人事マネジメント「解体新書」

社員に気づきと成長を促す「キャリア開発支援」
その全体像と関連施策、運用のポイント (1/3ページ)

2016/04/14

変化が激しく、将来の予測が難しい経営環境にあって、「キャリア開発」があらためて注目されている。社員の能力を高めるため、また、継続的に高い成果を生み出す組織を実現させるために不可欠だからだ。しかし、実際に人事担当者がキャリア開発支援を行う際、施策の対象範囲が広く、取り組み内容も多岐に渡るため、何をどう進めていけばいいのか、戸惑うことが少なくない。それぞれの施策を効果的に行うには、まずはキャリア開発支援の枠組みをしっかりと把握し、具体的な制度設計に踏み込んでいくことが重要である。「前編」では、「キャリア開発支援」の必要性を明らかにするとともに、具体的な対応(施策)と、運用のポイントについて解説する。

「キャリア開発支援」の必要性
◆優秀な人材を確保・定着させるためには「キャリア開発支援」が不可欠

これまで大企業を中心に、社員は与えられた仕事や役割を会社の期待通りに遂行していく働き方がよしとされた時代が長く続いた。しかし、社会を取り巻く環境が変化し、働く人の価値観が多様化している現在は、自分らしいキャリアとは何かを考え、仕事を軸とした人生が意味のあるものになるよう、自分の持つ能力を磨き、育てていく働き方が求められている。

事業を取り巻く環境が激しく変化しているため、多くの企業では求められる商品・サービスも変化しているが、それはキャリアのあり方においても同様だ。状況によって仕事内容や担当業務が全く変わってしまうことが頻繁に起こっているため、主体性を持って自在にキャリア開発を行えるようにしておかなければ、自分を見失うことになりかねない。

だからこそ、自分で自分のキャリアを考えることが大切なのである。「自分は会社で何をしたいのか」「どういう自分でありたいのか」「何を通して自分を表現していきたいのか」といった「働くことの意味」や「自分にとっての仕事・会社」について考えることが、今まさに求められているのだ。

そのためにも、企業は社員一人ひとりが「潜在的な能力を発揮する」「自らの価値観・キャリア観で仕事を選択する」「社内価値だけでなく、社外価値も高まるような職業人生(キャリア)を歩む」といったことができるようにすることが大切だ。もちろん、これらは社員一人ひとりの責務だが、会社としてできる限りの支援をすることが、これからは必要になってくる。一人ひとりが仕事を通じて実現したいことを考え、将来の姿を描き、その中で自分の日々の仕事を意味づけ、主体的・自律的に取り組む。そういった状態が実現できれば、社員自身のやりがいと成長につながり、組織活性化へとつながっていくからだ。

キャリア開発支援は、優秀な人材を確保・定着させるためにも、大変重要な戦略と言える。例えば、最近の学生は就職活動の際、自分の能力を伸ばしてくれる、成長することができる会社を選ぶ傾向が強い。売り手市場と言われる昨今の採用環境下、企業にとって優秀な学生を引き付けることは、重要な課題となっている。「御社では、どのようにキャリアを形成することができるのでしょうか?」といった学生からのストレートな質問に対して、明確に答えることができなければ、選ばれる会社にはなれないように思う。

また、新卒者の3割が3年以内に辞めるという現実がある中で、これからは人材の流動化がますます進み、転職をすることが当たり前の世の中になるだろう。そのような状況においては、会社が社員の長期的なキャリア開発支援を行っているかどうかが、優秀な人材を引き止めておく重要な条件となるのは間違いない。

このように、社員のキャリア開発を支援することは、これからの時代において、企業責任であると同時に、まさに重要な企業戦略であることを人事部は認識すべきである。

◆自らの意志で選択することの重要性

言うまでもなく、キャリアのプロセスとは、実に多様な「選択」の連続からなる。それも、一人ひとり異なる。ここで重要なのが働き方の核となる「価値観」であり、これがキャリア選択において大きな決め手となる。自らの価値観によって決定(納得)したものであれば、自らに責任を持ち、達成に向けて主体的に行動していくことができる。仮に、予想外の配置や異動となった場合でも、そこで働くことの意味を自分として見出すことができれば、自分で選択したことと同じである。しかし、他から押しつけられて嫌々やっているのであれば、積極的に働く動機づけを持つことは難しいことだろう。

そういう意味でも、自分がどのような「価値観」を持っているのかを知ることは重要だ。なぜなら、人間は自分にとって価値があると思うことを実践し体感することによって、生きがいを感じ、自己実現・充実感を覚えるからだ。すると、さらに努力をし、成長していこうとするようになる。この自己理解のプロセスを経ないで、周囲から勧められるまま、あるいはあまり深く考えずに決めてしまうと、「このような事態は、全く考えてもみなかった」「思っていた仕事と全く違う。これでは、興味・関心が持てない」といった状況に陥り、後々、後悔することになりかねない。そのため、社員一人ひとりが「キャリアビジョン」を描くことが重要なカギを握っているのだ。

毎日の忙しさに流され、あっという間に年月を重ねるような仕事人生ではなく、自らのキャリアを強く意識し、開発していくからこそ、仕事へのやりがいやモチベーションが醸成される。このようなキャリア開発を実現していくには、自分の「過去・現在・未来」についての自己評価や能力に対するチェック・分析といった作業(プロセス)が欠かせない。

 


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