組織につながりを創造する「コーチング3.0」
主観と客観のバランスを取りながら、
大胆な施策を提供する

株式会社 コーチ・エィ 代表取締役社長

鈴木 義幸さん

イノベーションを生み出す組織に変容するための“つながり”

鈴木さんは貴社をどのような思いで経営し、事業を展開されていますか。

以前我々が提供していた企業研修を「コーチング1.0」とし、エグゼクティブ・コーチングを「コーチング2.0」とすると、今は「コーチング3.0」にシフトしていると考えています。つまり、組織開発に向けたコーチングを実施し、組織のビジョンを実現するために社内の関係性を開発し、“つながり”を作る支援をしたい。

日本にはイノベーションが必要と言われて久しいですが、私はイノベーションには、「縦のイノベーション」と「横のイノベーション」があると思っています。縦のイノベーションとは、もともとある製品やサービスの品質を高めること。これは以前から日本企業が得意としてきたことではないでしょうか。

一方、横のイノベーションは、異なる部署や企業といった横のつながりから生まれてくるものです。かつてない新しい製品やサービスが生み出されることが期待されますが、トップダウンで横のイノベーションを起こすことは難しく、日本企業が苦手とする領域です。

最近、企業から「イノベーションを生み出すために、もっと横のつながりを作りたい」という相談が増えています。こうした要望に応えるためには、新しいつながりをデザインし、組織開発を進める必要があると私は考えています。そのためにコーチングが役立つ場面は少なくないでしょう。

たとえば上司と部下の関係が希薄化しているのであれば、つながりを強化してエンゲージメントを生み出す。あるいは部署を越えた横のつながりを増やして、創造性や生産性を高める。こうしたことがコーチングによって可能になります。

貴社のコーチングの特長を教えてください。

鈴木 義幸さん(株式会社 コーチ・エィ 代表取締役社長)

スポーツ選手を対象にしたコーチングをイメージするとわかりやすいと思いますが、アメリカ型のコーチングは、目の前の個人を強くするという特長をもっています。

しかし私たちは、リーダーだけでなく、リーダーを起点にした関係性にもフォーカスしたい。目の前の経営者が実現したいビジョンに寄り添いながら、「そのビジョンを誰と達成するのか」「そのためには組織がどのような関係性になればいいのか」「誰の能力を高めなくてはならないのか」といった問いかけを行っています。

たとえば、組織のリーダーをコーチとして育てる場合、あえて別の事業部や別の国の方を最低5人選び、横のつながりを作ります。これはコーチングにより相手の成功をサポートし、横のつながりを強くすることが狙いです。横のつながりが強まると、自分の仕事に役立つ情報が入りやすくなりますから、クロスボーダー型の業務変革や、新しいものを生み出そうというムーブメントが起きやすくなることが期待できます。

私たちはこうしたコーチングを「システミック・コーチング」と呼んでいますが、リーダーの行動変化を通じて、ステークホルダーや組織に変化を促し、最終的にはKPIなどへのビジネスインパクトを起こすことを目指しています。

現在の日本企業の「人・組織」「人事」に関する課題をどのように捉えていますか。

日本の企業組織では、「間に挟まる」という問題が多く起きていますよね。たとえ経営トップになったとしても、上に会長やOB・OG、あるいは年上の役員がいれば、なかなか自由に動くことができません。

特に中間管理職は、昨今の働き方改革推進の動きもあり、下に任せることが難しくなっているので、大変な状況です。上からは高いゴールを設定されているのに、下からの協力を得にくいわけですから。結果として一人で仕事を抱え込んでしまう。

この問題を解決するには、誰かに働きかける態度を身につけるしかありません。上司に「ここまでは待ってほしい」、部下に「短い時間だけど、ここまではやってほしい」といった表現をすることがとても大事です。

また、ジェネレーションギャップやダイバーシティの問題も顕在化しています。組織の中に外国人や女性が増え、Y世代、Z世代といった若い人たちとも意思疎通をして協力関係を築かなくてはなりません。「俺の時代はこうだった」ではもう通用しないのです。そういう意味でも、組織の関係性づくりは日本企業にとって重要な課題と言えるでしょう。

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