― まずは日本エンジニアリングアウトソーシング協会の概要をお聞かせください。
「一般社団法人 日本エンジニアリングアウトソーシング協会(略称NEOA:ネオ)」は、2007年に発足した技術系アウトソーシング企業による業界団体です。その目的は、主に「業界健全化」を主導することと、この業界の主役であるエンジニア社員の「キャリア形成」に資するような政策提言に取り組むことです。
技術系アウトソーシングというビジネス自体は1970年代からあり、業務請負や技術者派遣などさまざまな事業形態で、日本の製造業のパートナーとしての地位を固めてきました。その市場規模が急速に拡大したのは1990年代からです。日本企業がグローバルで活躍するに従って、外部の経営資源を戦略的に活用することが一般的になり、人材サービス業界への期待、注目が飛躍的に大きくなったことがその一因です。
ただ、この時期、急速な市場規模の拡大に人材サービス事業者の成熟が追いつかないという現象も一部で見られるようになり、法令や社会的ルールを守らない企業が一部存在することで、人材派遣など人材サービス業界全体が、格差社会を生む原因であるといったマイナスイメージを持たれるようになってしまいました。
こうした状況の中でNEOAは、業界の健全化と公正な企業間競争の実現を推進し、産業界と社会の発展に寄与していくことを目的に、業界を代表する5社が発起人となり設立されました。NEOA加盟企業で働くエンジニアは、世の中の普通の企業の社員と同じく無期雇用のいわゆる「正社員」であることが原則です。コンプライアンスを遵守し、社会的責任を果たすための厳しい基準をクリアした技術系アウトソーシング企業のみによって構成されるNEOAは、顧客企業からもエンジニア(社員)からも信頼されるブランドです。
現在、加盟企業は11社に増え、推定1.14兆円といわれる技術系アウトソーシング業界の年間売上のうち、NEOA加盟企業の占めるシェアはおよそ13%(約1,500億円)となり、技術系アウトソーシング業界では最大の団体です。
― 具体的な活動内容をお教えいただけますか。
業界健全化の活動で、現在もっとも力を入れているのが「派遣法改正」に関する政策提言です。近年は企業の事業戦略、労働者の働き方ともに大きく変化しており、その実情にあった労働者のキャリアアップや精度の高いマッチングを実現するための法改正が行われることは、非常に重要です。
NEOAでは、「業界健全化委員会」や「政策提言委員会」などの活動を通じて、エンジニアが働きやすい環境をつくる取り組みに力を入れています。こうした活動は、経済環境や社会情勢の変化に対応して、今後も継続していきます。
そしてもう一つ力を入れているのが、エンジニアのキャリア形成サポートです。エンジニア個人の人材開発・教育研修については、原則として加盟企業が個別に行いますが、NEOAとしても、人材サービス業界団体の連携横断組織である「一般社団法人人材サービス産業協議会(JHR)」に加盟し、会員企業社員のキャリアアップに資する情報提供などを通じて支援しています。
私どもの加盟企業が、業界を代表する優良企業であることは、顧客である製造業各社にはすでに相当認知していただいていますが、採用面での支援として、全国の学生、大学関係者、保護者の方々などにも認知していただくためのパンフレットなどのツールを提供しています。
― NEOAに加盟するメリットは。
営業面において加盟企業は、新規取引先開拓の際に、「安心して取引できる」事業者であるというブランド価値を示すことができます。コンプライアンスが遵守され、またエンジニア教育にも力を入れている企業しか加盟できないという厳しい条件が、その信頼のベースになっています。
また、アウトソーシング業界にとって生命線ともいえる「人材採用」においても、この信頼は非常に有利に働いています。NEOA加盟企業には、無期雇用のいわゆる正社員として採用されるという安心感があり、さらにはキャリアアップ支援に力を入れており、エンジニアが専門技術を伸ばすことができる環境があることをご理解いただいています。
NEOAが発足した翌年(2008年)、リーマンショックがあり、製造業でもかなりの企業がアウトソーシングの活用を減少させざるを得ませんでした。NEOA加盟企業のエンジニア稼働率も大幅に低下しました。しかし、その様な局面でも雇用を守り、業務に就いていない期間を研修などに充て、受注の回復に備えました。そのため、景気が回復した際には速やかに顧客の要望に応えることができました。NEOAでは、国からの助成金情報などを加盟企業に的確に提供するなど、加盟企業の雇用維持に貢献いたしました。
― 今後の展望や業界内外へのメッセージをお聞かせください。
新たな加盟企業への門戸は常に開いていますが、今後はより積極的に優良企業の加盟を促進していきたいと考えています。NEOAの加盟基準はかなり厳しいものですが、それをクリアする企業が増えることが、業界のより一層の健全化、活性化にもつながるものと思っています。
技術系アウトソーシングは、今後も日本の製造業のパートナーとして、その重要性が拡大していくと考えます。また、専門性を重視したいと考えるエンジニアにとっては、それを実現するワークスタイルを提供できる存在だと考えます。少しでも多くの方に日本エンジニアリングアウトソーシング協会とその加盟企業の活動を知っていただければ幸いです。
(2015年8月18日 神奈川県・横浜市 アルプス技研本社にて)