育成の成果にこだわり、研修効果を“見える化”
人のあらゆる可能性を切り拓く、
新時代に求められる教育のカタチ

アルー株式会社 代表取締役社長

落合 文四郎さん

「教育成果の見える化」を業界のスタンダードに

落合社長は、「企業の人材育成」あるいは「人材教育・研修業界」が抱える課題についてどう捉えていらっしゃいますか。

問題点の一つに「教育・研修効果の可視化を怠ってきたこと」が挙げられるのではないかと考えています。

あるシンクタンクの調査によると、人材育成のマーケットは5000億円規模。実は、この数字はここ十数年変わっていません。急激に下がることもなければ、上がることもない。新入社員教育をはじめ、企業はある程度研修に投資しているものの、プラスアルファの取り組みを行っていない状況を示唆しているのではないでしょうか。

一方、企業が採用にかける投資は年々拡大しています。市場規模も、人材育成のマーケットをはるかにしのぐものです。同じ「人材」にかかわることでも、採用と教育では、経営者の投資意欲が全く違います。教育に投資することで人材の戦力化や組織の生産性向上はもちろん、リテンション効果で採用費用の減少につながるにもかかわらず、市場規模は変わっていないのです。

経営者が、人材育成にかける費用を変えない理由。それは、ひとえに「研修や教育の効果がわかりにくい」からではないでしょうか。採用活動は、何人応募があり、何人入社したのか、成果が明確です。しかし教育は、たとえ2倍の費用をかけたとしても、2倍の効果が得られるかどうかは不透明です。成果がわからないものに投資はできません。

当社がこだわっているのは、育成の成果にコミットすること。そして教育や研修の効果を「見える化」することです。確かに人材育成は、広告効果のように単純に数値化できるものばかりではありません。しかし、その状況に甘えずに、何とか可視化できないだろうかと努力を重ねることが大切だと考えています。当社ではテストを導入し数値化を試みたり、研修前と研修後で社員の行動がどう変化したのかを調査したりして、目的にあわせた振り返りを詳細に行っています。

育成の成果を可視化することで目指す施策の全体像が見えてくる受講生の「行動変容に向けた成長」のプロセス

育成の成果を可視化することで目指す施策の全体像が見えてくる受講生の「行動変容に向けた成長」のプロセス

育成の成果にコミットすること、研修効果を見える化することが、アルーの特徴であり、競合優位性にもなっているわけですね。

そうですね。ただ、私は「教育成果の見える化」を当社の優位性にしたいとは思っていません。むしろ、業界のスタンダードにしていきたい。どの人材育成・研修会社に依頼をしても「教育の効果が見える」という状態をつくりたいんです。そうすれば、企業の経営者の意識も変わってくるでしょうし、研修をオーダーする人事担当者の関わり方にも変化が起きるのではないかと感じています。

現状では、人材育成の依頼をいただく際に、「ロジカルシンキングの研修をやりたいのですが……」と研修ありきでお声がけいただくケースが多いんですね。もしも、そのまま研修をスタートした場合、「育成の成果をどこに設定するのか」が曖昧です。「教育の効果が見える」という状態が業界のスタンダードになれば、人事担当者からの声がけも「職場の生産性を高めるために、今現場で〇〇の行動をしている人が、□□の行動をとれるようにしたい。良いソリューションはない?」というふうに視点が変わってくるはずです。より現場の実態に即したプログラムを組めるようになり、さらに成果につながりやすくなる。そんな好循環が生まれるのではないかと思っています。

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