エンゲージメントサーベイ用語集

エンゲージメント経営

エンゲージメント経営とは、企業と従業員双方の信頼関係を重視した経営のこと。従業員が会社の目指している方向性について深く理解・共感し、ミッションやビジョンの実現のために自律的に行動できるようになることを目指します。従業員エンゲージメントが向上するため、離職率の低下や生産性の向上などにつながります。

エンゲージメント指標

エンゲージメント指標は、企業と従業員の結びつきをあらわすエンゲージメントを数値化したものです。従業員が会社に抱く総合的な印象を数値化した「エンゲージメント総合指標」、仕事に対する熱意や没頭力を示す「ワーク・エンゲージメント指標」、従業員エンゲージメントが今後向上すると考える要因である「エンゲージメントドライバー指標」の三つから構成されています。

エンゲージメントドライバー指標

エンゲージメントドライバー指標は、エンゲージメント指標の一つで、従業員エンゲージメントを向上させるであろう要因を示します。指標を構成する項目は、会社と従業員の状態を示す「組織ドライバー」、自分の仕事に関する満足度や難易度に関する「職務ドライバー」、従業員個人の資質が仕事に及ぼす影響である「個人ドライバー」の三つにわけることができます。

ワーク・エンゲイジメント

ワーク・エンゲージメントとは、オランダのユトレヒト大学のシャウフセリ教授が提唱した概念で、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)、「仕事に誇りとやりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)の三つがそろった状態を指します。人事領域で用いられる「エンゲージメント」には、「ワーク・エンゲージメント」と会社への愛着や貢献意欲を指す「従業員エンゲージメント」の概念が含まれていると考えるのが一般的です。

組織コミットメント

組織コミットメントとは、組織に対する帰属意識を指します。その組織にいたいと感じる「情緒的コミットメント」、報酬を得るために組織にいる必要があると考える「存続的コミットメント」、組織に尽くすべきだと考える「規範的コミットメント」の三つから構成されています。従業員の組織コミットメントを高めることで、離職率の低下や生産性の向上などが期待できます。

ロイヤルティ

ロイヤルティとは、従業員の会社に対する忠誠心や帰属意識を指します。エンゲージメントでは会社と従業員は対等な立場にあると捉えますが、ロイヤルティでは「会社のほうが優位な立場にある」という主従関係の意味合いが強まります。終身雇用制や年功序列の制度と相性がよく、かつての日本企業で重視されてきた考え方と言えます。

組織サーベイ

組織サーベイとは、組織の状態を可視化するため、従業員に対する質問を通してモチベーションやエンゲージメントなどを把握する調査のことです。種類としてはエンゲージメントサーベイやモラルサーベイ、従業員満足度調査などが挙げられます。社内アンケートが情報収集を目的とするのに対し、組織サーベイではその後の改善までを目的としています。

従業員満足度調査

従業員満足度調査は、現在の仕事内容や職場の人間関係などに関する従業員の満足度合いを調査するものです。エンゲージメントサーベイは自発的な姿勢を示す「働きがい」を重視し、スコアと業績の間には正の相関がみられるのに対して、従業員満足度調査は組織から与えられた「働きやすさ」を重視するもので、満足度の高さと業績は必ずしも比例しないことが明らかになっています。

パルスサーベイ

パルスサーベイは、簡単な質問を繰り返し実施する従業員の意識調査の手法の一つです。パルスとは日本語で「脈拍」のことであり、脈拍のように定期的に高頻度でチェックすることが重要です。毎日、週1回、月1回などの短いスパンで行うことで、従業員の意識や組織の変化をリアルタイムに把握することができます。従業員と組織の双方に対する負担を減らすため、質問数は数問程度にとどめておくことが望ましいとされています。

センサスサーベイ

センサスサーベイとは、年に1~2回の頻度で数十問程度の質問を実施する調査のこと。質問のボリュームが大きく、自分と向き合って考えなければならない項目も含まれるため、従業員に負担がかかりますが、組織や従業員がいま抱えている課題を深く把握することができます。

ワーク・エンゲージメント尺度(UWES)

