HR業界TOPインタビュー「人・組織」ビジネスを牽引する希代の経営者

株式会社ワークスアプリケーションズ代表取締役最高経営責任者

牧野 正幸さん

ITは人と組織を支えるツールにすぎない
だからこそ、日本には日本のERPパッケージを

(2013/2/18掲載)

イノベーションは創りあげることではない、あらゆる障害を取り除くこと

―― シェアNO.1という実績が示すとおり、御社の製品とサービスは日本のERP・人事システム業界にイノベーションを起こしました。その成功要因について、牧野さんはどうとらえておられますか。

株式会社ワークスアプリケーションズ代表取締役最高経営責任者 牧野 正幸さんPhoto

昨今の風潮として、イノベーションというと、大半の人が、何か画期的な発明をすることばかり思い描いているのではないでしょうか。今までにない斬新な理論を思いつくとか、それによってイノベーションを起こすのがクリエイティビティそのものだとか。でも、そういうものは世の中にほとんどない。結局、イノベーションというのは小さな問題解決の繰り返し、積み重ねのプロセスでしかないのです。小さな問題の解決でも、それを前例に従わないでやろうと思ったら、失敗率は当然跳ね上がります。失敗したら、自分も面倒だし、周囲の評価も悪くなる。それなら何もしないで、前回と同じことを同じ量だけこなしていたほうがいい、定昇もベアもあって、自動的に給料は上がるのだから……と、そういう選択をする人が多くなったのは確かでしょう。

イノベーションは、きれいごとではありません。間違ったら責任をとらなければならないし、しかも小さなことの繰り返しですから。そしてイノベーションは、思いつきでもありません。他に思いついている人がいないのかといえば、たいていいっぱいいるのです。いるけれど、実際にやろうとしたら障害も摩擦もリスクもある。だからやめておこうと。こうして結局、イノベーションは止まってしまうのです。

でも、リスクを覚悟でやらなければ自分の成長につながらないし、企業も組織も古い慣習にとらわれて世の中とずれてくる。だから日々小さな問題を解決して、少しずつでもイノベーションを繰り返していかないと。どんな組織にも問題は山ほどありますから。それに気づかないというのはありえない。見過ごそうとしているだけですよ。目をつぶらないと面倒だから。

―― 牧野さんはかつて、国内企業向けパッケージソフトの開発を「絶対にやらなくてはいけないのに、誰も手をつけない問題」と捉えて事業に着手されました。そうした社会的価値の高いビジネス課題はまだありますか。

山ほどあります。人材ということでいえば、いつかは絶対にやらなければならないことの一つに人材の流動化の問題があります。日本の労働市場では、優秀な人、能力がある人はあまり流動化していません。日本の優秀な人材は大企業に集まりますが、活用しきれているかというと、そうではないケースが多々あるように見受けられます。一方で本人も、終身雇用で給料は自動的に上がるから、やりたいことができなくても、その会社にいられればいいかとなってしまう。そしてその流れにさえ乗れない人たちが、転職を重ねていくのです。

―― そこに問題があるということは、人材ビジネスの観点からすると、逆にチャンスもそこにあると考えるべきでは。

そのとおりです。何が障害になっていて、優秀な人材の流動化が進まないのか。その障害を見て見ぬふりをするのではなくて、直視して全部とりのぞけば、問題は絶対に解決するはず。障害を取り除くのが、つまるところプロの仕事なのです。イノベーションを起こすアイデアを出す人が偉いわけでも何でもない。イノベーションを起こす上で出てくる障害を一つひとつ取り除いていけるのが本当のプロだと思います。ルネサンスの天才彫刻家ミケランジェロはこう言ったそうです。「自分は岩の塊を見たら、そこに人間のかたちが見える。その人間のかたちの外にある邪魔な岩を取り除いたら、人間の像になるのだ」と。まさにそういう発想だと思います。創り上げるのではなく、邪魔なものを取り除けばいいのです。

われわれの仕事も同じでした。ノーカスタマイズで導入できるERPパッケージなんて、できるわけがないと言われました。でも、それを実現する方法は、実はたくさんあるのです。ただ全部に障害がつきまとうから、できっこないといわれただけ。問題解決を繰り返しながら、それを一つずつ取り除いていって、われわれは成功にたどりつくことができました。画期的な方法論でも何でもないのです。いまどき、みんなが「へぇー!」と驚いて感心するようなすごいアイデアが、仮にあったとしても、あっという間に真似されてレッドオーシャンになってしまうでしょうね。

―― では最後に、牧野さんから人事サービス・人材ビジネス業界で働く方々へ、メッセージをお願いします。

厳しい言い方もしれませんが、「右にならえ」で同じような会社を立ち上げるパターンが多いような気がします。顧客に対するメリットが少し多い、たとえば価格が少し安いというだけで、ある会社からスピンアウトして、同じような事業を立ち上げたらどうなるか。きっと、そこの社員がまたスピンアウトしますよ。業界は限りなく小さな会社の集団になっていく。かつてIT業界もそうでしたから。なぜそうなるかというと、ある会社にいた人間が「これなら自分もできる」と思って、安易にスピンアウトするから。するとそれを見ていた社員も当然、「自分にもできる」と思ってまたスピンアウトするでしょう。人材サービス業界にも、そういう傾向があるように見えますね。

だから今後新しいビジネスを考えるのであれば、何度も言うように、絶対に解決しなければならないのに、まだ誰も手をつけようとしない問題に取り組むべきだと思います。既存の会社の成功に倣って、単に同じような会社をつくり、同じような事業を焼き直しするだけでは、最初は利益が上がるかもしれないけれど、何の社会貢献にもなりません。ビジネスを創ることは、やはり社会貢献につながらなければダメなのです。

株式会社ワークスアプリケーションズ代表取締役最高経営責任者 牧野 正幸さんPhoto
(2013年1月18日 東京・港区・ワークスアプリケーションズ本社にて)
■企業データ
社名 株式会社ワークスアプリケーションズ
本社所在地 〒107-6019 東京都港区赤坂1-12-32 アーク森ビル19階
事業内容 大手企業向けERPパッケージシステム「COMPANY」の開発・販売・サポート
設立 1996年7月


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