データベースの名門をクラウドでNo.1企業に変革する
原点は「多様性」を目の当たりにした米国体験

日本オラクル株式会社 取締役 代表執行役社長兼CEO

杉原博茂さん

目指すのは「クラウドで世界ナンバーワン」の企業

日本オラクル株式会社 取締役 代表執行役社長兼CEO 杉原博茂さん インタビュー photo

 データベースのトップ企業であるオラクルがクラウドに舵を切ることにはどういう意味があるのでしょうか。

どんなトップ企業も常に変革を起こし、進化していかなければいけない。ラリー・エリソンは「世界ナンバーワンの自動車メーカーだったゼネラル・モーターズが破たんしたのは、変化をためらったからです」と言っていました。今では多くの企業がクラウドへのシフトを掲げていますが、本格的に言い出したのはオラクルが一番早かったはずです。2010年代初頭にはすでにその構想を持っていたようです。ただ、その当時はほとんどの役員、幹部がそんなことは必要ないと思っていた。データベースで高いシェアがあり、売上・利益ともに好調でしたから。しかし、その状況からチェンジしていこうという判断を下せるのが、やはり優れた経営者だと思います。オラクルが「クラウドでトップを目指す」と宣言したら、他社もものすごい勢いで言うようになりました。

今までは、お金のある企業が優れたシステムを自前で構築して、それによって生産性を高めて競争に打ち勝つモデルが主流でした。しかし、クラウドが普及すれば、システムを「所有する」必要はなくなります。私たちが所有する優れたシステムを、ネットワークを介して「賃貸する」のがクラウドの基本原理です。そうなれば、最先端のシステムは大企業だけの特権ではなくなります。予算の少ない中堅・中小企業やベンチャー、地方自治体にも使ってもらえます。つまり、クラウドが実現するのは「デジタル格差の解消」なのです。少子高齢化が進む日本では生産性の向上が不可欠です。クラウドによって社会全体の生産性向上に寄与することは、素晴らしい社会貢献だと思っています。電気・ガス・水道などと同じように、クラウドはこれからの社会のインフラになっていくはずです。

 クラウドビジネスにおける「オラクルの強み」とは何でしょうか。

やはりデータベースの技術でしょう。顧客が積み上げたデータを、必要な時にすばやく取り出して利用できる仕組みをオラクルは何十年も手がけてきました。さらに、営業、会計、人事、物流など、ありとあらゆるデータをシームレスに連動させ、ハイパフォーマンスな経営を実現します。創業者ラリー・エリソンの哲学の下に開発された、最高のテクノロジーを、クラウドを通じてリーズナブルな料金体系で提供していきます。

 中堅・中小企業にとって非常に魅力的なサービスですね。

日本オラクルでは中堅・中小企業向けのサービス提供に注力するために、100人単位の新しい営業組織も発足させました。「Oracle Digital」というデジタルネイティブ世代の若い人材を主力とする部署です。これからの新しい産業でグローバルに展開していこうという企業、地方にあって地域活性化のための取り組みを行っている企業など、これまでアプローチできなかった顧客にも積極的に提案していきます。そのためには通常の営業手法に加えて、SNSやデジタル・マーケティングなども使っていきます。

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我々は、2000年初期からリモート勤務(テレワーク)など自社における「働き方の多様化」を進めてきました。もともとアメリカのオラクル本社はサンフランシスコが本拠地ですが、人事部長はロサンゼルス、採用担当はヒューストン、経理部門はインドといったように、人材が世界各地に点在しています。あらゆる部門でコラボレーティブなリモート勤務が可能になりました。日本オラクルでも、ダイバーシティの推進なども含めて、こうした近代化された組織運営を積極的に導入、推進していきたいと考えています。

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