人事マネジメント「解体新書」

多様な働き方が求められる時代、注目される“限定正社員”
~その可能性と雇用管理のあり方について考える~【前編】 (2/3ページ)

2014/8/18
「限定正社員」をどのように活用するのか
◆多様な働き方を求めるニーズに安定雇用の枠内で応える

非正社員の多くは雇用が安定している正社員になりたいと希望しているが、一方で無限定の働き方に二の足を踏んでいる人は少なくない。そのため、「担当する仕事範囲が限定されている」「遠方への転勤の心配がない」「労働日数・時間が短い」といった非正社員の働き方にメリットを感じるのである。そこで、これまでのような正社員&非正社員という二項的なくくりでなく、その間の「限定正社員」という働き方を意図的に設けることは、より多様な働き方の選択肢の範囲を広めていくことにつながる。それは、働く人にとっての自己決定をより広く認めていくことになる。

高度成長期から続いた「男性正社員」を中心とした画一的な働き方から、脱工業化社会、そして情報化社会へと転換した現代日本において、人々は多様なライフスタイルを模索している。「限定正社員」は、このような働く人たちの多様な働き方を求めるニーズに、安定雇用という枠内で応えるものと言えるだろう。

多様なライフスタイル、働き方が求められている現代において、従来型の正社員以外に非正社員しかいないようでは、合理的とは言えない。自分の持つスキルや能力、キャリア展望のうち、どれだけを企業のために使うのか、働く人はより多くの選択肢を持っていいはずである。そうした点からも、「限定正社員」の導入について積極的に取り組むことは、時代の流れに合致したものと言える。他方、企業においては、より多くの労働力を企業が確保するために、魅力ある多様な雇用のあり方を用意することが求められている。

◆「限定正社員」のもたらすメリット・効果

前述したように、「限定正社員」は無期の労働契約である点で有期労働契約の非正社員と異なる。しかし、配属先の活用業務や事業所が限定されているほか、残業がない、短時間勤務であるなど、非正社員の働き方と共通点がある。現在、人材不足が深刻なサービス業などでは非正社員を正社員へと転換・登用していく動きが活発化しているが、必ずしもうまくいっているわけではない。それは、正社員になると非正社員の時とは働き方が大きく異なってくるからだ。しかし、「限定正社員」なら、その点でのハードルが低くなり、転換・登用がよりスムーズとなる。「限定正社員」を導入することによって今後、非正社員から正社員への転換・登用が拡大していくことが期待されている。

また、正社員にとっても「限定正社員」の導入は、ワークライフバランスのなどの観点から、多様な働き方の実現につながることになる。止むを得ない事情によるキャリアの中断を防ぐことも可能だ。このようなことから、企業にとっても従業員全体のモチベーションの向上や、人材の確保・定着が進むことになり、組織の生産性向上に結び付いていく。

◆「限定正社員」導入の目的

事実、先に見た「『多様な形態による正社員』に関する研究会報告書」(2012年)でも、企業が「限定正社員」(多様な正社員)を導入する目的として、「優秀な人材を確保するため」「従業員の定着を図るため」といった人材確保・定着の必要性と、「仕事と育児や介護の両立(ワークライフバランス)支援のため」といった主として正社員の働き方の見直しの必要性が多く挙げられている。

また同調査では、「限定正社員」導入の目的を大別して、以下のような三つの事項にまとめている。

(1)人材確保・定着、ワークライフバランス支援 働く人のニーズに合わせて異動の範囲を限定することにより、優秀な人材の確保・定着、ワークライフバランスの支援を図ろうとするもの
(2)合理的人員配置 働く人のニーズに合わせつつ、個々人の異動可能範囲をあらかじめ明確にすることで、要員配置を効果的・効率的に実施しようとするもの。全国に多くの事業所を展開し、タイムリーに要員配置を行わなければならない企業に見られる
(3)非正社員の活用・登用 基幹的労働力となっている契約社員等の非正社員に対して、より安定した雇用、魅力的な処遇を提供しようとするもの
図表3:「限定正社員」(多様な正社員)導入の目的(制度を設けている企業)(%)
優秀な人材を確保するため 43.3
従業員の定着を図るため 38.5
仕事と育児や介護の両立(ワークライフバランス)支援のため 23.7
賃金の節約のため 18.1
賃金以外の労務コストの節約のため 9.4
非正社員からの転換を円滑化させるため 7.6
1日や週の中の仕事の繁閑に対応するため 6.4
臨時・季節的業務量の変化に対応するため 5.1
同業他社が正社員に複数の雇用区分を設けているため 4.7
従業員や労働組合等からの要望があったため 3.9
その他 12.4
不明 21.3
出所:「『多様な形態による正社員』に関する研究会報告書」(厚生労働省・2012年)より
◆「限定正社員」活用のポイント

「限定正社員」を活用していく際、いくつかのポイントがある。まず、非正社員から正社員へのステップアップにつなげること。本人の希望に応じて、正社員へと転換できる仕組みを作ることも視野に入れるのだ。また、昇格時点などに、本人の希望・能力に応じて正社員区分間の転換を可能にするなど、柔軟な運用が求められる。合わせて、育児や介護といった事情を持つ正社員が一時的に「限定正社員」に転換できるような仕組みも整備しておくと、「限定正社員」制度が社内でより認知され、その価値も高まっていくと思われる。

次に、処遇格差への対応である。基本は、正社員との賃金制度・賃金水準の均等・均衡を考慮することを考えたい。その上で、「基本給は同水準として、勤務地手当を不支給もしくは半額支給とする」「資格給は同額とし、職能給に差を付ける」といったように、異動の範囲や担当業務の違いなどに応じた賃金制度・賃金水準としていくことだ。

また、昇進・昇格、能力開発といったキャリア管理においては、同等に取り扱うことが望ましい。そして、労使間の協議を踏まえ、合理的な範囲で異なる取り扱いとし、柔軟な対応を行うのが現実的であろう。



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