「世界中の人々を魅了する会社を創る」を掲げ
日本全体の「人材の流動化」と
「組織変革の支援」を担う

株式会社アトラエ 代表取締役CEO

新居 佳英さん

日本経済の立て直しには、「人材の流動化」と「企業の組織改革」が急務

新居社長は、現代における日本の「働く人や組織」の課題を、どのように捉えていらっしゃいますか。

本当に課題は山積みですよね。まず、日本は先進国の中でも極めて「労働意欲が低い」という問題があります。世論調査などを手がける米ギャラップ社が全世界1300万人のビジネスパーソンを対象に実施した「従業員のエンゲージメント調査(2017年発表)」によると、日本では「熱意あふれる社員」の割合がたった6%。調査した139ヵ国中132位という驚くべき結果です。経済的に豊かで、教育水準も高く、誰もが安心して生きていける治安の良い国であるにもかかわらず、おかしな話ですよね。

「失われた30年」と言われるように、日本のGDPは、ここ30年間ほとんど伸びていません。IT産業で圧倒的な強さを誇るアメリカと、モノづくり大国として世界No.1になろうとしている中国に挟まれ、日本経済は危機的状況です。超少子高齢社会を前に、「働く意欲が低い」なんて言っている場合ではないはず。これまでの日本の働き方や組織モデルでは、世界に太刀打ちできなくなっていることは明白です。日本の会社組織のあり方にもイノベーションが求められていると感じています。

この現状を好転させるためには、どうすればいいのでしょうか。

「人材の流動化」と「適切な人員配置」が急務です。日本という国全体をひとつの会社だと捉え、もしも自分が「株式会社日本」の戦略人事を任されたとしたら、どのポジションにどんな人材を置くのか、という観点は非常に重要ですよね。しかし、日本の就職ランキングなどを見ると、優秀な学生が安定を求め、誰もが知る大企業にこぞって入社しようとしています。人材の流動化を促進し、日本全体における人材(労働力や専門性)の適材適所を実現することが必要でしょう。それが人材ビジネス業界の役割でもあるし、『Green』が担うミッションでもあると考えています。

「人材の流動化」が進めば、企業にとっては優秀な社員が離職してしまう危険性が高まります。社員に活躍しつづけてもらうための経営努力がより一層求められますね。

その通りです。人材の流動化が進めば、企業の経営者も危機意識を持つことになります。人を惹きつけるために、魅力的なビジョンやミッションを打ち立てなければならなくなるでしょうし、やりがいを感じられる仕事場をつくろうとか、働きやすい仕組みを考えようとするはずです。「人材の流動化」と「企業の経営努力」。このサイクルが、うまくまわるようになれば、日本の労働環境はもっと良くなります。

会社が社員を囲い込む時代は終わりました。それぞれの会社が「自分たちで成し遂げたい」と思うビジョンを掲げ、それに共感してくれた人々が集まって、志をひとつに事を成していくのが本来あるべき会社の姿です。また、アトラエとしても、日本の組織変革をサポートするべく、社員のエンゲージメントをはじめとした組織の現状を定量的に把握できる『wevox』というサービスを開発し、会社組織の定着率や生産性向上の支援に力を注いでいます。

組織の現状を定量的に把握できる『wevox』

▲組織の現状を定量的に把握できる『wevox』

社員の「エンゲージメント」を高めるために大切なことは何だと思われますか。

「エンゲージメント」とは、社員が自主的にその会社に貢献しようとする意欲のこと。よく「モチベーション」や「従業員満足」と同列に語られることがあるのですが、これらとは全く異なるものです。「モチベーション」や「従業員満足」が“個人的な気持ち”であるのに対して、「エンゲージメント」は“仕事や組織との関係性”に基づいています。

組織運営には、従業員一人ひとりの仕事との関わり方、ビジョンの捉え方、組織の仲間とのつながり度合いが重要ですから、やはり、濃密なコミュニケーション戦略が大切です。まずは、経営や事業に関する情報をオープンにする。経営層が何を考え、どんな未来図を描いているのかをしっかりと伝える。そのうえで、働く一人ひとりが「事業や組織に貢献できている」と感じられる職場づくりを推進していくことが大切です。

たとえば、Googleの組織で重視されている要素のひとつに「心理的安全性の担保」があります。心理的安全性とは、「この組織の中で、自分はどんな発言をしてもよい」と思える状態。たとえ間違っているアイデアだったとしても、発言自体をとがめられることはない。それはつまり「私は、この会社に存在する価値のある人間であり、会社をより良くしていくための権利と責任を持っている」と自覚できることだと思います。

アトラエでも同様です。そもそもアトラエでは、「心理的危険」な状態が一切ありません。内定者がいきなり全社チャットに「明日、組織勉強会を開催するので、興味があれば来てください」と流すこともありますし、若手社員が経営陣に「その感覚は違うと思います」と発言することも日常的にあります。アトラエでは、キャリアも職種も性別も関係なく、全員が会社を主体的に創っていく仲間なのです。

本日は、貴重なお話をありがとうございました。最後に、人材ビジネス業界で働く若い皆さんにメッセージをお願いします。

人生は一度きりです。しっかりと自分の人生を見つめて、やりたいことにはどんどんチャレンジしてほしいと思います。想像以上に、人生の選択肢は豊富にありますし、何歳からでも、いつからでも挑戦することはできます。

私は今44歳なのですが、同窓会などで旧友に会うと「仕事がつまらない」とか「転職したい」という話題になることがよくあります。そこで、「何か、好きなことをやってみたら?」と言うと、みんな決まって「この年齢からでは無理だよ」「子どももいるし、住宅ローンもあるし、危険な賭けはできない」と口をそろえるのです。

果たして本当にそうでしょうか。よく考えてみてください。「人生100年時代」に突入する現代において、40代なんてまだ折り返し前です。アメリカの起業家でいちばん多いのは40代とも言われています。やろうと思えば40代からでも遅いことはないし、方法はいくらだってあります。20代・30代ならなおさらですよね。「危険な賭けだ」と現状にとどまっていること自体が、実は危険なことかもしれません。

一度きりの人生、「つまらない」「楽しくない」と思って過ごすことほど、もったいないことはありません。ぜひ、自身がやりたいと思うこと、夢中になれることに怖がらずにチャレンジしてほしいと思います。

株式会社アトラエ 代表取締役CEO 新居佳英さん

(2018年10月30日 東京・港区のアトラエ本社にて)

社名株式会社アトラエ(英文社名 Atrae,Inc.)
本社所在地東京都港区三田1-10-4 麻布十番日新ビル2F
事業内容•成功報酬型求人メディア『Green』の企画・開発・運営
•完全審査制AIビジネスマッチングアプリ『yenta』の企画・開発・運営
•組織改善プラットフォーム『wevox』の企画・開発・運営
•新規事業の企画・開発
設立2003年10月24日

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「HRペディア「人事辞典」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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