人事マネジメント「解体新書」

新・女性活用時代
―― いま改めて注目される「女性活躍推進」について考える【後編】 (2/3ページ)

2014/4/14
事例紹介I : 「ポジティブアクション」の活用
◆「ポジティブアクション」のアドバンテージ下で取り組む

女性活用がうまくできていない企業、組織としての合意形成が十分にできていない企業が、一部の進んだ企業の取り組みをそのまま導入しようとしても、うまくいくとは限らない。そもそも女性活用とは、経営から現場に至るバリューチェーンのプロセスの結果としての「組織風土」であるからだ。これを根付かせるためには、例えば「ポジティブアクション」(男女格差の解消・是正)という旗を掲げ、女性を有利に扱う取り組み(あるいは男女両方を対象とする取り組み)を行うことだ。そのアプローチの中で、自社の現状に効果をもたらすと思われる施策にスポットを当て、女性を活用していこうという意欲と対策を目に見える形で示すことが、結果的にうまくいくことが多い。

◆A社(大手金融サービス):女性社員の「能力・キャリア開発の支援」「仕事と家庭の両立」に特化した施策

A社は金融サービスという業態もあって、女性社員の割合が4割近くを占めている。女性がさまざまな分野で活躍するのを支援することが、自社の発展につながると考えていた。しかし、社内制度として男女差別的な取り扱いはないのに、なかなか女性管理職が増えない、女性の職域が広がらない、そのために女性の能力が十分に活かされていない、といった実態があった。そこで、「ポジティブアクション」を導入することにより、女性のモチベーションを向上させ、男女均等な取り扱いの実現を目指していくことにした。経営・人事・現場が「女性が働きやすい職場とは何か」について議論を積み重ねた結果、「能力開発・キャリア形成の支援」「仕事と家庭の両立支援」の2点に特化して行うことを決めた。

【能力開発・キャリア形成の支援】
まず、女性社員を積極的に管理職へ登用することを目的に、支店長クラスをはじめ、それに続く管理職へ積極的に登用することを決めた。併せて、コース転換試験の導入も行った。これは、入社後の就業意識や価値観、家庭環境の変化など、女性社員の状況に応じた能力開発を行い、キャリア形成を支援していくもので、入社後2年目から試験を受験できるようにした。結果として、これらの制度を利用して、同社では多くの女性社員がキャリアアップ(チェンジ)を実現し、第一線で活躍するようになった。現在200ほどある支店のうち、女性店長は5%を占めている。これを受けてA社では、今後3年間で店長の割合を10%以上にしていくと明確な数値目標を打ち出している。

【仕事と家庭の両立支援】
女性社員がキャリアアップを図っていくには、仕事と家庭の両立支援が欠かせない。出産・育児による負担から、会社を辞めなくて済むような体制を取る必要がある。その中でも、育児に対する支援がポイントとなると考えた。具体的に見ていくと、「育児休業制度」については、法定を上回る子どもが2歳に達するまで育児休業が取得できるようにした。「短時間勤務制度」でも、法定以上の対応を行い、小学校入学まで1日3時間を限度に、勤務時間を短縮できるようにした。さらに「ジョブ・リターン制度」を導入し、結婚・出産や転職などの理由により過去10年以内に退職した社員を、一定の基準の基に再雇用することにした。これらの制度を利用して、出産・育児後に職場に復帰して、それまで培ったノウハウや経験を再度活かし、活躍する女性社員が増えていったという。業務を深く理解している人に復帰してもらうのは即戦力となり、会社としても非常にありがたいことである。

女性社員のための制度を円滑に運用していくには、上司である管理職の理解と支援が欠かせない。管理職研修の中で対話(傾聴・共感)のためのコーチングスキルの習得を行うと同時に、毎月1回の定期面談を実施し、女性社員の意見や要望を聞く機会を意識的に設けるようにした。育児をしながら働く女性を理解・支援し、能力のある女性のキャリアアップのために本人の背中を押してあげることは、とても重要だからだ。また、このような会社側の女性活用への姿勢を示すことにより、女性社員のモチベーションも向上していき、以前よりも大きな成果を出せるようになった。さらに、女性社員の活躍が周囲の男性社員への刺激ともなり、組織全体としての業績も向上していったという。

