人事マネジメント「解体新書」

見直しが求められる「人材開発部門」の役割・機能【後編(1/3ページ)

~経営戦略と現場のニーズを拾い上げ、人を育てる仕組みを作る

『前編』では、「人材開発部門」の見直しが求められている背景と、人材開発の現状について見てきた。『後編』では、どのように「人材開発部門」として役割を果たし、機能を発揮していけばいいのか、その方向性と具体的なあり方を紹介していく。
空洞化した教育の立て直しをどう行うか
◆中途半端な位置付け(?)だった「人材開発部門」

人材育成に関して、新卒採用と同様、バブル経済崩壊後に“失われた10年”と言われる期間があった。この時期に人材関連への投資を抑制したことによって、その後ミドルマネジメントの能力不足やOJTの機能不全など、組織における人材育成の問題が表出したのは周知のことだろう。さらに近年では、グローバル化による競争激化や少子高齢化による人材不足など、将来への不安も蓄積されている。このような点から、人材育成のあり方を見直し、より実践的な人材育成の仕組みを構築していこうとする企業が増えている。

ここで重要な役割を担うのが「人材開発部門」であることは言うまでもない。しかし、経営を取り巻く環境が大きく変化している現在、「人材開発部門」に期待される役割・機能は、これまでとかなり違ってきているように思う。では、自社の持続的な成長を担う人材を育成していくために、「人材開発部門」はどんなことに注力していけばいいのか。その方向性を考えていくことにしよう。

「人材開発部門」が担う役割は、従業員に一定レベルの研修を行うだけでなく、経営戦略に則った視点から事業活動を支え、パフォーマンスを提供できる人材を育てることであるのは今も昔も変わらない。しかしながらその実情を見ると、「人材開発部門」は「人事部門」と並列ではなく、採用や配置・異動など一連の人材マネジメント機能の一部である「教育・研修」を担当する組織として多くの企業では位置付けられている。人材育成の中心的存在となるにしては、やや中途半端な存在との印象が否めない。

事実、バブル経済が崩壊した後、直接的な利益を生まない「間接部門」の縮小が叫ばれるようになると、「人事部門」へと併合されるケースが多く見られた。加えて、教育全体が縮小する傾向も強まっていった。またこの頃から、多くの企業で「成果主義」が導入されることになり、「人材開発部門」にも教育効果が求められるようになった。さらに、教育手法としてeラーニングを取り入れる企業が増えていったが、これも多分に教育コストの圧縮という側面が強かったように思う。このような状況下、人材育成においても“失われた10年”が経過していった。

◆転機を迎えた、人材育成のあり方

そして、2010年を迎えた当たりからグローバル化がさらに本格化し、事業再編、組織改革の動きが一段とスピードアップしてくると、多くの企業で人材育成を見直す動きが活発化していった。アジアを中心に、新たな成長戦略を掲げる企業が増える中、人材育成の意義を改めてとらえ直そうとする動きが出てきたのだ。というよりも、これまでの人材育成のやり方ではうまくいかない、と考えるようになってきたというのが実際のところだろう。

しかしながら、一度空洞化した教育の立て直しは簡単ではない。教育費用の削減・縮小の影響を受けた世代への再教育をはじめ、切断されてしまったOJTなどの現場での人材育成機能の再生、そして現場のカギを握るミドルマネジャーへの組織的な支援、現場のニーズに応える研修機会の提供など、多くの課題が噴出している。

ところで、“失われた10年”の例としてよく聞かれるのが、初任主任者研修や課長職研修などの「階層別研修」が大幅に縮小・廃止されたことにより、教育の空白期間が生じたというケース。その結果、これまでは必須事項として受けていた研修を受けた者と受けていない者が、職場内に混在することになった。あるいは、3年計画でスタートした「リーダーシップ研修」が予算縮小のために中止され、何も成果を生み出すことなく、無駄に時間と予算が費やされたようなケースもある。このような事態が多くの企業で見られたが、体系的な教育や人材育成ポリシーのない状態が長く続いたことで、職場で学ぶ経験もないままミドルマネジャーとなった人が数多く生まれることになった。現実的な話として、彼らには自分の限られた経験に頼って、マネジメントを行うしかないのだ。このため、職場で十分なコミュニケーションや指導ができずに部下が育たない、現場での生産性が落ちた、といった問題が発生していった。

ここで考えなくてはならないのは、これまでとはスピード対応への要求レベルが違っていることだ。早急に、経営と連動した人材育成のあり方を再構築しなくてはならなくなっている。とはいえ、人材はそう簡単に育成できるものではない。企業における人材育成には、人的インフラとしての基礎教育を提供し、人材のボトムアップを図ることが不可欠である。もちろん、教育はその時々の経営の要望を受けた対応を行うことが大事であるが、この基本的な役割・機能を忘れてはならない。なぜなら、そうした空白期間が生じると、組織文化が継承されなくなってしまう恐れがあるからだ。このような意味からも、まさにいま企業における人材育成は、転機を迎えている。



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