ワーク・エンゲーメント尺度(Utrecht Work Engagement Scales:UWES)は、ワーク・エンゲージメントを測る国際的な指標です。ワーク・エンゲージメントの構成要素である「活力」「没頭」「熱意」を17項目の質問に落とし込み、「全くない」(0点)から「いつも感じる」(6点)までの7段階でマークし、ワーク・エンゲージメントの高低を測ります。日本のワーク・エンゲージメントは諸外国に比べて低いことが指摘されています。

eNPS

eNPS は「Employee Net Promoter Score」の略称で、「親しい知人や友人に自分の職場をどのくらい勧めたいか」を尋ねて数値化する調査です。職場の推奨度を0~10までの11段階で点数を付けてもらい、0~6点を「批判者」、7~8点を「中立者」、9~10点を「推奨者」と分類します。推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値がスコアとなり、従業員の職場に対するエンゲージメントを正確に把握することができます。

自己効力感尺度(GSES)

自己効力感尺度(General Self-Efficacy Scale: GSES)は、自己効力感の程度を測定する尺度です。「行動の積極性」「失敗に対する不安」「能力の社会的位置づけ」の三つのカテゴリーにおいて、全16問の質問を「はい」か「いいえ」で回答する実施するアンケート形式の測定法です。高得点であるほど自己効力感が高いことを示します。

離職率

離職率とは、「一定期間のうちにどれくらいの従業員が離職したか」を表す指標です。一般的には期初から期末までの一年間で算出することが多く、厚生労働省の雇用動向調査の結果によると、2020年度の一般労働者の離職率は13.9%でした。アメリカのコンサルティング会社CEB社が発表した調査では、従業員エンゲージメントの低い従業員の離職率が9.2%であるのに対し、 従業員エンゲージメントが高い従業員の離職率は1.2%にとどまっていることが明らかになっています。

継続勤務意向

継続勤務意向とは、「現在自分が勤める企業で勤め続けたい」と考える意向のことです。これまでの日本は、世界的に見ても労働者の継続勤務意向が高いという特徴がありました。現在も年齢が高くなるほど勤続勤務意向が高くなる傾向がある一方で、人材の流動化や働き方に対する価値観が変化したことにより、特に若年層で勤続勤務意向が低下していることが明らかになっています。

モチベーション

モチベーションとは、行動を起こすための動機を意味するもので、自分の内側から意欲がわく「内発的動機付け」と、外部要因によって意欲がもたらされる「外発的動機付け」の二つにわけることができます。エンゲージメントが従業員と企業の関係性を表すのに対して、モチベーションは個人の心理状態を表します。

内発的動機・外発的動機

内発的動機とは、人の内面に沸き起こる興味や意欲から生まれる動機を指します。内発的動機は、仕事に対するやりがいや興味関心、成長の実感など、自分自身の内側から生まれるものです。一度内発的動機が形成されると、モチベーションや生産性を長期的に維持しやすいと言われています。外発的動機は、お金や名誉など外部から与えられる報酬に基づく動機を指します。

パフォーマンス

パフォーマンスは、ビジネスにおいて使われるときは成果や業績を意味することが多い言葉です。生産性がアウトプットとインプットの量によって計測しやすいのに対して、パフォーマンスは目に見えない要素も含まれていることが特徴です。目標管理制度(MBO)のような旧来型の人材マネジメント手法を取りやめ、従業員の能力や個性を引き出すことにつながるパフォーマンスマネジメントを取り入れる企業が増えています。

生産性

生産性とは、労働力や資本などのリソースと、そのリソースにより産出された成果物との比率を指します。生産性には複数の種類がありますが、ビジネスで使われる際は労働者一人あたり、あるいは労働1時間あたりでどれだけ成果を生み出したかを示す「労働生産性」を指すのが主流です。働きがいやエンゲージメントを高めることで、個人や企業の労働生産性が高まることがわかっています。

働きやすさ

働きやすさとは、従業員が不満や心配を抱えることなく働ける状態を指します。働きやすさは労働環境や福利厚生、人間関係といった外的要因で変化するものであり、従業員の働くことに対するモチベーションを指す「働きがい」とは異なります。働きやすい職場を作るには、風通しの良い職場風土や福利厚生の充実、テレワークなどの柔軟な働き方など、さまざまな取り組みが必要です。

