人事マネジメント「解体新書」

最新版「研修」の傾向と対策【後編】
~経営に貢献できる人材の育成に向けた、研修の新しいトレンドを紹介 (2/2ページ)

2015/10/21
近年の研修の傾向と実施する際のポイント【4】
(9)リーダーシップ研修
◆リーダーにとって必要な心構え・スキルを学ぶ

会社組織において、リーダーシップの持つ意味は非常に大きい。リーダーシップのあり方によって、組織の向かう方向性や現場のスピード感が全く違ってくるからだ。リーダーシップとは、多様な構成員から成る組織をまとめると同時に、組織が目指すゴール(目的)へと導いていく行動のこと。特に、部下を持つ管理職の場合、メンバーに動機づけを与える指示をする上で、リーダーシップは不可欠と言える。このようなリーダーシップを学ぶ場は、階層別研修の一部として行われることが一般的だが、近年はテーマ別研修として単独で行われることも増えている。

リーダーシップは全ての社員に必要だが、メンバーに対して指示命令、動機づけを与えるという点において、「リーダーシップ研修」の主な対象となるのは課長~部長相当の役職者である。特に、「新任管理職研修」は、新たなステージに立つリーダーにとって、必要な心構えや実践すべき具体的な行動論を学び、リーダーとして成果を出す自分なりのスタイルを発見し、必要なスキルを身に付けるための重要な機会と言える。近年の「リーダーシップ研修」で扱うテーマと内容は、以下のようなものが多い。

【テーマ】

・自己に対する気づき(自分のリーダーシップスタイルを知る) ・ハイパフォーマンスチームの構築に向けて ・対人関係構築スキルの習得

【内容】

・リーダーに求められる役割 ・リーダーシップとは何か ・タイムマネジメント ・ストレスマネジメント ・フィードバックスキル、コーチングスキル ・チームビルディング ・権限移譲の方法 ・部下指導、育成 ・意思決定 ・計画と組織 ・チェンジマネジメント など

◆あるべきリーダーシップはない。自分にふさわしいリーダーシップのタイプを身に付ける

リーダーシップにはいろいろなスタイルがある。その分類にはいくつかの分け方があるが、「PM理論」による分類が分かりやすい。「PM理論」では、成果重視(Performance)と人間関係重視(Maintenance)の2軸を基にして、以下のような四つのタイプに分類している。

  • Pタイプ:成果を重要視するが、組織の人間関係にはあまり目を向けないタイプ
  • PMタイプ:成果を重要視しつつ、組織の人間関係にも配慮するタイプ
  • pmタイプ:成果も組織の人間関係も重要視しないタイプ
  • Mタイプ:成果はあまり重要視せず、職場の人間関係に配慮するタイプ

多くの人は、仕事の成果も人間関係も共に重視するPMタイプがいいと思うだろう。しかし、現実の優れたリーダーを見ると、必ずしもそうではない。例えば、やる気に満ちている職場では、むしろPMタイプは煙たがれる存在となる。組織にはいろいろなタイプが存在しているので、求められるリーダーシップはその時の組織の状況によって異なり、その人の個性・持ち味によっても大きく違ってくるからだ。近年の傾向としては、明確なビジョンを示して組織を引っ張っていくタイプ、あるいは部下の声に耳を傾けて支援していくタイプが求められているが、実際の「リーダーシップ研修」ではあるべきリーダー像を強制することはあまりない。リーダーシップの基本を学びつつ、自分はどういうタイプなのかを知り、自分が属する組織ではどのようなリーダーシップを発揮すべきなのかを考えた上で、自分にふさわしいリーダーシップのスタイルを身に付けさせるというプログラムが多い。

◆現場でリーダーシップを発揮するめに、フォローアップの機会を用意する

「リーダーシップ研修」を受け、リーダーとしての基本を学び、自分のタイプを把握できたとしても、すぐに現場で有効なリーダーシップを発揮できるようになるわけではない。求められるリーダーになるためには、さまざまな経験を通して学び、成長していくプロセスが欠かせないからだ。そのプロセスの中で何度か立ち止まり、自己を振り返る内省(リフレクション)が重要である。そのためにはなぜ成功あるいは失敗したのか、その体験で自分は何を学んだのかを深く考えることだ。このような体験の棚卸しを「リーダーシップ研修」にうまくひも付け、フォローアップを行うことにより、組織における真のリーダーが成長していくことになる。

