人材マッチングを実現するために
「対話と奉仕」を掲げ、
地域密着型の人材サービスを提供する

株式会社アルバイトタイムス 代表取締役社長

垣内康晴さん

リーマンショック後に「合理化」を行い、公約通り1年間で黒字化を実現

 2008年にはリーマンショックが発生。経営者として、非常にかじ取りの判断が難しい時期でした。

実は社長就任時に、私は社員に対して、「社員が安心して働ける会社にします」「業績を回復して、安定した企業基盤を確立します」と約束し、マニフェスト(公約)として掲げました。

しかし、リーマンショックが発生し、当社にも大きな影響がありました。当社の場合、非正規社員に対する求人サービスが主だったため、売上が70%も減少。私の経営判断の遅れから大赤字を計上し、会社として上場以来続けてきた投資路線から、希望退職や賃金カット、拠点閉鎖やサービス撤退等の「合理化」に舵を切りました。社長として約束したことを、いったん、反故(ほご)にするしかありませんでした。会社設立以来、初めての「合理化」は「1年間で黒字化する」という強い覚悟の下、経営陣そして管理職および社員と共有し、綿密な計画を立ててさらに施策を追加しながら進めました。社員の頑張りと努力により、1年後には何とか黒字化することができました。

この経験から大切にすべきもの、経営の方向性、アルバイトタイムスとして何をすべきかということがはっきりしました。私が一番大事にしている「地域密着」。安易な規模拡大、競合社との勝ち負けを気にすることよりも、経営理念「対話と奉仕」に基づき、地域顧客やユーザーに向けて丁寧なサービスを展開していく会社としてベクトルを定めたのです。

このころは、地元静岡の企業や人々が我々のサービスを引き続き使ってくれた分の売り上げが支えとなりました。大幅減収下において引き続きご愛顧いただいた、各地域の顧客には今でも感謝しています。

【アルバイトタイムスの経営理念「対話と奉仕」】

  • ・私たちの活動の始点は常に対話である。経営であっても、その他の社会活動であっても、私たちのすべての活動は、私たちを取り巻く人々と相互に十分意志を理解しあうことから始まる。
  • ・私たちの活動の目的は奉仕である。奉仕とは、対話によって得られた信頼をもとに、人々が幸福であり続けられるよう支援することで、社会の発展に貢献していくことである。

 地元に救われたわけですね。

株式会社アルバイトタイムス 代表取締役社長 垣内 康晴さん インタビュー photo

2002年の上場のタイミングで本社が静岡から東京に移転し、地域拡大や商品拡充の展開を加速していく中で、次第に「全国仕様」、いわゆるどの地域でも統一したサービスをスピードをもって提供することに傾倒していきました。しかし、リーマンショック後、我々が提供するものは、それを利用する地域の人や企業が使い勝手のよいものでないと利用されないということを改めて痛感し、初心に戻りました。

静岡県は横に長い県ですので、県内でも地域によって競合を含む求人メディアの特徴が違いますし、東京などの大都市圏と違い、求職者の属性も違っています。簡単にいえば、求人に対しての「働き手」が東京などであれば、学生が主体であるのに対し、静岡ではシニアや主婦が活躍している、といったことが挙げられます。そうした中で我々は、産業構造も異なるそれぞれの地域によって商品やサービスを工夫して地域と向き合いながら事業を進めていかないと、地域に受け入れられる企業に成長していかないと思っています。

そして、仕事探しのメディアの主流は時代とともに変わっていくことでしょう。しかし、地域密着を第一と考える当社では、一人ひとりにどう使ってもらえるかを大事にしているので、あるメディアに特化することは考えていません。向き合った地域で相互理解による信頼をつなげて広げていくことが、私のミッションだと思っています。社長になった時、リーマンショックの時、そして今でも、この想いは変わっていません。

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