人事マネジメント「解体新書」

組織の活性化、従業員のモチベーションを向上させる「表彰制度」
その実態と、制度導入・運用のポイント【前編】 (3/3ページ)

2013/10/28
「表彰制度」導入・運用にあたっての留意点

「表彰制度」を導入・運用するにあたって、どのような点に留意していけばいいのか。そのポイントを整理してみることにしよう。

◆人事制度との連動・整合性よりも、自由度を大事にする

「表彰制度」は、人事制度の一部をなすものである。そのため、会社運営の基本となる人事制度と連動させて整合性を図る、あるいは複数の「表彰制度」間の重複を避けて各制度を補完的な関係にするといったことを徹底する企業もあるが、はたしてそこまで求める必要性はあるのだろうか?

むしろ、各「表彰制度」にはそれぞれに独自の意味があるとして、別枠で考えてみたほうがいいように思う。なぜなら「表彰制度」では、ある特定の突出した功績や行動を取り上げることが可能だからだ。人事制度との連動や整合性を図るよりも、そこに特化したほうが制度本来の目的に叶うのではないだろうか。制度としての網羅性やバランスに対する配慮がそれほど必要とされるものではなく、その分、制度の自由度も高い。重要なのは受賞者が「感謝」の気持ちを感じられて、その功績・行動が周囲に「認知(承認)」されることなのである。

そのため、自社にどのような「表彰制度」があるのか、人事部がすべてを把握していないケースもあるようだ。しかし、実際の運営を考えるならば、各部門が独自性をもって運営・審査することは大いに結構だが、人事部が表彰事案を取りまとめ、表彰歴を公式に管理することは最低限必要だと言えるだろう。

◆受賞の公平性・透明性、納得性が大切である

「表彰制度」の多くは、組織への貢献度や業績などを基準に受賞者が決まるため、人事評価や処遇と全く無関係ではない。だからこそ、受賞の公平性や透明性、納得感がとても大切になる。まず、受賞の機会が全員に等しく開かれているかどうか。特定の部門ばかりを対象としていたら、その他の人たちのモチベーションは著しく下がってしまう。表彰対象のバランスを考えることが、人事部門の役割ではないだろうか。もし本当に機会を平等とするなら、今年は〇〇部門、来年は□□部門というように、年度ごとに対象部門を変えてみてもいいだろう。

また、選考のプロセスは透明でなくてはならない。それには、受賞の対象となる基準を前もって定めておき、その条件を備えた者が自動的に受賞するように決めておくことである。ただし、基準を数値化できない場合もあるわけで、これだと一部の人だけにしか理解できない業績が対象となることもあるだろう。そのような場合には、その仕事を一番よく理解している人が推薦し、それをもとに審査委員が議論して受賞者を決める、という明確な手順を踏むことである。そして選考過程、受賞理由について詳しく説明し、公明正大であることを従業員に納得させることが重要だ。

◆周囲への配慮を行う

「表彰制度」を実のあるものにするためにも、周囲への配慮を忘れてはならない。言うまでもなく、受賞する人は限られている。受賞できなかった人の中には不満を持つ人もいるだろう。また、個人が一人の力で受賞に値する成果を上げることはまれであり、多くの場合は、周囲の人たちの支援や協力があったからこそ、受賞できたと考えられる。

そこで、受賞者だけではなく、受賞者をサポートした人たちも表彰してみてはどうだろうか。そうすれば、受賞を祝って職場でパーティーを開くこともできる。職場における人間関係が濃厚な日本の組織では、こうした受賞者の周囲への配慮が大切である。

◆表彰方法を工夫する

「表彰制度」を導入した当初は新鮮で盛り上がりを見せても、だんだんとマンネリ化し、負担に感じるようになることもある。そのため、職場全体でメンバー全員を巻き込んで運営していく工夫が必要だ。全員が参加する全社会議や部門会議などがある場合は、その機会を利用して表彰式を行えばいい。実際、年末年始や期首期末、会社の創立記念日などの機会に、表彰式を行うケースが多く見られる。

◆非正規社員も含めた、メンバー全員を対象とする

サービス業などでは、学生アルバイトやパートタイマーといった非正規社員を雇用するケースが多いが、そういう職場では、正社員だけでなく非正社員も対象とした「表彰制度」を設けるといいだろう。非正規社員のモチベーションの向上や、生産性を高めることに有効だからだ。そのためには、仕事能力の高い・低いに関係なく、受賞するチャンスがあるような仕組みを考える必要がある。例えば、前向きに挑戦した結果、ミスを出した場合でも、チャレンジなくして成功はないということで「失敗賞」を贈る企業がある。アルバイトがお客様に対して良い行いをしたのを見た時に、それを「カード」に書いて、ミーティングの場で発表し、皆でほめたたえ合うことを、毎週行っている企業もある。

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以上、『前編』は「表彰制度」が求められている背景と、制度導入と運用のポイントについて見てきた。続く『後編』では、具体的な事例から「表彰制度」の効果・効用について詳しく紹介していく。

解説:福田敦之(HRMプランナー/株式会社アール・ティー・エフ代表取締役)


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