人事マネジメント「解体新書」

2012年 これからどうなる!?「人事」と「人事部」【後編(2/3ページ)

~「人事部」に求められる役割と10の施策・キーワード

2012年 注力すべき10の施策・キーワード
(1)新卒採用「12月1日解禁」の短期決戦で、果たしてどうなる?

「大学1年生採用」の衝撃!新卒採用の自由化、多様化が進むのか?

日本経団連の倫理憲章見直しによって、2013年度採用組から企業の新卒採用活動は大きく様変わりした。採用活動期間の短縮化を受け、優秀な学生を確保したい企業はさまざまな施策を講じ、学生との接触機会の拡大を図っている。その結果、企業間の競争は、例年以上に激化してきている。「この時期、学生が説明会に参加してくれるのか」「目標とする採用数を確保できるか分からない」といった不安を訴える採用担当者も少なくない

photo

そのため、倫理憲章では禁止されていないインターネットによる広報活動を行う企業が増えている。特に、Facebookに採用ページを設ける企業は多く、新製品や会社の様子を紹介するなど、企業PRに余念がない。学生がFacebookに登録してくれれば、プロフィールや属性を把握することができる。さらには、学生がオンライン上の説明会に参加できるサービスを利用したり、採用関連ページをスマートフォン対応にして、情報を発信したりしている企業も出てきている。

とはいえ、企業側も学生側も情報不足なのは間違いない。解禁日が12月1日なので、例年と比べて会社説明会への参加者は減っている。目標とする採用数に達しない可能性や、拙速な採用活動によるミスマッチを心配する企業も少なくない。

このような状況の中、ファーストリテイリングのように各社横並びの新卒一括採用の慣行に異を唱え、「大学1年生からインターンシップなどの採用活動を検討する」という企業も出てきた。これまでの新卒一括採用を見直し、「採用時期を通年とする」「選考する学年も問わない」といった新方式の導入を検討しているという。これには、衝撃を受けた人も少なくないのではないか。

関係者も、「新卒採用の自由化、多様化の流れは止まらない。何より、求められる人材が高度化してきている」「現在の状況下では、一括採用に代わって新しい仕組みが出てくるのはある意味、自然な流れである」と評価している。

だからこそ、他社とは違う、自社で本当に必要な人材要件を絞り込む「人材の見極め」が、これまで以上に大切となってくる。短期決戦により学生の勝ち組・負け組の二極化が進んでいくことが予想されるが、これは企業も同様。人材の「選択と集中」を行わなければ採用目標を達成するのは難しいと思われる。このことを意識して、採用活動を進めていってほしい。

(2)「グローバル対応」を本気で行う年に

現地に行き、異なる価値観に対する理解と受容を磨くトレーニングを

グローバル展開を図っていく企業にとって、グローバル人材の確保・育成は最重要課題といえる。事実、手段としての「英語」を採用や教育の際の必須条件とする企業は、ここ1~2年で急増してきた。企業によっては、第2外国語として「中国語」に力を入れるケースも出てきている。

グローバル企業では、優秀な人材は日本人に限らず、広く世界規模で登用していかなくてはならない。グループ全体で人事評価や報酬の基準を統一する動きも出ている。グローバルな経営体質を作らないと、生き残っていけないという強い危機感があるからだ。

では、グローバル対応において一番重要なのは何だろうか?おそらく、語学力ではない。自分とは異なる価値観に対する理解と、それを受容する資質だと考える。世界にはさまざまな価値観がある。自分と違った相手に興味を持ち、理解していく姿勢が欠かせない。この点を十分に理解していないと、いくら語学を修得し海外に出て行っても、現地で良好な人間関係を築き、ビジネスを成功させることは難しい。

言い換えれば、現地からの生の情報をダイレクトに受け入れ、咀嚼できる能力が必要ということ。目の前で起こっている現実を見極め、判断し、周囲に働きかけて行動に移していく――。そういうリーダーシップの取れる人材が、グローバル時代には必要となる。

