組織につながりを創造する「コーチング3.0」
主観と客観のバランスを取りながら、
大胆な施策を提供する

株式会社 コーチ・エィ 代表取締役社長

鈴木 義幸さん

“顧客ゼロ”からコーチングを日本に広める

コーチ・エィの前身となるコーチ・トゥエンティワンの創業に至る経緯を教えてください。

大学院で修士課程を修了し、帰国した1996年に、コーチ・トゥエンティワンの創業者である伊藤と出会いました。彼は『Newsweek』の英語版の特集から「コーチング」のことを知り、私に「コーチングを日本で一緒にやろう」と声をかけてくれたんです。

伊藤は、当時アメリカで最も大きなコーチング会社だったコーチ・ユー(2019年10月にコーチ・エィが買収)の創設者である故トーマス・レナード氏にコンタクトを取り、日本にコーチ・ユーのメンバーを派遣してもらうことにしました。その後、私たちは彼からコーチングを直接学ぶとともに、2000ページほどの英文のマニュアルを翻訳して、コーチングを日本で学ぶシステムを作りました。これが1997年にコーチ・トゥエンティワンを設立するまでの経緯です。

私がコーチングにひかれたのは、人の自発性や主体性に直接働きかけられるからです。目標に対して指示するのではなく、問いかけによってお客さま自らが探索して答えを見出すサポートをする。ティーチングと異なるコーチングという概念自体がとても新鮮で、事業として手がけるのは面白いと感じました。

日本でビジネスをはじめたとき、手応えや苦労はありましたか。

法人向けのコーチングは1999年ごろから始めたのですが、当時はまだ日本で知られていなかったので、顧客ゼロからスタートしました。まずは会社四季報を見ながら、一日100本の営業電話をかけることを目標にしたんです。1本もアポが取れない日もありましたが、まったく苦労だとは思いませんでしたね。コーチングはいいものだと確信していましたし、なんとか日本の企業に導入してもらいたい一心でした。

トライアンドエラーを繰り返しながらサービスやビジネスをブラッシュアップした結果、少しずつお客さまが増えていきました。とくにエポックメイキングだったのは、2002年から日産自動車で2400人の管理職全員が二日間のコーチングを受けてくれたことです。しかも、満足度のアンケートでは5点満点の平均で4.8以上という高評価をいただきました。このことが口コミで広がり、飛躍的に事業が成長しました。

2001年にコーチ・トゥエンティワンの法人事業部が分社化され、コーチ・エィが設立されました。その後の歩みを教えてください。

分社化を行ったのは、コーチ・トゥエンティワンがコーチングのメソッドを教える会社、コーチ・エィはエグゼクティブに向けて直接コーチングを手がける会社、という役割を明確に設定するためです。

コーチ・エィでは、2002年ごろから管理職向けの企業研修のお客さまがどんどん増えていきました。ありがたいことではありましたが、一方で企業研修の限界を感じたことも事実です。企業研修だけでは、お客さまの成長に継続的に関わることができないので、組織文化を変容させることが難しいからです。

そうしたジレンマを感じて、2009年から社内で議論を進めた結果、「企業研修をやめる」ことを決断しました。当時は収益の半分が企業研修で占められていましたが、企業を本当に変革するサービスを提供したいとの思いから、リスクを承知で踏み切りました。

その後、2011年にコーチ・トゥエンティワンとコーチ・エィが合併し、サービスを集約して今に至っています。現在、コーチ・エィでは「エグゼクティブ・コーチング」に加え、組織開発を実現するリーダー開発をサポートする「DCD(Driving Corporate Dynamism)」、組織の変化を可視化する「アセスメント」という3本をサービスの柱にしています。

コーチ・エィのサービスの3本柱(同社Webサイトより)

コーチ・エィのサービスの3本柱(同社Webサイトより)

強みは100人を超えるプロフェッショナルのコーチが在籍する世界最大規模のコーチング・ファームであることや、世界33ヵ国にサービスを提供していること(2019年7月現在)、専門リサーチャーが専従するコーチング研究所を抱えて成果を客観的に把握できること、ITプラットフォームやツールを自社開発していることなどが挙げられます。

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