人事マネジメント「解体新書」

2012年 これからどうなる!?「人事」と「人事部」【後編(3/3ページ)

~「人事部」に求められる役割と10の施策・キーワード

(6)今日の職場で求められる「上司像」

いかに部下に任せるかが、上司の「存在価値」となる

スピーディーな対応や意思決定が要求される現在の職場にあって、部下を育てることは上司の最も重要な仕事の一つである。プレイングマネジャーとして優れていても、部下に権限委譲ができない上司は問題だ。なぜなら、部下が新しい業務や困難な仕事にチャレンジする機会を奪ってしまうからである。人は仕事を任されることにより、成長していく。優秀な上司は「任せ上手」にならなくてはいけない。

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部下に権限を委譲できない上司は、自らの役割が日々進化していることに気づいていない。部下の管理と他部門との調整が自分の仕事であると考えている。ピラミッド型の組織の時はそれでよかったかもしれないが、IT化が進み、組織がフラット化している現在、そんなことだけに腐心している上司に存在価値はないだろう。

何より、全ての問題に上司が正しい答を持っているわけではない。部下のほうが詳しい分野もある。ならば、それをうまく活用すればいい。上司だからといって、「知らない」ということは恥ずかしいことではないのだ。

上司が部下より優れている点は、何といっても「経験」である。成功も失敗も含めたいろいろな経験があるからこそ、上司は部下に対して意味のあるアドバイスや独自のノウハウを与えることができる。

さらに最近は、職場環境が以前とは随分と変わってきた。フラット型・フリーアドレス型の組織が多くなり、情報の共有化も一段と進んでいる。このような職場環境では、各人が持っている「強み」を活かすこと、組織における「役割分担」の全体像をうまくデザインしていくことが、上司の重要な仕事となる。今日求められている上司とは、任せる力と、それを統合していく力を併せ持った存在と言えるだろう。

(7)「自律型人材」をいかに育成するか

自律型人材が、高い価値やイノベーションを生み出す

経営を取り巻く環境が不透明となり、従来のやり方の延長では事業を進展させたり、イノベーションを継続的に起こしたりしていくことが難しくなってきた。現在ほど、新しい価値やサービスを生み出すことのできる人材が求められている時代はないだろう。それでは、どうすればそのような人材を育成することができるのか?

いくつかの解があるが、「自律型人材」の育成こそが、高い価値やイノベーションを生み出す上で重要だと思われる。それまでの慣習・前例にとらわれず、独自の発想ができる人材。その場の状況に応じて、最も相応しい行動が取れる人材。既存事業をうまく運営することよりも、新たな価値を創造できる人材。そういった人材の出現が、今まさに望まれている。

問題は、自律型人材が既存の組織に必要な人材を育成するという考えや仕組みの中からは、なかなか生まれてこないということ。そこで、自律を育む仕掛けや取り組みを本格的に行う必要性が出てきたというわけだ。特に従業員のキャリア形成においては、自律が極めて重要なキーワードとなっている。

事実、最近では本人の適性や価値観、強みなどを発見、再確認し、その先の方向性を具体化させるキャリア開発研修が盛んに行われるようになってきた。その延長線上で、人材がブレイクすることも期待されている。さらに、自律に向けての気づきの機会をできるだけ若いうちに与えようと、新入社員研修の中に自律というテーマを盛り込むケースも出てきている。

自律型人材が一定の割合以上育てば、自律した組織となっていく。自ら学び、イノベーションを起こしていく組織となることだろう。その着地点を目指して、いかに自律を育ませる施策を打ち出せるか――。成長戦略を描くためには、時間的にあまり余裕がないはずだ。人事部には、早急な対応が望まれる。

(8)いろいろな気づきを促す「体験型研修」の効果・効用

新しい発見は、視野を広げ、バランスを整える

「農業」「林業」などの「体験型研修」を取り入れる企業が増えている。体験型研修とは、田植えなどの農作業や森林の間伐作業などを、社員が農家や自治体の人たちと共同で行うという、実体験や社会参画を伴う研修のこと。自然の中に入り込み、身体を動かしながら現場を体験し、自然や地域の人々と交流することができる。都会で行う座学形式の研修と比べて、人材育成や気づきをより効果的に実現できるほか、社会性のある研修としても内外の注目を集めている。

