人事マネジメント「解体新書」

いま、なぜ「エンゲージメント」なのか?【後編(1/2ページ)

~社員が自ら、貢献への行動を起こしていくための取り組み~

『前編』では「エンゲージメント」が求められる背景・理由と、基本的な考え方について説明した。では、社員自らが貢献への意欲を覚え、行動していくような制度・施策をどのように講じていけばいいのか――。『後編』では「エンゲージメント」を実現していくためのステップと、企業の具体的な取り組み事例を紹介していく。
「エンゲージメント」の進め方

エンゲージメントとは会社と社員が共に支え合い、「イコールパートナー」となって双方の成長に貢献し合う関係のことである。このようにエンゲージメントを高めていくことで、社員の働きがいや意欲を強めていくことができる。まずは、エンゲージメントを実現していくための基本的なステップについて紹介していこう。

◆エンゲージメントを実現するステップ

(1)「ガイドライン」の作成~期待する能力・行動・貢献度などを明らかにし、成長の実感を示していく

最初に、会社がどのような理念や価値観を持っていて、社員に対してどういった能力や行動を期待しているのか、また、それによって会社にどんな貢献がもたらされるのかといった「ガイドライン」を明らかにする必要がある。ほとんどの企業には「企業理念」のほか、「職能要件」や「コンピテンシー」のような形で、求める人材要件や評価基準などが存在することだろう。それらをベースとし、作成した時と同じようなアプローチでブレークダウンしていけばいい。

同時に会社は、このような職場環境の中で社員がどのように自分自身の成長を実感し、ステップアップしていくことができるのかを示していく必要がある。しかしながら、組織としての基盤が磐石ではない中小企業やベンチャー企業では、適当なモデルケースは少ないと思われる。一方の大企業も、縦割りのきつい組織では、規範となるロールモデルが必ずしも存在するとは限らないだろう。また、フラット型組織やプロジェクト単位で変貌するような組織の場合、いったい誰をモデルや目標とすればいいのか、社員にはよく分からないことが多い。

会社が期待する能力・行動・貢献度などを明らかにした上で、成長のステップとなる「ガイドライン」を作成しておかなければ、社員は何について、どのように努力していけばいいのか分かがらなくなる。それは、経営側も同じである。会社を成長させていく上での方向性が見えにくくなり、打つべき制度・施策のポイントが明確ではなくなる。これでは、永続する企業にしていくことは難しい。

(2)「エンゲージメント・サーベイ」の実施~施策・制度を講じていくために

次が、エンゲージメントを測定する「エンゲージメント・サーベイ」のステップである。自分たちの「ありたい状態」に向かうための施策や制度を講じていくために、個々の社員や組織とのエンゲージメントの状態を明らかにし、どのような点に問題点があるのかについて情報を共有する必要があるからだ。

では、そのためにいったい何をどのように測定すればいいのか?いろいろな測定の視点(切り口)があると思われるが、忘れてならないのは、満足度の高い人が必ずしも会社に貢献したいと考えているとは限らないこと。社員の不満足度の高い事項を改善しても、エンゲージメントの向上に結び付くとは限らないのだ。基本的には、一人ひとりの貢献意欲を高めるような対応を行うことが、結果的に満足度の向上につながっていくという考え方だ。つまり、貢献への意欲を高める要因にフォーカスし、そこでの状況を明らかにすることである。

また、サーベイを実施するに当たっては、打つべき「アクションプラン」(制度・施策)を講じていくのに資するような内容としなくてはならない。そのような観点から、ワーキンググループの話し合いの中で(場合によっては専門家のノウハウを借りて)、相当程度の質問項目(50~100程度)を用意した上で、各社員のエンゲージメントの状態を把握していくことである。以下に、質問項目の参考例を示しておく。

「エンゲージメント・サーベイ」の視点(切り口)・質問項目例

1)エンゲージメントの程度(強さ)
●会社に対しての誇り
 例)就職先として知人に勧めることができる
●仕事に対しての誇り
 例)会社に来ると、毎日一所懸命に仕事をしようと思う

2)職場環境への認識(評価)
●会社に対する共感
 例)会社は世間から高く評価されている、経営理念・ビジョンに共感できる、
      評価が適正・公正に行われている
●成長に対する実感
 例)自分の能力・スキルが伸びていると実感できる、身近にロールモデルとなる人がいる、
      5年後のキャリアイメージを持つことができる
●安心に対する実感
 例)仕事内容に見合った処遇が得られている、仕事と生活のバランスが取れている、
      職場の人間関係が良好である

*各質問項目についての「状態」を明らかにすると同時に、「エンゲージメントの程度(強さ)」と「職場環境への認識(評価)」の結果をマトリックスで見ていくことにより、各項目とエンゲージメントとの「相関関係」が分かる。その結果を踏まえて、実効性の高いアクションプランの立案を考えていくことができる。

(3)「アクションプラン」の作成~実行のプロセスが見える形で

「エンゲージメント・サーベイ」の結果を質問間のマトリックスで比較したり、質問領域ごとにスコアで点数化したりすることによって、「改善すべき点」と「維持すべき点」を明らかにする。それらの結果を持ち寄って改善提案を行い、アクションプランとして取り組むべき制度・施策へと落とし込んでいく。

その際、アクションプランには、「問題点と課題」「実行計画」「達成期限」「実行責任者」「進捗状況」などを設け、実行のプロセスが見える形にすることが重要である。そうすることで、実行した後の修正が容易となるからだ。また、これらの作業は、チェック機能を高めるためにも、現場と統括する部署(人事部、経営企画部など)との協同作業として行なうことが望ましいだろう。アクションプランの具体的な内容は、後述する「事例」を参考にしてほしい。

(4)検証するサイクルを回す~「アクションプラン」が機能しているかどうかを確認

以上が一連の流れであるが、アクションプランを実のあるものとするためにも、検証するサイクルを回していくことを忘れてはならない。まずは「エンゲージメント・サーベイ」で問題点と課題を明らかにする。次にミーティングの場を持って、問題点・課題に対する改善策を話し合って共有する。それに基づきアクションプランを作成し、行動に移していく。さらに、新たな「サーベイ」を施し、そのアクションプランが機能しているかどうかを検証する。このようなサイクルを回していく中で、必然的に「エンゲージメント・サーベイ」のスコアも上がっていくことだろう。



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