人事マネジメント「解体新書」

社員の「ボランティア活動」と企業の支援【前編(1/3ページ)

~「東日本大震災」以降、「ボランティア経験」を職場で活かす新しい動きも~

企業に求められる「社会的責任(CSR)」が注目されるに従い、「ボランティア活動」の機運が高まってきた。特に、2011年の「東日本大震災」以降、その傾向はより顕著になってきたのではないだろうか。企業には、「社員がボランティア活動で得た知見や経験を職場で活かしていく」「ボランティア活動の場を人材育成の機会ととらえ研修の中に取り組む」といった動きも出てきている。一般的には、「阪神淡路大震災」のあった1995年が日本におけるボランティア元年とされているが、いま、新たな段階に来たと言われる社員のボランティア活動、そして企業の取り組みはどのようになっているのか。『前編』では、ボランティア活動の最新動向を紹介していく。
ボランティア活動の現状
◆ボランティア活動を行う意義

近年、企業に対する社会的責任(CSR)、さらには社会的責任投資(SRI)が注目されている。ボランティア活動などに代表される、社会貢献活動を行っている企業に投資するという世界的な評価基準の広がりを背景に、日本でも企業のボランティア活動への機運が高まってきた。企業は、単に製品やサービスを販売することによる利益拡大だけでなく、社会の一員として長期的な投資を考えるようになってきたのだ。ボランティア団体との協働や市民との交流機会が生まれることは、消費者の動向やニーズの把握にもつながる。何より、ボランティア活動を行う社員自身のモチベーションや問題意識が高まり、誇りが芽生えていくことだろう。このように、ボランティア活動を進めていくことは、企業にさまざまな効果・効用をもたらし、人と組織の双方に活力を与えてくれる。

◆企業における社会貢献活動の状況

企業が行う社会貢献活動には、現金や物品などの直接的な寄付のほか、企業組織として取り組む社会貢献活動プログラムの中で社員が活動するもの、社員個人によるボランティア活動への金銭支援や、休暇制度の整備による社員の活動の支援など、さまざまな形が見られる。例えば、日本経団連の「2010年度 社会貢献活動実態調査」を見ると、経済が低迷している状況にありながら全体としては一定の水準を維持しており、支出項目のそれぞれで特に目立った増減を生じることなく活動に取り組まれている。ボランティア先進国である欧米と比べると見劣りする点はあるものの、日本企業の社会的貢献活動はある程度定着していると評価できるのではないか。

図表1:社会貢献活動支出額の状況

  支出額(1社平均:億円) 経常利益に占める割合(%)
2000年 4.16 1.51
2001年 3.42 2.03
2002年 3.77 2.39
2003年 3.34 1.54
2004年 3.51 1.75
2005年 3.54 1.38
2006年 4.54 2.18
2007年 4.68 1.42
2008年 4.65 1.87
2009年 4.41 2.57
2010年 3.85 1.81

出所:「2010年度 社会貢献活動実績調査結果」(日本経済団体連合会、1%クラブ)

近年の支援内容を見ても、ボランティア休職・休暇制度の導入、ボランティア活動の情報や活動機会の提供など、社員が社会貢献活動に参加しやすいよう配慮したものが増えてきている。これまでの寄付などを中心とした取り組みばかりではなく、社員がNPOの活動に関わることを社会貢献活動に加える企業も出てくるなど、その取り組み姿勢に広がりが見られる。

◆増加するボランティア活動への参加者

そもそも、個人の自発的な気持ちから始まるボランティア活動は、国際社会で統一された定義がない。ちなみに総務省では「報酬を目的としないで自分の労力、技術、時間を提供して地域社会や個人・団体の福祉増進のために行う活動」と定義している。

ボランティア活動は、誰でも自分のできることから参加することが可能。また、特別な技術や知識がなくても、行うことができる活動はたくさんある。他方で、自分の得意なことや好きなことを活かしてボランティア活動を行う人も多い。ボランティア活動を通して出会ったさまざまな人々と何かをつくり上げ、そこでの経験を共有することにより、大きな達成感や充実感を感じることができるからだ。そのあり方の多様性が、ボランティア活動の大きな特徴でもある。

ちなみに、ボランティア活動への参加者は全国社会福祉協議会の調べによると、1980年には160万人あまりだったものが、80年代後半から徐々に増えていった。1989年の390万人から2009年には730万人へと、この20年間で2倍近くに増えている。

◆しかし、参加者は特定の人に限られていた…

とはいえ、その実態を細かく見ていくと、行動は一部の人に限られていた。現実問題として、ボランティアをするにはそれなりの時間を要する。例えば、社員の有給休暇消化率を見てみると、厚生労働省の調べでは2010年段階で48.1%にとどまっており、完全消化が当たり前となっている欧米と比べるとその差は歴然だ。

実際、ボランティア参加率を見ると、欧米の半分以下の水準にとどまっている。このような事実から考えると、これまでのボランティア活動の参加者は特定の人たちに限られており、企業に勤務する大多数の人たちは参加したくても、なかなか積極的に踏み切る機会がなかったのではないだろうか。



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