(10)経営理念浸透研修
◆経営理念に共感し、行動する組織を作る

「経営理念」には、経営者(創業者)の思い、企業の価値観などが記されている。そして、社員の結束を強化し、主体的な行動を促す機能がある。多様な人が集まり、成熟化した組織では、人は待遇よりも共感で働くことが多い。また、金銭的報酬で全ての人をマネジメントすることは難しい。だからこそ、「経営理念」に共感する組織を作ることに大きな意味がある。しかし、創業から年月が経ち、経営者が代替わりしていくに従い、「経営理念」と現実(現場)とのかい離が大きくなり、社員の行動が「経営理念」とは違ったものになっていくことが少なくない。そこで、折に触れて「経営理念」を社員に確認・浸透させ、「経営理念」に沿った行動を取ってもらうために「経営理念浸透研修」が行われるようになった。形式としては単独ではなく、階層別研修(新入社員研修、中堅社員研修、管理職研修など)の中で実施されることが多い。

「経営理念」は経営上の根本原則・ルールであり、組織風土の根幹となるものだ。しかし、日常業務の進め方やトラブルが発生した時などの具体的な心構えや対処方法まで、詳細に触れているわけではない。普遍的な内容を記しているため、抽象的な表現が多く、行動に移す際にはその表現を翻訳するプロセスが必要になる。企業としての視点を、組織を構成する社員としての視点へとブレークダウンすることが欠かせないのだ。そのため「経営理念浸透研修」では、「経営理念」が求める行動を明確にするプロセスを体験させる。「経営理念」から企業に求められる役割・道筋を提示し、次にそれを実現するための社員の行動のルール・態度を明確にしていくのだ。このような一連の翻訳プロセスを体験する中で、経営理念が社員に腹落ちされていく。

◆「経営理念」を「評価指標」に用いて議論し、行動を確認し合う

最近は、「経営理念」を「クレド」として企業活動の拠り所となる価値観や行動規範として定め、常時社員に携帯させるケースが増えている。さらに、経営理念を社員の視点でよく分かるように「社員行動規範」として翻訳し、それを「評価指標」に用いて経営理念の実現につなげていこうとする企業もある。「評価指標」には会社の思い・本音が反映される。仕事で求められる役割を評価するだけでなく、社員のマインドや態度・行動が、その会社にふさわしいかどうかを見極め、フィードバックすることが大切だと考えているのだ。また、「経営理念浸透研修」では、現実に起こり得るさまざまな場面を想定し、「社員行動規範」に基づいた行動とはどういうことかを皆で議論し、そこから具体的な行動を確認し合っていくことを主眼に置くケースが多くなっている。

特に、グローバルに展開していく企業の場合、「経営理念浸透研修」の持つ意味はより大きくなる。日本と状況が異なる現地法人では、「経営理念」を共有していなければ、現地でのマネジメントがうまくいかないからだ。そこで、「経営理念」を理解・浸透させるための研修に多くの企業が取り組むようになってきたのだ。「経営理念」に基づいた行動とはどういうものか、映像などのツールを交えて議論を交わし、こうした場面でなぜそのような行動が求められるのかを、現地法人の社員に理解して、行動してもらうようにする必要がある。

◆現実に起きている事象をテーマとし、「経営理念」に沿った行動を皆で話し合わせる

「経営理念」は一度決めたら、容易には変更できない。そのため、経営を取り巻く環境が大きく変化した場合、実情に合わなくなったり、社員に求める行動などが変わってきたりすることがある。その点からも「経営理念浸透研修」では、頭ごなしに覚えさせようとするのではなく、あくまで現実に起きている事象をテーマとして取り上げ、そこで「経営理念」に則った行動とはどういうものかを、皆で話し合わせる場をできるだけ多くすることが大切である。このようなワークを行うことで、現場における「経営理念」の実現へと結び付いていくようになる。

*               *

研修を実のあるものにするためには、とにかく本人に腹落ちさせることである。そのためには、グループワークやロールプレイングを増やし、実感してもらうことが大切である。例えば、「考課者研修」などでは、演習でビデオを上映し、実際に模擬考課を行って考課者に自身の傾向を把握させる。同一のモデルを多人数で評価する経験を通して考課者による目線の違いを実感できるようにする、といった工夫を行う企業が増えている。

また、研修を1回限りで終わらせてしまっては、効果が薄い。人は時が経てば相当のことを忘れるものだ。また、自己流の考え方や行動スタイルに戻ってしまうことも少なくない。その意味からも、研修を1回で終わりとするのではなくフォローアップを行うなど、継続して実施していくことが求められる。

(解説:福田敦之(HRMプランナー/株式会社アール・ティー・エフ代表取締役)

 


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