データベースの名門をクラウドでNo.1企業に変革する
原点は「多様性」を目の当たりにした米国体験

日本オラクル株式会社 取締役 代表執行役社長兼CEO

杉原博茂さん

限りなく広がるHCM(ヒューマン・キャピタル・マネジメント)分野のマーケット

 クラウドで提供するサービスの中で、特に人材管理向けのクラウドに注力されているとお聞きしました。

「デジタル格差」の中で最も大きいのが、「人事における情報格差」かもしれません。近年、「VUCA(ブーカ)」の時代だとよく言われます。V=Volatility(変動)、U=Uncertainty(不確実性)、C=Complexity(複雑性)、A=Ambiguity(曖昧性)。つまり、確実な未来を予見できない時代ということですね。企業が時間をかけて人材を育成することが困難になり、必要なスキルやポテンシャルを持った人材をいかにすばやく見つけ出して、適材適所で配置するかがより重要になっています。

こうした「VUCAの時代」に求められている技術が「タレントマネジメント」でしょう。四国に優秀なSEがいる、アメリカのニューヨークに会計のスペシャリストがいる、そういったことが瞬時にわかる仕組みです。企業の役に立つだけでなく、情報格差によって埋もれている人材にチャンスを提供するツールにもなります。都市と地方、国内と海外の格差をも越えていきます。

こうした最先端の「HCM(ヒューマン・キャピタル・マネジメント)クラウド」こそ、クラウドで多くの企業に利用してほしいサービスの一つだと言えます。導入までのスピードは、新規にシステムを構築する場合の10分の1程度です。現在は企業内で人材情報をつなぐシステムですが、将来は企業や組織の垣根を越えるかもしれません。国や自治体の利用が広まれば、いずれは人材の流動化、つまりは転職支援などにも使えるようになるのではないでしょうか。オラクルはこうした変革も積極的に支援していきます。このHCMサービスのマーケットは限りなく大きいと考えています。

 人事や人材サービス業界に関わっている方々、その仕事に興味を持たれている若い人たちに向けて、メッセージをいただけますでしょうか。

“Do, Big, Different”。今までのルーティンの仕事から一歩を踏み出して「大きく違うことに挑戦しよう」という意味です。日本オラクルの社員にも言っています。ほとんどの経営者は人材で悩んでいるんです。それは私も同じ。だから、人材サービスは大きなチャンスがある仕事だと思います。タレントマネジメントシステムなどで情報へのアクセスが向上すれば解決できる問題も非常に多い。現在はさまざまなテクノロジーがあります。SNSなども含めて、もっと縦横無尽に使いこなしてほしいと思いますね。あとはすべてにおいて実行するか否かだけです。

アメリカ留学時代に歴史小説をたくさん読んだので、ついこういう発想をしてしまうのですが、さきほどの「VUCA」、戦国時代の武田信玄が唱えた「風林火山」にも通じるものがあるような気がしています。つまり、「風の如くすばやく動き、火の如く熱意をもって一気に攻める」ということと、「林の如く静かに状況を観察し、山の如くどっしりと構えて動かない」とは、まさしく「先を見通す目を持って、ここぞというところで一気にいけ」ということでしょう。不確実な時代に成功する、結果を残すにはそれしかない。昔の人が考えたことを今はテクノロジーで形にできる。これからもっとエキサイティングなことが起こる、楽しみな時代ですよ。

日本オラクル株式会社 取締役 代表執行役社長兼CEO 杉原博茂さん インタビュー photo

(2016年10月25日 東京・目黒区にて)

社名日本オラクル株式会社 (英文表記:Oracle Corporation Japan)
本社所在地東京都港区北青山2-5-8オラクル青山センター
事業内容企業の事業活動の基盤となるソフトウェア及びハードウェアの販売、これらをインターネットを経由して提供するクラウドサービス並びにこれらの利用を支援する各種サービスの提供
設立1985(昭和60)年10月15日

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「HRペディア「人事辞典」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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