人事マネジメント「解体新書」

見直しが求められる「人材開発部門」の役割・機能【後編(2/3ページ)

~経営戦略と現場のニーズを拾い上げ、人を育てる仕組みを作る

「人材開発部門」が担う役割・機能とは
◆求められる六つの視点

各企業の置かれた環境や経営に対する考え方などから、人材育成のあり方にはいろいろと意見があるだろうが、少なくともこれからの「人材開発部門」に対する役割・機能として、以下の視点は欠かせないだろう。

(1)経営からの要望に応えた人材育成体系
事業活動は、経営戦略に則ったものでなくてはならないが、それは人材育成においても同様だ。経営からの要望に応じた人材育成のあり方(体系)を描くことが、「人材開発部門」がまず行うべきことである。大前提として、こうした人材育成体系としての「絵」を、トップからのお墨付きをもらった上で描くことが大切だ。そのためにも、定期的にトップと人材育成について話し合う機会を持つことが欠かせない。

(2)現場ニーズに即した教育の実施
経営戦略を実践し、成果を出していくためには、どのような教育・研修が必要となるのか。それを現場の責任者と徹底して話し合い、現場ニーズに即した人材育成を行っていく。そうすることで、短期的に求められる知識やスキルの習得はもちろんのこと、働きがいの向上や組織活性化に結び付くようなことも出てくるに違いない。

(3)初期段階の教育の徹底(人的インフラの確立)
新卒採用など、定期的な採用を行っている企業では、初期段階の教育を徹底しなければならない。人的なインフラを確立するためにも、新入社員研修をはじめ、初級主任者研修、課長職研修など、管理職になるまでの30~35歳前後までの初期段階における「階層別研修」を、継続的に行う必要があるだろう。一方、それ以上の役職においては、各々に求められる役割・立場、置かれた環境によって個別に対応していけばいい。

(4)社会的要請・地域の要請に即した教育
企業の社会的責任がますます問われるようになった現在、コンプライアンスやダイバーシティなど、社会的な要請によって求められるものが経営において非常に重要になっている。また、グローバル展開を進めていく企業では、日本とは異なる進出先地域の状況や要請を十分に理解し、対応していく必要がある。何より、それが出来なくては現地で受け要れてもらえない。教育・研修においても、このような要請を十分に意識した内容にしていくことが求められる。事業活動を円滑に進めていくためにも、これらの事項に対しては率先して取り組む必要があるだろう。

(5)一連の人材マネジメント機能と連動する
上記の(1)~(4)について、「人材開発部門」はバランスよく対応していかなければならない。そのために、人材育成は採用から始まり、昇進・昇格、配置・異動、評価・報酬などと連動する一連の人材マネジメント機能であることを「人材開発部門」は強く意識する必要がある。要は、人材マネジメントプロセス全体を通じて人材を開発するというバリューチェーンの考えを持つことである。

(6)人材育成の目的・内容のアナウンスと現場との協力体制
従業員が教育・研修について自覚的になり、積極的な参加意欲を示し、成長していくためにも、自社が行う人材育成の目的とその内容について丁寧なアナウンスを行い、社内へ周知徹底していく。併せて、現場の責任者との関係性を強化し、教育・研修への協力体制を敷いてもらうことも大切である。

◆長期的視点に立った人材開発戦略が求められる

経営にスピードが求められているとはいえ、短期的な教育や研修だけで人材を育てていくことは難しい。前述したように、企業内教育の空白期を通じて、職場としての人材育成機能が低下している現在、これからの人材育成を担う「人材育成部門」には、人材育成を担う主部門としての意識を高く持ち、より積極的な役割・機能を果たすことが期待されている。

経営は3~5年からなる「中期経営計画」を立て、その実現に向けて全社をけん引していく。一方、現場は毎年の事業戦略を立て、その目標達成に向けてまい進していく。だが、人材が育つには時間がかかる。実際、新卒で採用してから現場で使える戦力として育成し、人事異動や教育・研修を通じて組織目的や個々人にふさわしいキャリア形成を支援しながら次世代を担う人材へと育て上げていくには、相当の年月が必要となる。だからこそ、その時々の経営環境や短中期の戦略に過度に影響されず、長期的視点に立った人材開発戦略が「人材開発部門」には求められる。

そのためにも、現場のニーズを的確にとらえることが重要である。現場のマネジャーやメンバーの意見・ニーズを直接ヒアリングしながら、経営の求める方向にベクトルを収れんさせていく。そして、5年、10年といった長いスパンで人材開発を進めていくことである。これが現在の「人材開発部門」に求められる役割・機能ではないだろうか。



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