もっとも、ここまでのレベルの人材はそうそういない。そこで、一定期間、中国やインド、東南アジアなどの新興市場に送り込み、現地で学ばせる“荒療治”が必要となってくる。日本では経験することのない“修羅場”に遭遇し、自ら考え、判断し、行動していくといった経験を踏んでもらうことが重要である。

このようなアプローチや施策を2012年は本気で行っていかないと、グローバル対応は“絵に描いた餅”となっていく。だから、範を示す意味でもまずは人事部から、グローバル対応の“荒療治”“修羅場”を経験していくことを期待したい。

(3)会社と個人は「エンゲージメント」の関係に

チャレンジするには、拠り所となる「エンゲージメント」が必要

時代の変化とともに、企業と働く人の関係は大きく様変わりしてきた。終身雇用も将来のポストの約束も怪しくなった現在、昔のような主従関係・親子関係は結びたくても結べなくなっている。それでは、これからの時代、どのような関係を結んでいけばいいのか?ある時期、「成果主義」や「コミットメント経営」など、新たに組織と個人の関係を構築する動きが出てきたが、事を急いだこともあって、多くは成功することがなかった。そこで、出てきたのが「エンゲージメント」という考え方である。

エンゲージメントは、会社と個人が対等なパートナーとして、お互いにほれ合い、相手のために尽くそうとする関係である。まさに、会社と個人の「婚約関係」のようなものと言うことができる。これが、従来の日本的な「和」をよしとし、他者のために汗することを厭わない職場風土と合致したのである。

チャレンジするには、安心できる拠り所が必要だ。会社と社員が惚れ合いながらも、緊張関係を築くことが大事である。エンゲージメントとは、まさにそれを担保するものである。ある意味、終身雇用と成果主義・コミットメント経営の“良い所取り”をしたようなものかもしれない。

エンゲージメントによる社員の会社への愛着は、職場環境や仕事内容だけにとどまらず、会社そのものに深い共感を覚えていくことにつながる。目標を皆が共有していくことで、コミュニケーションが図られ、人材育成にもドライブがかかっていく。このような社員の意識や行動は組織のDNAとなり、無形の資産として世代を超えて受け継がれていくだろう。

問題は、エンゲージメントが各企業の組織風土、業態、規模などによって、そのあり方が違ってくるということ。夫婦関係と同様、一律ではないのだ。各社なりに、どのような「婚約関係」を結んでいくのか、人事部の腕の見せ所でもある。

(4)待ったなし!「メンタルヘルス」対策

「上司」の普段からの気配りが、メンタル不全を防ぐ

多くの企業で、メンタルヘルス問題に対するさまざまな策が行われているが、事態はあまり改善に向かっていない。いくつかの要因が考えられるが、最も大きなカギを握るのが職場の「上司」の存在である。直近の「労働者健康状況調査」(厚生労働省)によると、職場のストレス要因としてまず挙げられているのが「人間関係」。その後は「仕事の質」「仕事の量」と続く。部下の仕事の質と量について権限を持つのは、他でもない上司である。上司の部下への関心の持ち方や仕事の与え方、部下との信頼関係作りの良し悪しなどが、メンタルヘルスの改善・向上を大きく左右すると言える。

photo

その際、与える仕事の質・量が部下の能力に見合っているかどうかなど、部下の目標に対する納得感や達成感、そのプロセスにおける充実感がポイントとなってくる。そのためにも、上司は部下を日頃からウオッチし、仕事ぶり、生活の仕方などにも気を配ることが大切だ。そうすることで、部下との信頼関係が醸成されていく。

また、明るく元気な職場であるかどうかというのもポイントになってくる。上司と部下との間はもちろん、職場内に活発な「対話」があるかどうかが重要だ。さまざまな対話を通じて、職場内での問題提起とフィードバックが行われ、職場の課題が全員に共有されていく。そうすることで、職場における一体感が生まれてくる。ここでも、現場のリーダーである上司は、旗振り役としての大きな役目を担っている。

