人事マネジメント「解体新書」

組織の活性化、従業員のモチベーションを向上させる「表彰制度」
~企業事例からその効果を探る【後編】 (2/3ページ)

2013/11/1
【事例2:メーカーB社】
前向きな「失敗」を表彰し、挑戦する風土につなげる
◆狙い・背景

「収益構造を改善するため、コスト削減を狙って海外の業者に発注したが、事前の調査が不十分で不良品が大量に発生してしまった」「市場優位性を高めるため、ある部品を耐熱性の優れた別の素材で作ろうと試作を繰り返したがうまく製品化できず、大きな損失を出してしまった」。例えば、社員がこのような失敗をしてしまった時、それを責めることはあっても、表彰するようなことはほとんどないだろう。しかし、たとえ失敗してしまっても、このような前向きな行為を褒めたたえることによって、社内に挑戦する風土が形成されていくと社長自らが決断し、実施することになったのがB社の「失敗大賞」である。

会社組織では、「失敗」による評価ダウンを皆が気にする。それが結果的に、決まりきった仕事を粛々とこなすことへとつながり、社内風土を沈滞させることになる。そこからは、新しいものは生まれてこないし、成長も止まってしまう。そこでB社はあえて「失敗大賞」を設け、大きな失敗をして会社に多大な損失をもたらした社員を表彰することにしたのである。

◆表彰制度の概要

「失敗大賞」の対象は、役員も含む全社員。ただし、パートタイマーなどの非正規社員は原則として大賞外としている。受賞対象となるような大きな失敗をするには、それなりに責任のある仕事を任されていることが前提となるからだ。ちなみに、社長が第1回目の受賞者とのこと。社長も失敗するのだから、皆も失敗を恐れず積極的にチャレンジしてほしい、というメッセージを伝えようとしたのである。

「失敗大賞」の基準は、「前向きの挑戦をした結果として、失敗したこと」「その経験が、ノウハウとして今後の事業のプラスになると考えられること」としている。だから、失敗をして大きな損失を出せば受賞できるというものではない。また、日常の定例的な業務の中で失敗しても該当しない。そして、反省が今後に生かせないような失敗も対象とならない。

積極的なチャレンジは、通常の人事考課にも反映される。ミスをして大きな損失を出すと標準より上の評価になりづらい。そこで、「失敗大賞」によって、積極的にチャレンジしてもらおうと考えているのだ。

B社では5月と11月の年に2回、全社員を集めた「経営発表会」を行っている。ここでは前半期の業績・事業活動と当期の方針を説明するとともに、優秀社員の表彰を行う。「失敗大賞」もこの場で表彰される。

審査に当たっては、直属上司が役員会に推薦し、役員会の審議によって受賞者が決定する。上司は失敗して落ち込んでいる部下を励ますため、「部下がチャレンジングな挑戦をしました。こういう失敗もありましたが、本人も頑張ったし、今後に生きる教訓が得られました」と推薦理由を添えて提出する。ちなみに、上司の推薦がなくても、社長や役員が「〇○氏に与えてはどうか」と提案することもある。B社は経営陣と社員との距離が近く、その仕事ぶりをよく把握しているからだ。なお、半年ごとに毎回受賞者が出るとは限らない。また、1回に表彰される人数に上限はなく、過去に2人が同時に受賞したこともある。

受賞者には、社長からの表彰状と副賞として金一封(3万円)が贈られる。金額の多い少ないではなく、成果を上げた社員に授与する「社長賞」「優秀賞」などと同じように考えている。実際、前向きに挑戦する人が受賞するので、同賞受賞者が「社長賞」や「優秀賞」を受賞することも珍しくないという。

◆表彰制度の効果

積極的に挑戦する優秀な人には、失敗も多い。「失敗大賞」は失敗はしたけれども、挑戦したことには間違いなく、これからもどんどん失敗してほしい、というトップからのメッセージに他ならない。同賞を設けたことによって、受賞者以外にも「失敗していいのだ」という認識が広まり、会社への信頼感が強くなり、結果的に前向きにチャレンジする風土醸成につながっていった。

同賞を実施して10年あまりが経過したが、ホームページなどでもその内容を紹介しているので、入社希望者はそうしたB社の社風を理解した上で応募してくるようになり、近年、チャレンジ精神の旺盛な人が採用できるようになったという。



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