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自然の中で研修を行うことで、俯瞰的に物事をとらえる実感や、多様な考え方のヒントを得ることができる。また、身体を活用することによって、単なる知識だけに偏らず、人間が本来持っている身体感覚(五感)やバランス力を育むことにもつながる。このような効果・効用が期待できるため、新入社員研修をはじめとして、企業のメンタルヘルスケアプログラムや、健康管理プログラムなどに導入されるケースが増えてきている。また、環境への理解やCSRへの対応といった目的から行うケースも少なくない。

体験型研修が優れている点は、バーチャルでなく、自然の中で身体を呼び覚まし、魂が喜ぶ体験を得られるということ。このような環境下での新しい発見の数々は、自分自身の視野を広げ、頭偏重の社会人のバランスを整えていくことにもつながるだろう。

(9)求められる戦略的な「福利厚生」のメニュー

やり方次第で、大きく異なる従業員満足

働く人の価値観や雇用形態が多様化していく現代では、全員に同じような福利厚生施策を提供しようと思っても、うまくいくことは少ない。固定費的な福利厚生費をいかにコントロールし、効率よく配分していくか。また、従業員満足度を高めていくことができるか。これが人件費の配分・変動費化とともに、これからの企業の大きな課題となっている。

というのも、やり方次第で福利厚生は重要なツールとなり得るからだ。事実、新しい時代のニーズに合わせて福利厚生へ積極的に投資する大企業が出てきている。また、中小企業やベンチャー企業でも、自社ならではのユニークな福利厚生施策を打ち出し、採用と定着に成果を出している企業も少なくない。

これまでの福利厚生は、寮や社宅、保養所に代表されるようなハードに重きが置かれていたが、今後は、教育機会を自ら選ぶといったソフト化が進んでくるように思う。また、ハード面が弱くなるとともに、「生活保障」的な部分も少なくなり、それに代わって、個々人の将来に渡っての「能力開発」に対する支給が増えてくることだろう。

一方で、働く人の価値観やライフスタイルの多様化と合わせ、カフェテリアプラン的なアプローチは依然として必要である。問題は、その中身であり、施策がきちんと使われていなくては、意味がない。例えば「食事券補助」など、毎日社員が関わる行為に対するサービスを導入するようなケースもある。また、東日本大震災以降、ボランティアを志願する社員が増えてきたが、そうした面に対する支援をカフェテリアプランのポイントから拠出している企業も少なくない。

このように、福利厚生は活用の仕方次第で、給与とはまた違った形で社員をモチベートしていくことができる効果的なツールと言える。今まさに、戦略的な福利厚生が求められている所以でもある。

(10)「人間力」が次の時代を拓く

人間力に満ちたリーダーと個人の育成を

企業とは、仕事を通じた人と人との関わりで成り立つもの。そこで重要なのは、人間としての魅力や能力、つまり「人間力」である、と主張する人事担当者が増えている。なぜ、人間力が頻繁に語られるようになってきたのであろうか?

その背景には、ここ数年来、過度な制度改革を推し進めてきた結果、アナログな人間関係が軽視されてきたことに対する反省があると思われる。現場の知恵や新たな価値は、人と人との交流によって生み出され、促進されていくもの。この基本的でかつ重要な事実が再認識されたことにより、改めて組織の人間的な側面の重要性に対する評価が高まってきたのである。

また、企業に求められる価値が、従来の経済的な価値だけではなく、CSRをはじめとした非経済的な価値も含めたものへと大きく変化。非経済的な価値を含めた視点に立てる、人間力を持ったリーダーが求められていることも見逃せない。経営を取り巻く環境が大きく変化していく中にあって、次世代のリーダー育成が重要な課題となっているが、人間力に満ちたリーダーこそが、時代を拓くカギを握っているといえるのではないだろうか。

企業は人なり。企業組織を構成するのが人である以上、そこに集う人たちの魅力とその持てる能力を十分に発揮できるかどうかによって、企業の競争力は決定される。まさに人間力が問われているわけだが、それはリーダーだけではなく、個人も同様である。では、その人間力を磨き、仕事に活かしていくために、何が必要なのか?その問いは、まだ発せられたばかりである。

2011年は、日本にとって受難の大きな年であった。それを乗り越えて、再び成長戦略を描いていくためにも、2012年は「人間力」を育む具体的な取り組みについて、ぜひ紹介していきたい。

解説:福田敦之(HRMプランナー/株式会社アール・ティー・エフ代表取締役)


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