人事マネジメント「解体新書」

組織の活性化、従業員のモチベーションを向上させる「表彰制度」
~企業事例からその効果を探る【後編】 (1/3ページ)

2013/11/1
『前編』では「表彰制度」が求められている背景と実施状況、制度導入と運用のポイントについて見てきた。続く『後編』は、近年話題となったいくつかのユニークな「表彰制度」の事例を通して、その特徴と期待される効果・効用を紹介していくことにする。
「表彰制度」の目的・狙いはいくつかあるが、まずは「組織として褒めたたえるべき行動や存在を、オフィシャルに認知すること」があげられるだろう。その事実を広く組織内に知らせることで、表彰対象となる人(グループ)に感謝の意を伝えるのである。そして、その行動やあり方について、組織内の人たちが共感することにより、モチベーションの向上へとつなげていく――。ここでは、そのような目的・狙いから見た近年の「表彰制度」の事例を紹介してみたい。
【事例1:情報サービスA社】
「面白い仕事大賞」で、数字では測れない「仕事」を評価する文化を醸成する
◆狙い・背景

A社では年に1回、全社員から「面白い仕事」を募集し、全社員の投票により「面白い仕事大賞」として1名(1グループ)を選出し、表彰している。これは「社長賞」に近い取り組みであるが、全社員が選ぶこと、利益の大小でなく仕事の面白さを評価する点に特徴がある。

「面白い仕事大賞」を実施した主な目的は、「営業目標などではなく、数字では測れない成果、思い入れを持って取り組んだポイントを皆で評価する」「面白い仕事を大事にする文化を醸成する」「周囲の仕事への興味・関心を喚起し、全社的に共有する場とする」「1年間を振り返る機会を全員が持つことで、達成感を持ってもらう」といった点にある。このように、自分の成長の確認から全社的な文化の醸成まで幅広い狙いのあるのが「面白い仕事大賞」の特徴だ。

◆表彰制度の概要

「面白い仕事」の要件として、A社では「自分が面白いと思う仕事」のほか、「人を引き付ける仕事」「能力を生かした仕事」「お客様のためになり、もうけが期待できる仕事」といった要素を期待している。「面白い仕事大賞」の運営は、毎年有志により編成される選考委員会が担う。各事業所から委員の候補者を募るが、その選出は社長(選考委員会委員長)が行い、例年、70人程度が選考委員になる。選考は、以下のように約半年間をかけて行っている。

(1)エントリー(12月)
役員以外の全社員がエントリーできる。10人以内なら、グループでの参加も可能。所定のフォーマットに「面白い仕事」を記入し、事務局にイントラネットを通じて提出する。例年、500~700件ほどのエントリーがある。

(2)一次選考(1月)
一次選考委員が1ヵ月かけて、全ての「面白い仕事」に目を通し、審査する。この段階で、20~30に件数を絞る。結果は、イントラネットを通じて発表する。また、社長から一斉メールで、全社員に応募作品のタイトルと通過者の名前を通知する。

(3)二次選考(2月)
二次選考は、社長をはじめ各部署のマネジャーからなる10人の二次選考委員により行われる。問題は、事業所ごとにいろいろな仕事があり、単価も違ってくること。そこで、「金額では測れない、どういう仕事がいい仕事なのか」を、各委員が「面白い仕事」「人を引き付ける仕事」「能力を生かした仕事」「お客様のためになり、もうけが期待できる仕事」という審査基準の下、徹底的に議論を繰り返す。その議論の後、最終選考者5人を決定する。また一次選考同様、イントラネットと社長からのメールにより、社内に一斉に発表される。

(4)プレゼンテーション・リハーサル(3月)
本番を迎えるに当たって、最終選考者に対するプレゼンテーションのためのリハーサルを数回に渡って行う。その際、経営企画や広報担当も参加し、どうしたらもっと内容が伝わるようになるか、資料・発表方法について客観的なアドバイスを行う。最終選考者は例年、各事業部からそれぞれ選ばれることが多く、事業部を代表した存在となる。そのため、最終のプレゼンテーションまでの期間は、役員・一般社員も一丸となり、各事業部でプレゼンテーション内容を作り上げることになるという。本人だけでなく、皆が協力してプレゼンテーションの精度を高めていくことで、自ずと職場としての一体感が醸成される。

(5)最終プレゼンテーション大会(4月)
最終プレゼンテーション大会は新年度を迎えた4月、新入社員も参加する「社員総会」で1組当たり10分の持ち時間の下、舞台上から全社員に向けて行う。「社員総会」は本社のある東京で大きな会場を借りて行うが、地方拠点には生中継を実施。演出にも工夫を凝らすことで社員の臨場感・一体感を盛り上げていく。プレゼンテーション終了後は、全社員による投票が行われる(携帯電話を使ったモバイル投票)。「面白い仕事」の内容だけでなく、プレゼンテーションの出来も評価の対象となる。

(6)表彰式(4月)
投票結果を受けて、大賞受賞者が決定される。受賞者には、社長から賞金50万円と賞品が贈られる。

◆表彰制度の効果

受賞したからといって、特に評価・処遇に反映されることはないが、「面白い仕事大賞」は同社の「社長賞」として位置付けられており、社内で最も権威のある賞になっている。そのため、このイベントを1年間で一番楽しみにしているという社員は非常に多い。プレゼンテーションを見ることによって、社員の皆が刺激を受け、仕事へのモチベーションが高まっていくという効果も大きい。面白い仕事を事業化していくケースも出てきており、「狙って取りにいく賞」として、社内ベンチャー的な感覚で定着している。

また、新入社員にとっては初めて参加する大掛かりな社内イベントであり、先輩社員の雄姿(仕事ぶり)を目の当たりにすることで、「自分もあんなふうになりたい」という目標ができる。さらに、目標とされる側である最終選考者たちも、自分自身の仕事に誇りを持つことができ、自覚も高まっていく。「面白い仕事大賞」を実施することにより、数字では測れない「仕事」を評価する文化が醸成されていくことになったことを、皆が強く実感しているという。

数ヵ月間かけて、このようなイベントを行うことで、社内におけるコミュニケーション活性化の効果も出てきた。最終プレゼンテーション前には、各事業部の一般社員と役員が一緒になってリハーサル練習に付き合うことになり、相互の親密感が増してくる。それが、普段の仕事へもいい結果をもたらしているという。



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