人事マネジメント「解体新書」

見直しが求められる「人材開発部門」の役割・機能【後編(3/3ページ)

~経営戦略と現場のニーズを拾い上げ、人を育てる仕組みを作る

事例:経営戦略と人材育成の連動~中長期計画の達成のために、「階層別研修」を刷新
◆事業計画の推進と人材育成の両立を図る

A社は、中長期計画の達成のために、「階層別研修」を一新した。各階層が役割を全うすることが、中長期計画の達成につながると判断したからだ。というのも、これまでA社では中長期計画を立ててきたが、必ずしも100%達成されなかった。その原因は、経営者の想いや意思が、各部門、各従業員の行動計画にまで、十分に落とし込めなかったことにある。そこで、従業員一人ひとりに中長期計画の意味・重要性を浸透させるため、「階層別研修」を一新することにした。

「中長期計画は会社の方針を示した大きなビジョンです。しかしながら、現場との乖離があるのも事実。中長期計画を実現するためには、大きなビジョンを実行可能な行動計画にブレークダウンし、現場に対して具体的な指示がなくてはなりません。そこで、中長期計画を実現するために、階層別研修に目を付けたというわけです」(人材開発部責任者)

「階層別研修」を通じて、中長期計画と人材育成の連動を図るには、まず部長がトップの想いを会社全体の動き、他部門の役割等を考慮した上で自分なりに解釈し、自部門の人たちが行動できるようなビジョンを示さなくてはならない。そして、次の階層である課長は部長の行動計画を自分なりに理解し受け止めて、課のメンバーが行動できるようなビジョンを示していかなくてはならない。これを、従業員一人ひとりの単位まで繰り返していくことによって、中長期計画が全社に浸透し、具体的な行動へとつながっていく。

従来の「階層別研修」は、一般的なマネジメントスキルの習得が中心で、「良い話を聞いた」「勉強になった」ということで終わってしまいがちだったという。そもそも、階層別の役割とは、経営と現場をつないで、それぞれがリーダーシップを発揮していくことにある。そのために、各階層で求められる「期待する人物像」を明確にし、それに合わせた研修のゴールを設定した。その結果、中長期計画の必達の研修が、階層別研修の一新につながっていった。

期待する人材像と研修のゴール(例)
~期待する人材像の姿が、階層別研修を企画するに当たっての各研修のゴールと考える
階層 期待する人材像
部長 企業理念を、先見性を持って企業戦略とマッチングさせる「担当部門の改革者」
課長 企業理念や上位方針を行動レベルに翻訳し、リーダーシップを発揮しながら目標を必達する「現場経営者」
係長 自らの専門性を基盤として職場経営に参画し、チーム運営実践の中でマネジメントとリーダーシップを磨き、目標を達成する「現場監督者」
主任 自らの専門性に磨きをかけ、常に改善マインドを持ち、自分の仕事のみならず、周囲に働きかけて常にワンランク上を目指し、目標を達成する「第一線のリーダー」
初級従業員 自らの専門性を見出し、組織人としての基本動作・基礎態度を確実に身に付け実践する。組織人としての自覚を持ち、自己成長意欲を持ち続ける「基礎力養成従業員」
「重要なのは、身に付けたことを自分たちの仕事に落とし込んで、実行できるかどうかです。その意味で、実際の事業推進を課題にした研修とすることにより、机上の空論ではなくなりました。まさに、研修が仕事そのものと言えます」(人材開発部責任者)

「階層別研修」では、事業との「整合性」を意識することが大切である。事実A社では、部長研修で出されたアウトプットを、次の課長研修で受けて課長が新たなアウトプットを行い、またそのアウトプットを受けて係長研修で係長が新たなアウトプットを出すということを行っている。このように「階層別研修」における成果のつながりを意識することで、全社的にインパクトを与える結果を生み出すことができる。

*               *

A社の事例を出すまでもなく、人材開発体系の問題を解決するには、まずは自社が求める人材像を再確認し、明確にしておくことが前提となる。その際に留意すべきことは、経営者や事業の視点を忘れないこと。ある企業では、ゼロから人材開発体系を見直す際に、経営陣と現場の責任者が関わった。このことで人材開発部門の自己満足にならず、経営の要請に基づき、かつ現場のニーズに則した人材開発体系を構築できたという。

次代の経営を支える人材開発体系を見直すためには、このようにトップをはじめとして現場を巻き込んだ形を取ることだ。何より、全社的な取り組みとしていくことで当事者意識が生まれ、その成果が期待できるものとなっていく。「人材開発部門」は、このことを忘れてはならないだろう。

解説:福田敦之(HRMプランナー/株式会社アール・ティー・エフ代表取締役)


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