ポジティブな言葉をたくさんかけて、
精一杯生きる姿を見せる
それが組織のモチベーションを高めるリーダーの役割

ANAビジネスソリューション株式会社 代表取締役社長

矢澤 潤子さん

ANAビジネスソリューション株式会社 代表取締役社長 矢澤 潤子さん

日本を代表する航空会社である全日本空輸株式会社(以下、ANA)。ANAを中心としたエアライングループとして、グループ全体で長年にわたり培ってきたハイクオリティーなサービスや人財育成ノウハウを生かして、付加価値の高い人材派遣、独自性豊かな研修事業など各種サービスを提供しているのがANAビジネスソリューション株式会社です。同社代表取締役社長の矢澤潤子さんは、ANAの客室乗務員としてキャリアをスタートさせ、国内線・国際線で数多くのフライトを経験しながら、同時に管理職としても部下のマネジメント、育成に幅広く携わってきました。まさにANAグループの伝統と現場の強みを最もよく知る一人と言えるかもしれません。そんな矢澤さんが2016年4月に現職に就任されるまでの歩みとそこで得たもの、ANAビジネスソリューションのトップとして取り組んできたこと、将来に向けてのチャレンジ、さらには日本企業や人材ビジネスの課題をどう捉えているのかなど、幅広いテーマでじっくり語っていただきました。

Profile

矢澤 潤子(やざわ・じゅんこ)/1987年、全日本空輸入社。客室乗務員として国内線・国際線のフライトなどを経験。チーフコーディネーター、スタッフアドバイザーなどを経て、2001年にインフライトマネージャー(管理職)に昇格し、客室乗務員のマネジメントを行う。2012年に客室訓練部長に就任し、ANAグループの客室乗務員の保安・サービス訓練の企画立案、実行管理の統括。2016年4月より現職。

「人によって育てられた」ことを実感した客室乗務員時代

ANAには、客室乗務員として入社されました。当時も今も人気の高い職種ですが、目指そうと思われたきっかけは何だったのでしょうか。

大学では日本史を専攻していて、ゼミの担当教授の奥さまが作家の永井路子先生でした。ご自宅にうかがって、直接永井先生から卒業論文へのアドバイスをいただいたこともありますが、自律した女性の先駆け的な存在でもありましたので、その影響を受けたかもしれません。卒業後は経済的に自立できる仕事に就きたい、また、デスクワークよりは体を動かす仕事で、自分の目でいろんな世界を見てみたい、と思うようになりました。その方向性に一致するのが、客室乗務員の仕事だったんです。

私が入社したのは1987年。そのころ航空業界を目指す人はJALとANA、両方受ける人が多かったのですが、社風としては、がむしゃらに頑張っている感じのANAのほうが私には合うように思いました。ANAがちょうど国際線に進出し始めた時期だったので、同期は客室乗務員だけで約360人と、当時としては大量採用でしたね。景気も良かったので、うまくその波に乗れたのだと思います。

入社してからはどのようにキャリアを積んでいかれたのでしょうか。

基礎トレーニングが終わって、最初は羽田空港を拠点とする国内線を担当しました。乗務を繰り返して経験を積み、専門知識を身につけていきました。チーフパーサーになるころには、あらゆる状況下で体が自然に反応するくらいまで、トレーニングを積んでいたと思います。同時に客室乗務員は、後輩ができたら、いろいろなことを教えながら育成することが日常的です。業務知識だけでなく社会人、組織人として一人前になれるように、先輩として指導します。そうした経験を積みながら、徐々にマネジメントにシフトしていくわけです。

10人前後の小集団をまとめるチームコーディネーターになったのは、入社5年目です。その後、少しずつ担当する人数が増えていきます。途中で2年間、地上職も経験しました。機内業務に関わる業務、サービスの企画、レポート分析、新入社員の育成マニュアルの作成、といった支援業務ですね。

管理職になったのは、2001年なので入社14年目です。その後、国際線を中心に関西や成田国際空港への異動、エアージャパン、エアーニッポンなどへの出向を経験しました。

客室乗務員の経験からどのようなものを得られましたか。

航空業界なので、モノを作る仕事をしていたわけでもなく、ずっと人との関係性の中で生きてきました。そのため私は、「人によって育てられてきた」ことを痛感しています。人と人の良い関係性の中で生まれる価値の大きさ、それを何よりも大切にしなければならない、と強く思っています。

もう一つは「品質をどう作るか」。品質は「商品・サービスのクオリティー」×「業務プロセスのクオリティー」×「人財のクオリティー」という掛け算で決まると言われています。この三つのクオリティーが高められた結果がお客さまの心を揺さぶり、感動につながります。私自身も、そういう経験を何度もしてきました。一方で、三つのクオリティーのうち一つでもゼロやマイナスになってしまうと、ほかの二つをどんなに高めても補えないことも知りました。たった一つのミスでも、お客さまの思い出をすべて台無しにしてしまうことがあります。どの業界にも言えることかもしれませんが、三つのクオリティーをバランスよく育てていくことが欠かせません。経営の仕事をする上でも、この考え方は常に意識しなければならないと思っています。

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