働きがい

働きがいとは、働くことに意義や喜びを感じられている状態を指します。世界100ヵ国で従業員意識調査を行っている Great Place to Work®(GPTW)は、働きがいを「働きやすさ」と「やりがい」の両方を兼ね備えていることと定義しています。SDGs目標8として「働きがいも、経済成長も」とうたわれているため、注目されている概念です。

やりがい

やりがいとは、仕事をすることで精神的に満たされている状態を指します。やりがいを感じる局面は給与などの金銭的報酬や充実感のある職務内容、将来に向けた成長意欲や適正な評価など、人によってさまざまです。やりがいを感じることができるとさらに仕事と真摯に向き合うようになるため、結果として従業員の成果や成長、自己肯定などにつながります。

従業員幸福度

従業員幸福度は、従業員の「働くことに対する喜び」を示す指標です。幸福学の研究では、幸せにはお金や地位などの「地位財」と、健康ややりがいなどの「非地位財」の2種類がありますが、地位財の効果は長続きしにくく、非地位財の幸せは長続きしやすいと言われています。働く上で幸せを感じることは、ワーク・エンゲージメントを高める効果があります。

人的資本経営

人的資本経営は、従業員を資本と捉えて積極的に投資し、企業価値を高めていく経営手法です。世界的に社会や環境といった非財務情報を重視した「ESG投資」の機運が高まる中、「人への投資」にも注目が集まるようになりました。日本においてその流れを加速させた経済産業省の「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書~人材版伊藤レポート~」では、従業員エンゲージメントを高めるための取り組みの重要性について記載しています。

ウェルビーイング

ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的に良好な状態であることを指します。日本ではウェルビーイングを「幸せ」と翻訳するケースもあります。さまざまな調査から、自分がウェルビーイングな状態にあると感じている人は、やる気があり、成長意欲が高いことなどが示されています。組織にとっても良い影響をもたらすため、従業員一人ひとりがウェルビーイングであることを目指す「ウェルビーイング経営」に取り組む企業も増えています。

EVP

EVPとは「Employee Value Proposition」の略語で、「企業が従業員に提供できる価値」を指します。従業員に対して自社への貢献を求めるだけではなく、企業からも従業員に価値を提供していこうとする取り組みで、給与や福利厚生の充実といった目に見えるものから、成長環境や企業文化など無形のものまで、さまざまな価値があります。EVPを明確にすることは、従業員の離職防止にもつながります。

ビジョン

ビジョンは、「会社の目指すべき理想の姿」を意味します。「人事白書2021」では、ミッションやビジョンを明確化できていると答えた企業が7割以上にのぼるなど、多くの企業がビジョンを重視しています。従業員にとっては、ビジョンに共感することで一つの大きな目的に向かって業務を遂行することができるようになるため、自律性や創造性が高まる効果があります。

組織カルチャー

組織カルチャーとは、従業員の過去の行動や社員教育、外部からの影響などから形成された価値観や行動基準を指します。組織のブランディングや経営戦略に結び付くものでもあり、組織カルチャーの醸成に注力している企業も少なくありません。企業風土や社風は組織の環境や人間関係などから自然発生するものだと考えられている一方、組織カルチャーは意図的に組織の方針や理念によって形成されていることが特徴です。

心理的エンパワーメント

心理的エンパワーメントとは、個人やチームが自身の仕事をコントロールできている状態を指します。心理的エンパワーメントを構成する要素は四つあり、自身の目標を達成することに価値があると感じている「意味」、業務遂行能力を持っている確信を示す「能力」、仕事の開始や進め方をコントロールできる自信を示す「自己決定」、成果に影響を及ぼすことができる認識を示す「インパクト」の次元にわけて考えることができます。

心理的安全性

心理的安全性とは、職場で誰に何を言っても、どのような指摘をしても、拒絶されることがなく、罰せられる心配がない状態のことを指します。2016年、Googleが「生産性が高いチームは心理的安全性が高い」との研究結果を発表したことから注目されるようになりました。心理的安全性が確保されている職場では、従業員は積極的なアイデアをだしたり、他の従業員の意見を受け入れたりすることができます。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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