◆「外圧」で、グローバル化が実現できるか?
以上、国内での成長に限界が見え、急速に海外展開を進めていく中で、企業は幅広いパターンで人材のグローバル化を急いでいることが見て取れた。何よりグローバル企業では、優秀な人材は日本人に限らず、広く世界規模で登用していく考えを持っている。またグループ全体で、人事評価や報酬の基準も統一する動きも出ている。これなども、国内に左右されないでグローバルな経営体質を作らないと、この先、生き残っていけないという強い危機感があるからに他ならない。だからこそ、若いうちに新興国の文化や実務の修羅場を体験させ、内向きになりがちな若手社員の意識改革を進めようとしているのである。
今や、グローバル化への対応は、待ったなしの状況にある。そのため、調査結果で見たように、「英語力」「留学生」「外国人採用」といった“仕組みからの対応”、あるいはトップによる“グローバル化宣言”といった「外圧」という形によって、グローバル化を進めていく企業が多いように思う。
しかし、それで本当の意味でのグローバル化が実現できるだろうか?正直、疑問を感じる。問題は、それが現場の社員のマインドまで含めた、バリューチェーンの構造になっているとは思えないからだ。単純に、人や施策だけを変えればいいのではない。というよりも、「外圧」では人や組織は変わらない。北風と太陽の関係を思い出してほしい。結局のところ、グローバル化というのは、職場風土の問題に収斂されていくと考える。
とはいえ、「外圧」的なものによってでも、当面の施策として対応することは必要である。しかし、これはあくまでも「手段」である。「目的」とはならない。グローバル化が求める「目的」、さらに言えばその「本質」は、それとは違ったところにある。では、「真のグローバル化」とは、そして「グローバル人材」とはどういうことを意味するのか?また、そのような人材を育成していくには、どのような取り組みが必要となってくるのか?『後編』では、先駆的な取り組みを行うグローバル企業の人事担当者への話をヒアリングしていった中から、その「解」に迫ってみたいと思う。乞うご期待。