人事マネジメント「解体新書」

社員の「ボランティア活動」と企業の支援【前編(3/3ページ)

~「東日本大震災」以降、「ボランティア経験」を職場で活かす新しい動きも~

新しいボランティア活動の形が出てきた!
◆現場で求められる企業人の持つ知識・スキル

近年、ボランティア活動の場として「ソーシャルビジネス」や「プロボノ」などの「コミュニティービジネス」が注目されるようになってきた。実は、この領域で必要とされる能力やスキルというのは、ビジネスに近い要素を持っている。つまり、ビジネスで培われた能力・スキルが、この領域で効果を発揮することになってきたのである。

プロボノとは聞きなれない言葉かもしれないが、これは仕事を通じて培った能力・スキルを活用して社会貢献するというもの。ホームページ作成のスキルを持った企業人が、ボランティアで社会貢献活動団体のホームページを作成したりすることで、最近、日本でも注目が集まっている社会貢献の新しい形である。

ボランティアの活動内容が多様化していく中にあって、コミュニティービジネスの分野で求められる能力・スキルを持った人材が必要となってきたというわけだ。ここに今、志のある企業人に注目が集まってきた。何より、この領域はビジネスに近いので、企業も参入しやすい。事実、企業とNPOが一緒に事業に取り組むケースは多く見られる。

企業も、社員のボランティア経験を、特に若い世代に経験を広げる場を提供するという意味で、注目している。欧米にはあまり例のない「ボランティア休暇制度」を導入する企業が相次ぎ、社員の自主的な社会貢献活動を業務扱いと認める動きへと結び付いている。さらには、「ボランティア経験を職場に活かす、フィードバックする」といった取り組みを行う企業も出てきた。企業人がその本業を活かしてボランティアを行うという近年の考え方は、「ボランティア≒奉仕活動」といったこれまでの狭い考え方を広げ、新たなボランティア人口を獲得することになったのではないか。以下のような新聞報道が、そのことをよく示しているように思う。

【企業による、新たなボランティア活動支援】

建設K社

新入社員を被災地に送り込み、現場ニーズを肌でつかむことにより、効率的な作業を考えて実行するトレーニングとする

総合商社L社

新入社員全員を研修で復興支援へボランティアとして参加。レポートを提出させ、復興を後押しするアイデアを募集。良いものがあれば、会社全体の活動に採用する。この後、一般社員も派遣する予定

事務機器M社

震災後、新入社員を被災地に派遣。役に立ちたいという思いはもちろん、現地の要望を知ることが、商品開発にもつながることを期待している

レストランN社

現地に赴き、被災者への支援、交流を通じて、新たな事業展開のヒントに結び付けていく

◆ボランティア経験を仕事・職場に活かす

ビジネスと社会貢献は連続的なものであり、必ずしも分断できないものである。社会の中にビジネスがあり、同時に社会貢献活動も社会的な存在として位置付けられる。そうしたことを意識し企業活動を行うことによって、これからの企業におけるボランティア活動の軸足も少しずつ変わっていくのではないか。例えば、被災地に行って、ボランティア研修を行うというのも一つの方法である。参加者の中から気づきが生まれ、何かしらの成果やメリットが得られていく。同時に、自社のプレゼンスも向上していくことによって、次の活動へとつながっていく。お互いに得るものは大きいように思う。

このように考えると、ボランティアを経験することは、無料で「人材育成」をしているようなものではないか。そして、この経験で得たものが少しずつ積み重なっていき、その蓄積が、ビジネスとして必要となってくる時期が必ず来ると思う。

大切なのは、このような新しい動きを一過性にしないことである。ボランティアや復興支援を綺麗ごとに終わらせないためにも、「ボランティア経験を職場に活かす、フィードバックする」といった形に発想を転換し、企業の仕組みへと取り組むことが求められる。『後編』の事例でも紹介するが、「震災者の人たちとの交流が、新たな事業展開のヒントになった」「現地に赴き、現地の要望を知ることが、商品開発につながっていくと感じた」といった声は数多い。ボランティアと企業活動における実利は、対立した概念にはならないのである。それは、ともに社会的な存在であろうとするからに他ならない。だからこそ近年、ボランティア経験を職場で活かすといった、まさに日本型とでも呼ぶべきボランティア活動のあり方が、新しい潮流として出てきたのではないだろうか。

*               *

『前編』は、ボランティア活動の新たな動きについて紹介してきた。『後編』では、企業がそこでどのような施策を実践しているのか、また課題は何なのかといった点について、事例を中心に紹介していく。

解説:福田敦之(HRMプランナー/株式会社アール・ティー・エフ代表取締役)


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