HR業界TOPインタビュー「人・組織」ビジネスを牽引する希代の経営者

株式会社ワークスアプリケーションズ代表取締役最高経営責任者

牧野 正幸さん

ITは人と組織を支えるツールにすぎない
だからこそ、日本には日本のERPパッケージを

(2013/2/18掲載)

起業は想定外、誰もやらないから自分がやるしかなかった

―― 海外のERPパッケージを持ってくるのではなく、“純国産”にこだわった理由はなんですか。

私も起業する前は、海外のソフトウエアを導入して、それに日本企業が合わせればいいと思っていました。ところが調べてみると、日本の企業文化や商習慣の異質性は予想以上でした。要因は戦後の急速な高度成長と、それを支えた国民の平均的な教育水準の高さ。日本に比べると海外は、レベルの高い人とそうでない人の差が激しいでしょう。たとえばアメリカにも英語が不得意な人はいっぱいいて、システムはそういう人でも簡単に扱えるものでなければならないという前提で発展してきました。極端な話、データ入力の誤りで社員一人の月給が「10兆円」となっていても、不思議に思わず、そのまま入力してしまうようなスタッフもいます。それを後でマネジャーがチェックして初めて、おかしいとなるのが海外のマネジメントなのです。日本では、大手企業が採用するような人材なら、入ったばかりの新人でもみんなそれなりに優れた判断力をもっていて、現場が自主的にチェックするのが普通でしょう。だからそうした現場の判断を活かせるように、きちんとフィードバックを返してリアルタイムに業務を回していける構造のシステムでないともったいないわけですよ。

株式会社ワークスアプリケーションズ代表取締役最高経営責任者 牧野 正幸さんPhoto

製造業でも日本企業がクオリティーの高いものをつくれるのは、現場の人材一人ひとりのクオリティーが高いから。海外の現場では、たとえば製品のねじがゆるんでいても、マニュアルにねじを「三回まわせ」と書いてあるから三回まわした、問題ないだろうという話になりがちですが、日本なら、たとえ三回と書いてあっても、現場がこのねじは四回まわすべきだと判断します。

そうした人材を管理するのに、その能力や働き方に合ったシステムを入れなくてどうするのか。そこで働くのは日本人でなくてもいいということになってしまうでしょう。もったいないですよ。そこが日本の競争力の源泉なのだから。海外のものが使えないなら、日本仕様のツールを作ればいい。こうして私の頭の中に「日本の商習慣やビジネス文化を網羅した国内大手企業向けの高機能ERPパッケージの製品化」という事業構想がふくらんでいきました。

―― しかし最初は、起業までするつもりではなかったそうですね。

ええ。もちろん最初は当時所属していた会社に提案しました。しかし「技術的にも資金的にもできるはずがない」という反応が圧倒的でした。他社にも協力を求めましたが、結果は変わりません。誰もやらないなら、自分でやるしかない。そう思って、起業に踏み切ったのです。

よく「お金もうけがしたい」とか「組織に縛られず自由に働きたい」という理由で起業を志す人がいますが、確率論でいえば、起業したほうがもうかるとは絶対に思えないし、自由度の点でも、良い企業にいて良い上司に恵まれているときほど自由な環境はありません。私自身もコンサルタント時代の待遇には満足していたので、正直なところ、起業は考えていませんでしたね。ただ、日本の未来のために絶対にやらなくてはいけないのに、誰もやらない問題がそこにあった。もし自分が見て見ぬふりをするなら、それは人生を放棄したも同然だと思ったのです。

―― そして1996年にワークスアプリケーションズを設立、17年間で急成長を遂げてこられました。振り返って、ターニングポイントはどのあたりにあったと思われますか。

やはり大きいのは、2000年頃を境にして日本にも、欧米にITがツールとして普及していったときと同じような厳しいビジネス環境が現れてきたことでしょう。グローバル競争において、これはちょっとまずいなという雰囲気になってきましたからね。それまでの日本企業はコストに余力があった。誰だって余力があれば、服でも何でもオーダーメードで作ろうとしますよ。でもこの頃から、全体的にコスト削減が叫ばれるようになり、とうとう日本の大手企業が初めて人のリストラに手をつけるところまで追い込まれました。日本企業が一番守りたかった人件費にまで踏み込んだ――このことが、最も大きな転換点といえるかもしれません。

当然ですが、人件費を削るくらいなら、システムコストを削ったほうがいいわけですよ。余力もないのに、オーダーメードにこだわっている場合ではないでしょう。同時に、経営陣はもちろん人事・財務畑のリーダーにもシステムへの理解が深まり、ようやくIT投資に対する企業のコスト意識が高まってきたことも弊社にとっては追い風となりました。

現在、上場企業の約3分の1、およそ1000社が当社のシステムを使って人事業務を行っています。われわれのERPパッケージは“ノーカスタマイズ”。つまりさまざまな業種・企業の商習慣や、あらゆる社会情勢、トレンドの変化をあらかじめ網羅したうえですべての機能を取りこみ、開発されているため、業務適合率が高く、お客様ごとにカスタマイズする必要がありません。コストを抑え、タイムリーかつスピーディな導入・運用が可能です。

もちろん初期開発には大変な労力がかかりましたが、現在では多くの企業が「COMPANY®」という同一のシステムを使えるほど、膨大な機能を実装するまでに成長しました。また、どのお客様でも一切カスタマイズをしていないため、法改正や環境の変化に応じた対応も個社ごとに作りこむ必要がなく、画一的なバージョンアップを無償で全ユーザーに提供できるのです。つまりお客様は最新のシステムを追加コストなく永続的に使い続けられる。このビジネスモデルはそれまでの日本企業における基幹業務システムの概念を根本から覆し、弊社の急激な成長を勢いづける最大の要因となりました。


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