人事マネジメント「解体新書」

新しい採用スタイル「再入社制度」による効果とは(前編)
~元社員が社外で得た知見を活用することで、人と組織の多様性を実現する~

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有効求人倍率がバブル期水準に達し、人材不足が深刻化している。中途採用を行っても、なかなか思うような人材を採用できない企業は多い。このような状況下、一度退職した後に復職する「再入社(出戻り)社員」が注目を集めている。これまでは会社を辞め、他社に就職した社員が戻ってくるケースは限られていた。しかし元社員は自社の状況をよく知っていて、「即戦力」としての活躍が期待できることもあり、積極的に「再入社制度」という新たな仕組みを設ける企業が増えているのだ。果たして「再入社制度」は、日本企業の採用のあり方に、どのような影響(効果・効用)を与えるのだろうか。

昨今の「再入社制度」の実態
◆退職した社員を、さまざまな視点から再雇用して活用

経営にスピードが求められる昨今、多くの企業が「即戦力」を求めている。そこで注目されるのが、一度退職した社員を再入社(再雇用)する「再入社制度」だ。以前から結婚・出産などで退職した「女性社員」を再雇用するケースはあったが、昨今はそういった事例にとどまらない。マスメディアなどで報道された「再入社制度」関連の記事を見ても、以下のようにさまざまなケースがある。

【「再入社制度」に関する報道事例】

キャリア・リターン制度
ジョブ・リターン制度
キャリアアップや家族の理由などで一度退職した社員を再入社させ、活躍してもらう制度。多様な価値観や能力を持った人材を活用するために、退職した社員のさまざまなキャリアや人生経験、知識を活かすことを狙いとしている。
リ・チャレンジ採用 これまでの社歴の中で一定の勤務実績があることを条件に、退職した社員を再雇用する制度。多様な能力・ノウハウやさまざまな経験を有する元社員を活用することで、事業運営の活性化、イノベーションの喚起を目指す。
Welcome Back制度 ライフイベント(結婚・出産・介護・配偶者の転勤など)による退職者だけでなく、キャリアプランを理由に他社に転職した社員も対象に、再び力を発揮したいと考えている人材を再雇用する制度。これまで再雇用に関しては特に制度化されていなかったが、積極的に復職希望者を受け入れるため、制度として明文化した。
ウエルカムバックレター制度 退職者に対して、「ぜひ戻ってきてほしい」という会社のメッセージを伝える制度。「向こう2年以内は、元の待遇以上で歓迎する」という旨を書いた手紙を対象者に郵送する。在籍時、会社に大きく貢献し、問題のない辞め方をした退職者が対象となる。
カムバック・パス制度 退職する社員に対して、再入社の権利(パス)を与えることにで、同社への復職が可能となる制度。パス付与に際して、退職理由に制限のないことが大きな特徴である。
育自分休暇制度 転職や留学など、環境を変えて自分自身を成長させるために退職する社員をターゲットとする制度(対象は35歳以下)。退職後、最長6年間は復職が可能である。背景には、将来性の高い優秀な社員が社外で学び、幅広い視野を身に付けてもらおうとする人材戦略がある。

一口に再入社と言っても、ネーミングは各社各様。その中身も、再入社した社員がさらなるキャリアアップを目指すだけではなく、退職した社員が外部で得た経験や知識、人脈などを積極的に組織に取り入れようとするケースや、事業運営を活性化しイノベーションを図っていこうとするケースなど、さまざまな視点、目的があることがわかる。これらの企業では、自らの意志で会社を去る社員は広い雇用適性があり、向上心に溢れていて、労働市場を渡っていく能力を持ち合わせていると評価している。「再入社社員」は、雇用する側にとって非常に魅力的な人材なのだ。

◆約4社に3社が「再雇用実績あり」と回答

では、再入社の実態がどうなっているのかを見てみよう。「出戻り社員(再雇用)実態調査」(エン・ジャパン・2015年実施)によると、一度退職した社員を再雇用した実績のある企業は72%に上っており、約4社に3社の割合を占めている。再雇用の理由としては、「即戦力を求めていたから」「人となりが既に分かっているので安心だから」が多くなっている。また、再雇用後の職種を見ると、「同職種」が85%となっており、大多数の企業が退職前と同じ職種で迎え入れると回答している。

同調査の中で興味深いのは、出戻り社員の受け入れに対する職場の反応。「とても良い」13%、「まあまあ良い」57%と、合わせて7割の企業が良好な反応だと回答している。一方、「あまり良くない」は15%にとどまった。再入社した社員からは、「世間の厳しさを知って、以前よりも前向きに働くようになった」「他社に転職してみて、退職理由だった不満が大したことではないことだとわかった」という声が聞かれるなど、一度転職したことで新たな気づきを得たり、意識が変わったりした人も少なくないようだ。

■貴社では、一度退職した社員を再雇用したことがありますか(%)
再雇用したことがある 72
再雇用したことがない 26
分からない 2
■再雇用後の周りの社員の反応はいかかですか(%)
とても良い 13
まあまあ良い 57
あまり良くない 15
分からない 15

しかし、一度退職した社員を再雇用する制度を設けているかどうかを聞いたところ、「制度として設けている」との回答はわずか9%に過ぎなかった。一度退職した社員がいつでも戻って来られる環境や制度を整えられている企業は、まだ少数派である。

■一度退職した社員を再雇用する制度を設けていますか(%)
制度として設けている 9
制度としては設けていない 88
分からない 3
*資料出所:「出戻り社員(再雇用)実態調査」(2015年:エン・ジャパン)

 


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