人事マネジメント「解体新書」

「グローバル人材」の育成に向けて【前編】(2/3ページ)

~待ったなしのグローバル化対応。英語力、留学生・外国人採用への取り組みは?

企業が求めるグローバル化の“水準”とは

ところでグローバル化といっても、その対応は幾つかの切り口に分けることができる。2011年2月にプレジデント社が上場企業約3600社を対象に行なった調査(有効回答366社、回答者は広報担当・人事担当)から、ここでは「英語力」「留学生」「外国人採用」の三つの項目について、企業が求めるグローバル化の実態を見ていくことにしよう。

(1)英語力

バブル崩壊後、グローバル化が叫ばれてから20年近くが経過した。その中で、改めて英語力が問われるようになったのは、2008年のリーマンショック以降のことである。先進国がパワーダウンしていく中、中国をはじめとする新興国の勢力が大きく伸びていった。この頃から、日本でも本格的に海外展開をしていかなければ企業は生き残ることができないと、皆が本気で考えるようになってきた。そこで、まずはグローバル化をめぐる指標として、事実上のビジネススタンダードとなっている「英語力」を取り上げてみたい。実際のところ、ビジネスの現場では英語力がどの程度評価され、必要とされているのだろう?

◆今後、4社に1社がTOEICを昇進の要件に

「英語テスト(TOEIC等)およびその結果を社内で活用していますか」との問いに対して、「はい」との回答が33.6%と、3社に1社の割合を占めている。また、活用されているテストのほとんどは「TOEIC」だった。さらに、「TOEICスコアを昇進・昇格の要件にしていますか」との問いに、「している」と回答した企業は13.7%だった。そして、要件としている企業の多くは、製造業が占めていた。

思えば、製造業は非製造業と比べ、1980年代の頃から海外との接点があった。ただ、以前は海外要員となる人は限定されていたが、海外比率が飛躍的に高まってきたここ数年の間で、その割合が一気に高まってきたのである。そうした事情が、この背景にある。ちなみに、TOEICのスコアを今は昇進・昇格の要件に「していないが、今後はする予定」12.6%を加えると、TOEICを昇進・昇格の要件とする企業は26.3%に及び、4社に1社の割合を占めることになる。これは、看過できない割合と言えよう。

【図1】英語テスト(TOEIC等)およびその結果を社内で活用していますか(%)

【図1】英語テスト(TOEIC等)およびその結果を社内で活用していますか(%)

調査出所:プレジデント社(2011年2月調査)※以下 、図2~図6も同じ


【図2】TOEICスコアを昇進・昇格の要件にしていますか(%)

【図2】TOEICスコアを昇進・昇格の要件にしていますか(%)

◆新卒、中途採用では過半数が英語力を考慮に

英語力に関してはここ1~2年、大手企業が続々と英語の公用語化を導入、もしくは検討するという報道が目立っている。中には、「TOEICで860点以上」という高い語学力と専門性を持った一部の新入社員を優遇する給与体系を取り入れる企業も出てきた。そこまでいかなくても、グローバル化がビジネスのあらゆる現場に進み、実践的な英語力が求められてきていることを実感している管理職や人事担当者は多いことだろう。それは、採用の段階から顕著に表れている。

「新卒採用時に英語の能力を考慮しますか」との問いに対して、35.8%の企業が「している」と回答している。これに、「していないが、今後はする予定」15.6%を合わせると、51.4%と過半数の企業が新卒採用時に英語力を考慮している実態が浮かび上がってくる。この英語力の判断基準では、予想通り「TOEIC」が圧倒的なシェアを誇っている。さらに、評価できるTOEICのスコアを聞くと、730点以上とする企業が多くなっている。必ずしも、グローバル人材の要件は英語力だけで判断できるものではないが、その中でTOEICは効率的、平等に基礎学力を測るという意味で、分かりやすい指標となっているのだろう。

この傾向は、中途採用でも同じ。「中途採用時に英語の能力を考慮しますか」との問いに対して、「している」は30.9%、「していないが、今後はする予定」は19.4%で、合わせて50.2%と、過半数の企業が英語力を考慮しているのだ。中途採用でも、評価の軸はTOEICのスコアが最も高くなっており、今や多くの企業の間で共通基準として定着していることが分かる。実際、グローバル企業においては、法務や人事、経理などでは相当レベルのTOEICスコアでなければ、仕事ができない状況にある。英語を公用語にするまでは行かなくても、グローバル対応としての英語力向上への取り組みは、今後とも確実に広がっていくのは間違いない。

