感性を研ぎ澄ませて時代の流れを読み、
あとは行動あるのみ――
「管理部門特化型」の人材紹介で市場を創造

株式会社MS-Japan 代表取締役社長

有本隆浩さん

「営業力は日本一」の自信を胸に20代で独立・起業

 リクルートではどのような営業をされていたのでしょうか。

私の営業スタイルは「社長にしかアポイントを取らない」というものでした。専務や人事部長が電話に出ても、「いや、社長にお時間をいただきたい」と突っぱねる。23歳の若僧がですよ。でも、社長と会えたら、もうわくわくする。自分も起業したい、経営者になりたいという思いがあるから、経営を学べる相手は社長だけだと思っていたんです。新卒採用の媒体であるリクルートブックを売る営業としては特殊だったかもしれませんが、それがほかの営業との違いになったんでしょうね。

社長に会ったら「この会社を将来どうしたいのか」というビジョンや夢を聞く。どんな経営者にも「未来はこうしたい」という思いがあるからけっこう話してくれます。私は経営に興味があるからさらに突っ込んで質問する。平均2時間以上はヒアリングしましたね。その上で大胆にプレゼンする。当時のリクルートブックの基本セットは170万円前後だったと思いますが、私の場合は1000万円以上のプレゼンでした。当然「そんな金はないよ」となりますよね。そこで、「さっき語ってくださった社長の夢を実現しましょう! 社員一人採用したら生涯賃金2億円以上です。夢を共有して、一緒に実現してくれる人材が採用できるのに1000万円ケチってどうするんですか。経営者なら今ここで決断してください!」と迫るわけです。これで大体ハンコを押してくれましたね。

ですから私の営業は「新規・即決・大型受注」が特徴。入社して2年目で新規受注件数、新規受注金額の記録も塗り替えました。当然、初日に勝負を挑んだ先輩にも勝ちましたよ。当時、営業力の高い会社として名を馳せていたリクルートで記録を塗り替えたわけですから、「自分の営業力は日本一」という自信はつきましたね。十分な手応えを感じた4年後、28歳のときに独立することになりました。

 20代での独立・起業。最初からビジネスモデルはイメージされていたのでしょうか。

それが何も決めてなかったんです。とにかく何でも売れる自信がありましたからね。まず会社を立ち上げて、一人でリクルートの代理店をやりながら、新人研修・管理者研修の講師、知り合いの会社の顧問などをやりました。そういう仕事で日々のキャッシュを稼ぎながら、自分が立ち上げるべき新規事業をじっくり考えました。

株式会社MS-Japan 代表取締役社長 有本 隆浩さん インタビュー photo

そんな時、「会計事務所が人材確保に苦労している」ことを知るんです。瞬時にこれはビジネスになりそうだとひらめきました。会計事務所は人材の流動性が高いのに、それを補うための採用手段は一般の求人誌や新聞くらいしかない。ごく一部の限られた人しか対象にならないのに、多額の予算を使って広く広告を出さないといけないのはとても無駄ですよね。そこで大手会計専門学校と提携し、会計事務所の人材採用の新規事業に乗り出したんです。

ほぼ同じ時期に、関西の繊維業界から、業界の雇用促進の推進役の話をもちかけられ、さまざまな企画を立案し、国からの助成金も絡めて、業界特化型の求人誌をつくることになりました。会計事務所も繊維業界もよく知らなかったのですが、「求人」は、リクルートブックを売っていたので得意分野。そんなわけで、起業して1年目で新規事業を二つ同時に立ち上げ、二本柱で回していくことになりました。

 まずはリクルート時代に得たノウハウを生かしたビジネスで成功されたわけですね。

そうですね。ただ、リクルート時代との違いは、自分一人ですべてやらなければいけないこと。立ち上げたばかりの会社で、まだスタッフはいませんでした。もちろん十分な運転資金もありません。そこで発想力、アイデアで「いかにマンパワーをかけずに、資金も借り入れないで事業を回すか」を工夫しましたね。

まず専門学校と交渉して、求人誌の発行元になってもらう。その求人誌を1ページ1万円で買い取って再販するというスキームをつくりました。これによって印刷や流通の経費を専門学校に持ってもらう。さらに、営業スタイルは、そのつど受注するのではなく「年間会員制」にしました。こうすれば年4回分をまとめて営業できますし、会費なら全額前倒しでもらうこともできるからです。ポイントはその際の「値づけ」。原価1万円の広告4回のセットを、ほかにいろいろと細かいサービスもつけましたが、初年度75万円、2年目からは100万円で営業しました。

原価に対して価格が高いと思われるかもしれませんね。でも、商品には売れる「価格帯」があるんです。それより高くても売れないし、安すぎても商品の価値を損ねてしまう。顧客が「買ってもいい」と思える範囲でいちばん高い値づけができれば利益率は最高になります。初年度の事業では当社の利益率は80%以上。それで90件以上受注し、会計事務所関連だけで1億円以上の売上を上げました。繊維事業も同じようなやり方で進めていたので、とにかく会社設立1年目からいきなり絶好調。ただ、直後に大きな時代の節目に直面することになるのですが……。

HRソリューション業界TOPインタビューのバックナンバー