人事マネジメント「解体新書」

最新版「研修」の傾向と対策【前編】
~経営に貢献できる人材の育成に向けた、研修の新しいトレンドを紹介 (2/2ページ)

2015/10/14
近年の研修の傾向と実施する際のポイント【2】
(4)経営リーダー研修
◆次世代リーダーが不足する中、「経営リーダー」となる人材を早期に育成する

近年、「経営リーダー研修」の導入を行う企業が増えている。多くの企業では、これからを担う30代、40代の社員のマネジメント経験が不足しているため、数年後には主要なポストを担当する次世代リーダーが不足してしまうのではないかという懸念があるからだ。

もちろん人事部では、当該のポジションの現職者が抜けた際に後任を充てることは、人事異動・配置という形で日常的に行っている。しかし、次世代を担うリーダーを育てるという視点で考えると、通常の対応では必ずしもベストな人材が登用できているとは限らない。年功的な運用を行う企業が、依然として多いからだ。将来を見越した人材を選抜し、確保・育成するという視点が経営リーダー育成には欠かせない。そのため各企業では、事前に主要ポジションの候補となる人材を予め用意していくことを重視するようになっており、そこに「経営リーダー研修」の持つ重要性がある。

◆「経営リーダー」となる人材を、じっくりと育成し見極めていく

「経営リーダー研修」では、選抜した後の育成と、リーダーとしての見極めのプロセスが非常に重要である。また、プログラムは長い期間をかけて行われることが多い。短いものでも半年、長期では3~5年に及ぶケースもある。この期間内に一貫性のある育成方針の下、定期的な集合研修とさまざまな課題が与えられることになる。

最近のプログラムを見ると、より成果を重視したものになっていることが分かる。自社の経営や現場における現実の問題・課題を扱うと同時に、研修で学んだスキルを実務で使い、成果に結び付けていく工夫が求められているのだ。そこで、個別指導・個別育成が徹底されている。これによって教育効果が高まり、個別人材の見際めが可能になる。そのためには、事前に育成対象者個別の特性や資質的な課題などを把握する、スクリーニングが欠かせない。具体的には、選抜試験や360度診断、資質診断などを行い、以降の育成について個別に管理し、育成課題の履歴を蓄積し対応する。

◆「今」必要なことだけでなく、「将来」の変化を見据え、候補となる人材を幅広く特定する

「経営リーダー研修」を成功させるためのポイントは、以下の通りである。

  • 将来の人材ニーズを焦点に入れる
    「今」必要となる人材(要件)に焦点を当てると同時に、「将来」の変化を見据え、可能性のある人材を幅広く特定する。
  • ポテンシャルの高い部下を対象とする
    上司から見て「よくやっている」部下を対象にするのではなく、むしろ、上司のやっていることを発展させてくれる可能性の高い部下を対象にする。自分自身が今行っている経営やマネジメントスタイルとは違うタイプを選ぶことが、変化する経営環境に対応できる人材の拡充につながることになるからだ。
  • 基準やプロセスの透明性を高める
    候補者が選ばれる基準や、プロセスの透明性を高めることが大切である。そのため研修をスタートさせる際は、その概要をオープンにしておくことである。「自分は候補に選ばれているのか」「今、選ばれていなければ、今後選ばれることはないのか」といった不安感の高い状況では、社内のモラールも低下していくことになってしまう。
(5)モチベーション研修
◆一人ひとりのモチベーションを高めることで活性化を促し、生産性向上へと結び付ける

職場で働く人の成果や生産性は、本人のモチベーションの状態によって大きく異なる。それは、個人の集まりである組織でも同様だ。そのためにも一人ひとりのモチベーションを高め、活性化を促し、生産性を向上させることが重要なテーマになっている。その考え方と具体的な方法を学ぶのが「モチベーション研修」だ。また近年では、各階層別研修の中に「モチベーション研修」を組み入れるケースが増えている。その狙い・目的は、以下のようなものである。

  • モチベーションの意味、効果・効用、重要性を学ぶ
    第一に、組織への貢献が自分の成長につながる、という考えを持ってもらうことが重要である。そのためにはまず、一人ひとりのモチベーションの源泉がどこにあるのかを知ることだ。モチベーションを高めることが、仕事に対する高い貢献意欲へとつながり、その結果、組織風土が活性化し、生産性が向上していくからである。
  • 考え方とスキルを習得する
    各人のモチベーションをコントロール・マネジメントしていくための考え方、スキルを、メンバーと管理職双方に身に付けてもらう。
◆自らのモチベーションをマネジメントし、成果・業績につなげる

社員のモチベーションの問題は、経営において優先順位の高いテーマとなっている。モチベーションが個人の仕事の成果、組織の業績や組織風土を大きく左右することが分かってきたからだ。そのため、最近の「モチベーション研修」では、モチベーションの「基本事項」を抑える一方で、一人ひとりのモチベーションを細かく分析し、ポイントを押させて行動計画を立てていくことに重点が置かれるようになっている。自らのモチベーションをマネジメントし、成果・業績へとつなげていくことを狙いとしたプログラムが増えているのだ。

プログラム内容を見ると、客観的な自己分析、高いやる気を安定的に維持できるスキル習得、といったことを取り入れたメニューが多いい。ここでポイントとなるのは、一人ひとりが気づきを得て、内面から変革行動を起こすことである。そのためにも、自分なりの目標をしっかりと持ち、それを日常に埋没させないこと。そして、日々の行動に意味づけを行っていくことである。このように自分なりにモチベーションを維持、管理していくためには、自分でモチベーションをコントロールするスキルを身に付けていくこと(セルフ・モチベーション・コントロール)が、とても重要である。

◆モチベーションは人により異なる。個人と会社の方向性を紐づけ、プログラムを企画する

改めて言うまでもなく、モチベーションのあり方は一人ひとり違っている。それを前提とした上で、会社の方向性とどう紐付けていくかを、人事部と現場マネジャーとが一定の理解を持ち、プログラムの企画・立案していかなければならない。個人のモチベーションと組織活性化とのリンク(相乗効果)を常に意識し、そこを実感させるようなコンテンツを盛り込みながら、理想的なモチベーション状態をイメージできるようにしていくことである。また、モチベーションは、常日頃から意識していないと下がっていく傾向がある。研修終了後も、モチベーションが持続できるようなフォロー、工夫を盛り込むようにすることが大切である。

*               *

以上、「前編」では近年、社員教育が変化する中で、階層別研修を中心としたコンテンツの傾向を見てきた。次回の「後編」では、「グローバル研修」「コンプライアンス研修」など、昨今、企業側のニーズが高まっている研修を中心に、その内容を紹介する。

解説:福田敦之(HRMプランナー/株式会社アール・ティー・エフ代表取締役)

 


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