◆B社(中堅建設):男性中心だった職域に、女性を意識的に登用

B社は、男性社会のイメージが強い建設業界において、女性を活用していくことで業界や企業イメージの払拭を考えた。そこで3年前から、「ポジティブアクション」の取り組みを開始し、女性社員の活躍を推進している。まず会社の方針として、「(男性中心だった)職場風土の改善」「女性の採用拡大」「女性の職域拡大」「女性の継続就業支援」を宣言し、これらを社内外に広く周知し、実態のある「ポジティブアクション」を推進することにより、女性が働きやすい職場環境づくりに取り組んでいる。

【女性の採用拡大】
例えば、「女性の採用拡大」では、学生向けの就職情報サイトに女性社員が生き生きと活躍する記事を掲載した。女子学生が具体的に建設会社の仕事内容をイメージ、理解して、応募につながるアプローチを、会社説明会や業界セミナーなどと連動し、継続的に行っている。その結果、近年では「女性にとって働きやすい環境がある」「女性がやりがいをもって、活躍できる仕事がある」という印象をもたれるようになってきた。応募者数も増加し、「現場で働きたい」と建設業界を第一志望にしてくる女子学生も増えてきたという。女性の活用を“見える化”する効果は、予想以上の手応えだった。今後も、より詳細な女性活用の実態・データを公開していく予定だ。

【女性の職域拡大】
「女性の職域拡大」については、従来の慣例を打破し、今まで女性社員のいなかった営業や設計などの主要部署に女性の登用を始めた。とはいえ当初は、経験のない女性を活用することに、「女性で本当に大丈夫なのか?」と現場では不安視する声が聞かれた。しかし、実際に抜擢してみると、予想以上に評価が高かった。例えば営業では、男性の営業担当とは違って、女性は技術的な知識にあまり頼らず、それよりも顧客と同じ目線で物事を考える対応(態度)が好評とのことである。事実、営業は施主の奥さま方と話す機会が多く、その際には女性同士の方が話は弾むという。

女性活用をスムーズに進めていくために、女性を初めて採用する部門では、周囲から孤立しないよう、女性社員を複数配置する対応を取っている。女性社員からも、「近くに仲間がいるから同じ立場で話し合ったり、悩みを相談しやすい」と評判がいい。このような取り組みを続けた結果、応募者が増加し、人材の定着も良くなっていった。まさに「ポジティブアクション」による取り組みが、人を大切にする会社というイメージを醸成していったのだ。さらには副次的な効果として、男女を問わず目標に向かって、お互いが切磋琢磨する職場風土が形成されていったという。



  • このエントリーをはてなブックマークに追加

人事マネジメント解体新書 最新記事

関連する記事

HR業界団体情報

HR業界の代表的な業界団体をご紹介いたします。
一般社団法人日本テレワーク協会
テレワークを通じ、調和のとれた日本社会の持続的な発展に寄与する。

一般社団法人 日本エンジニアリングアウトソーシング協会
社会的責任を果たすための厳しい基準をクリアした技術系アウトソーシ...

ATDインターナショナルメンバーネットワークジャパン
米国ATDの活動に賛同しているパートナー。2007年設立。日本において...

公益社団法人 全国求人情報協会
求人情報媒体が読者の職業の選択と安定した職業生活に役立つことなど...

一般社団法人 日本人材紹介事業協会
厚生労働大臣の許可を受けてホワイトカラーを中心とした職業紹介を行...

一般社団法人 日本人材派遣協会
労働者派遣法の趣旨に則り、労働者派遣事業の適正な運営を図るため...

日本人材マネジメント協会
「日本におけるHRMプロフェッショナリズムの確立」を使命に、我が...

一般社団法人 日本生産技能労務協会
製造業などにおける労働者の就業の安定労務管理の安全を図り...

HR業界団体情報一覧

主催イベント

講演&交流会レポート

新年会~講演&交流会~

人事サービス業(人材サービス、研修・教育、人事BPOサービスなど)に携わる皆さまを対象とした「新年会~講演&交流会~」を2月2日に開催致しました。


『日本の人事部』情報掲載サービス
HRカンファレンス出展のご案内
HRリーグ