人事マネジメント「解体新書」

新・女性活用時代
―― いま改めて注目される「女性活躍推進」について考える【後編】 (3/3ページ)

2014/4/14
事例紹介II : 「女性リーダー」の育成
「女性リーダー」のキャリアをどう設計するか

女性活用を進めていくには、前述したような「ポジティブアクション」を利用して、まず女性社員の「絶対数」を増やしていくことにより均等待遇を実現し、女性を活用していこうという職場全体の風土を醸成することがポイントである。これで一定の成果が出たら、次に目指すのは「女性リーダー」をいかに育てていくか、がテーマになる。私見だが、若年期には男性より女性が高い能力を示すことが多いのではないだろうか。会社の初期キャリアにおいても、女性の方が勝っているというケースが少なくないように思う。しかし、結婚・出産・育児、配偶者の転勤など、男性と比べてキャリアの中断を迫られることの多いのが女性である。その結果、適齢期に「女性リーダー」がなかなか輩出できていないのが実態だ。では、リーダー候補と目される女性に、どのようなキャリアを設計していけばいいのか?

◆C社(中堅ITベンチャー):「女性リーダー」の早期育成と定着を狙う

C社は、創業15年の中堅ITベンチャー企業である。株式を上場したことで、優秀な女性の応募が増え、こうした女性をいかにリーダーにしていくかが、これからの会社の成長のカギを握ると考えた。そこで「女性リーダーを育てるためのキャリアモデル」を作成することになった。

【早期の計画的ジョブ・ローテーション】
具体的な制度(アイデア)見ると、まず「早期の計画的ジョブ・ローテーション」である。一般的に、女性は20代後半から、結婚・出産など多くのライフイベントが待ち受けている。そうなる前の段階で、リーダーを目指してもらう女性には、いくつかの部署を意図的に経験させる「ジョブ・ローテーション」が必要だと考えたのだ。入社5年の間に、二つから四つの部門で異なる職種・仕事内容に就いてもらい、成長と経験を先取りする、というわけである。

【トライアル&プロジェクト・リーダーへの登用】
次に「トライアル&プロジェクト・リーダーへの登用」である。「ジョブ・ローテーション」によって一定の経験と成長をした後、チームリーダーとしてトライアル的にリーダーを経験してもらうというものだ。これで、一定レベルの評価を受けた人は、「プロジェクト・リーダー」へと登用していく。これらリーダーを20代の内に経験することで、チームプレイやプロジェクトで仕事の成果を出すために必要なリーダーシップを学んでもらう。

【ライフ・キャリア研修】
上記と並行して行うのが「ライフ・キャリア研修」である。女性は結婚・出産だけでなく、配偶者の転勤など偶発的なライフイベントに翻弄(ほんろう)されることが多い。そうした際に、どのような対応を取るのか、自ら内省する機会をもってもらうというものである。さらに、経験者との対話、具体的なライフ・キャリアの設計(シミュレーション)など、より詳細な内容を盛り込んでいく。

【在宅リーダー・再就職オプション】
課長職以上のリーダーとなった際には、働き方のフレキシビリティーを高めるために「在宅リーダー」という処遇を新たに設けるという。これもIT業界ならではの特質で、ネット環境、通信手段が多様化、高度化した現代だからこそ、できる取り組みだ。また、どうしても退職をしなくてはならないような場合も、「再就職オプション」を設け、優秀なリーダーが流出しないようにする措置を設ける。そして、「リーダー」だけでなく、各部署で高い専門能力を活かしてもらう「フェロー」というポジションも用意する考えだ。

このように、リーダー候補となる人材に対しては、女性特有の問題への対応を事前に検討(加味)し、20代前半から20代後半、30代、40代と自分自身のキャリアをトレースできるようなモデルを設計したのである。また、これらの問題には個人によって考え方や対応が違うので、個別対応で臨んでいくという。実際、育児休業なども1年以上欲しいという人もいれば、半年で十分という人もいる。こうした個別的な対応を丁寧に取り組んでいくことにより、「女性リーダー」となる人材の育成と確保、定着につなげていきたいとしている。何より、「女性リーダー」のロールモデルが増えていくことで、若い女性社員のやる気とチャレンジが促され、人材の底上げが図られていく。

*               *

日本企業は、欧米企業などと比べると、女性活用はまだまだ過渡期の状況にある。だからこそ、早期に対応することと中長期に対応していくことを、並行して進めることが大切である。中長期に描くあるべき姿に向かって、今々やるべきことの結果を日々チェックする、という作業を地道に続けていく。そして、一定期間(3ヵ月or半年)の後、それを相互にフィードバックし、修正をかけるというPDCAを回していくのだ。そして、このことが本人と上司が当たり前にできるようになった時に、初めて「女性だから」といった「男女差」をめぐる議論はなくなり、「個人差」に着目した人事マネジメントが実現できたことになるのではないか。言うまでもなく、これはダイバーシティ・マネジメントの基本となる考え方であり、いま、「女性活用」と共に企業の大きな課題となっている「外国人活用」についても、必ずや良い影響を与えるはずである。

解説:福田敦之(HRMプランナー/株式会社アール・ティー・エフ代表取締役)


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