【図3】新卒採用時に英語の能力を考慮しますか(%)

【図3】新卒採用時に英語の能力を考慮しますか(%)

【図4】中途採用時に英語の能力を考慮しますか(%)

【図4】中途採用時に英語の能力を考慮しますか(%)

(2)留学生

新卒学生の就職難が続く一方で、外国人留学生への求人が急増している。ディスコの「外国人留学生の採用による調査」を見ると、2010年度に外国人留学生を採用した企業は予定を含めて11.7%だった。これが、2011年度では21.7%と倍増している。海外進出する企業が増える中で、国内でも海外の顧客が増えてきている。このような状況下で、海外の実情をよく知る留学生に対するニーズが高まってきているのだろう。

◆“内向き”な昨今の新入社員。留学生採用で、社内を活性化

それは、留学経験に対する評価にも確実に出ている。「新卒・中途採用で、留学経験を評価しますか」という問いに対して、「プラス評価をしている」は39.9%と約4割に達し、「プラス評価をしていないが、今後はする予定」10.7%を加えると50.6%と過半数を占める。以前は、留学生に対してアレルギーを覚える採用担当者も少なくなかったが、現在はだいぶ様相が変わってきている。10年ほど前、日本で就職していた留学生はわずか3000人程度だった。それが現在では1万人を超えていることからも、それは明らかだろう。

このように留学生が重宝されるようになったのは、昨今の新入社員の“内向き”な傾向も関係していると考えられる。産業能率大学が実施した2010年度「新入社員のグローバル意識調査」を見ると、49.0%が「海外で働きたくない」と回答しており、2001年度から実に20ポイントも増えている。その理由は「リスクが高い」「能力に自信がない」などが主なもの。海外に対する不安が強く、意識が内向きになっている様子が伺える。中には、赴任はおろか海外出張もイヤという若者も少なくないという。こうした内向きの若者に対していかにスイッチを入れ、海外要員に育てていくかがこれからの課題の一つである。

他方、異文化を取り入れることによって、会社を活性化させたいという思いから、外国人留学生を積極的に採用する企業が少なくない。バイタリティのある外国人留学生との交流から、日本人の新卒社員が触発されるケースもあるとのこと。いずれにしても、グローバル化が進んでいく中で、企業は海外に留学している学生や英語能力の高い学生に対する採用意欲が一段と高まってきているようだ。

【図5】新卒・中途採用で、留学経験を評価しますか(%)

【図5】新卒・中途採用で、留学経験を評価しますか(%)

(3)外国人採用

さらにここに来て、日本企業の外国人採用数が増えてきている。外国人社員を多く採用する企業の背景には、新興国への展開にさらに力を入れていくという経営戦略がある。新聞報道によると、ファーストリテイリングでは2012年度、1300人の新卒採用のうち、8割弱を外国人にする予定という。しかも、そのうち1000人近くが現地採用の外国人である。採用から育成までをグローバルで行う体制を整え、世界中で活躍できる店長を送り出していくという戦略がそこにある。まさにグローバル展開の結果、外国人社員数が増えたということになる。

◆ダイバーシティが求められる中、3社に2社が外国人を採用

こうした事業のグローバル展開の流れは、調査結果にも反映されている。「外国人社員を採用していますか」との問いに対して、「している」が66.9%と3社に2社の割合を占めているのだ。なお、出身国について見ると、中国が最も多く、続いて中韓以外のアジア諸国、韓国の順となっている。

【図6】外国人社員を採用していますか(%)

【図6】外国人社員を採用していますか(%)

これには、別の要因も加わる。グローバル展開を進めていく中で、これまでの日本企業が得意としてきたビジネスモデルや日本的な人事管理が通用しなくなってきている現実があるからだ。すべてを否定するわけではないが、今求められているのは、これまでの成功モデルではなく、現地のニーズを拾い、マーケットに深く入り込んでいくための新しいモデルではないだろうか。それは、人事管理でも同様のように思う。

そして、この段階で求められるのは、まさにダイバーシティ(多様性)という概念である。これが日本人には難しいかもしれない。何より、現地のさまざまなニーズを拾っていくためには、外国人を積極的に採用し、登用していき、多様な文化や風土を組織の中に蓄積し、それをアウトプットとして出していくことが求められている。そのためには、外からの刺激が非常に効果的である。だからこそ、外国人採用なのである。



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