何より、働きやすい環境を作るように努め、部下が気持ちよく仕事をできるようになれば、上司の信頼も高まっていく。このような個人と職場全体に対する上司の普段からの気配りが、異変を早期に発見し、メンタルヘルス不全を未然に防ぐことへとつながっていく。なお、上司と部下との人間関係を第三者としてサポートしていくのが人事部門の役割であることは、言うまでもないだろう。

(5)対話型のコミュニケーション「ダイアローグ」で組織変革を

「対話」の機会を創出し、『不機嫌な職場』から『ご機嫌な職場』へ

『不機嫌な職場』がベストセラーとなり、さらに今、『ご機嫌な職場』が人事関係者を中心に読まれているという。この事実だけを見ても、組織内のコミュニケーションのあり方が多くの問題の原因となっていることが分かる。

こうした中、問題視されているのは、効率性や合理性を優先するあまり、大切なコミュニケーションの本質を忘れてしまっていることである。東京大学の中原 淳准教授も『ダイアローグ/対話する組織』(長岡健・法政大学教授との共著)の中で、「知識をインプットするということと、伝えられた物事を理解すること、知識を行動変容につなげるということの間にあるギャップに、私たちはもっと敏感になるべきではないでしょうか」と、述べている。

人は他者と語り合うことで初めて、物事の意味を探り当て、理解を深めることができる。他者とのコミュニケーションがなければ、思考は深まらない。実際、人は誰とコミュニケーションをとり、どういう人とチームを組むかによって、成長が決まってくる。そのため、人が物事への理解を深め、理念やビジョンを共有したりするための方法として、「ダイアローグ(対話)」が注目されてきたのである。事実、組織が直面する課題に対して、「対話」というアプローチを取り入れ、マネジメント対話の場としての「ワールドカフェ」、職場のモチベーション向上のためのヒントを得る場としての「オープンカフェ」などを導入し、成果を上げている企業も増えてきている。

「対話」が生み出す理解の相乗効果ははかり知れない。他者に語ることで、自分自身が見えてくる。自由なムードを保ちながらも、お互いの違いを理解し合えるようになってくる。そうすることで、単に知識の共有だけではなく、協調的な問題解決が可能となり、組織の変革が促される。人事部には、組織で対話の機会創出を重視していく取り組みを行うことで、『不機嫌な職場』から『ご機嫌な職場』へ転換させていくことを期待したい。



  • このエントリーをはてなブックマークに追加

人事マネジメント解体新書 最新記事

関連する記事

HR業界団体情報

HR業界の代表的な業界団体をご紹介いたします。
一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会
人材データを分析・可視化して人と経営の未来に活かすピープルアナ...

一般社団法人日本テレワーク協会
テレワークを通じ、調和のとれた日本社会の持続的な発展に寄与する。

一般社団法人 日本エンジニアリングアウトソーシング協会
社会的責任を果たすための厳しい基準をクリアした技術系アウトソーシ...

ATDインターナショナルメンバーネットワークジャパン
米国ATDの活動に賛同しているパートナー。2007年設立。日本において...

公益社団法人 全国求人情報協会
求人情報媒体が読者の職業の選択と安定した職業生活に役立つことなど...

一般社団法人 日本人材紹介事業協会
厚生労働大臣の許可を受けてホワイトカラーを中心とした職業紹介を行...

一般社団法人 日本人材派遣協会
労働者派遣法の趣旨に則り、労働者派遣事業の適正な運営を図るため...

日本人材マネジメント協会
「日本におけるHRMプロフェッショナリズムの確立」を使命に、我が...

一般社団法人 日本生産技能労務協会
製造業などにおける労働者の就業の安定労務管理の安全を図り...

HR業界団体情報一覧

主催イベント

講演&交流会レポート

新年会~講演&交流会~

人事サービス業(人材サービス、研修・教育、人事BPOサービスなど)に携わる皆さまを対象とした「新年会~講演&交流会~」を2月2日に開催致しました。


『日本の人事部』ソリューションナビ
HRカンファレンス出展のご案内
HRリーグ