情報共有の推進」が51.8%と僅差で続き、次いで、「コストの削減」46.1%、「業務の改廃」43.6%。上記のように生産性を「産出÷投入」で表した場合の投入を削減する取り組みの実施率が比較的高いのに対し、「商品やサービスの改善(社内向けサービスを含む)」40.5%、「新商品や新サービスの提供(同)」38.7%と、産出の増大に関わる取り組みの実施率はやや劣る。
    (*1)本設問の結果は、「職場」単位での生産性向上への取り組みの実施割合ではなく、最近1年間に同取り組みを経験した雇用者の割合として理解されたい。
  • 従業員規模別では、特に100名以下の中小企業と1,001名以上の大企業の間に、「業務の進め方の効率化」で20ポイント以上、その他の取り組みでも16~18ポイント前後の差がある。
  • テレワーカーと非テレワーカーでみると、両者の実施率は「コストの削減」以外の全ての項目で20ポイント以上の差があり、従業員規模による差を上回っている。テレワーク実施率は、従業員規模による差があることが確認されているが、職場における生産性向上への取り組みには、従業員規模以外の要因が作用していることをうかがわせる。
     

4. Off-JT、OJT、自己啓発の実施状況:OJTは低調が続く、「人への投資」は喫緊の課題

  • 最近3か月(1月以降)のOff-JTの実施状況について、勤め先からの「案内により受講した」は7.8%から6.3%に微減。「案内はあったが受講しなかった」は8.2%、「勤め先から特に案内が無かった」は85.5%。
  • OJTを行った機会と受けた機会の有無について、OJTを「行う」機会が「あった」は前回調査の13.7%から16.8%に増加。また、OJTを「受ける」機会が「あった」も17.4%に増加。「行う」「受ける」機会とも、前回調査から回復したが、実施率は2割に届かず、日常的にOJTが行われている様子は無い。低調なOff-JTと併せて、企業の人材育成力が低下している状態は変わらず、「人への投資」が喫緊の課題であることを示している。
  • 自己啓発を「行っている」は16.3%と、前回の16.8%から微減。「行っていないが、始めたいと思っている」は27.2%から28.3%に微増。雇用者の学習意欲が高いとは言えない。
     

5. 働き方の変化:テレワーク実施率は約2割で推移、在宅勤務の満足度は過去最高に

  • テレワーク実施率は過去最低を記録した前回1月調査の18.5%から20.0%と微増。
  • テレワーク実施率の微増には、前回のテレワーク実施率が過去最低となった理由と同様、中堅・大企業の実施率が寄与。具体的には、従業員数101~1,000名の勤め先では前回の22.0%から25.3%に、1,001名以上では同29.8%から33.7%へと増加した。100名以下の勤め先は前回同様11.1%。テレワーカーの週当たり出勤日数は増加に転じた。テレワーカーで週のうち3日以上出勤する者は前回の47.0%から52.7%となり、半数を超えた。
  • 在宅勤務の効率について、「効率が上がった」「やや上がった」の合計は、前回1月調査の63.3%(過去最多)から60.4%に減少。
  • 在宅勤務の満足度について「満足している」「どちらかと言えば満足している」の合計は、84.4%と過去最多を記録。約2年前(2020年5月調査)の57.0%から大きく伸びている。
  • テレワークの課題(複数回答)について、第1回調査から一貫して「部屋、机、椅子、照明など物理的環境の整備」「Wi-Fiなど、通信環境の整備」といった自宅の環境整備に係る項目が上位だったが、今回調査では両項目とも「課題」とする割合は過去最少となった。これらを含め11項目中6項目で「課題」の割合は過去最少を記録しており、テレワーカーの執務環境は、より快適なものになりつつあることを示唆

 

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(公益財団法人 日本生産性本部 /4月22日発表・同法人プレスリリースより転載)