HR業界TOPインタビュー「人・組織」ビジネスを牽引する希代の経営者

グロービス経営大学院 学長/グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー

堀 義人さん

より良い教育をより多くの人に――志に導かれて四半世紀
社会に変革と創造を促すグロービス流MBA教育の真髄とは
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(2016/03/29掲載)
堀 義人さん
経営学修士(MBA)を取得できる日本最大のビジネススクールとして名高いグロービス経営大学院は、「世界で唯一、ゼロからスタートした大学院」でもあります。その原点は、創設者の堀義人学長が大手商社の社員として留学した米ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)のキャンパスに。堀学長は芝生に座りながら、ノートに三つの円を描き、「経営に関するヒト・カネ・チエの生態系を創り、社会の創造と変革を行う」という志を刻みました。その使命感を原動力に、学校経営のほか、企業向け研修や出版、さらにはグリーやワークスアプリケーションズを育てたベンチャーキャピタルなど、さまざまな事業を立ち上げてきた堀学長。日本の人材育成に多大な貢献をする一方で、「学ぶことは最高の楽しみ」と自らの能力開発にも飽くことを知りません。それこそがMBAホルダーの真骨頂。変革と創造に挑み続ける、発想と行動力の秘密に迫りました。
プロフィール

堀 義人(ほり・よしと)●京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル、1999年 エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)等を歴任。現在、経済同友会幹事等を務める。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設し、2013年4月に一般社団法人G1サミットの代表理事に就任。2011年3月大震災後には復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、代表理事を務める。2013年6月より公益財団法人日本棋院理事。いばらき大使、水戸大使。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』(東洋経済新報社)、『新装版 人生の座標軸 「起業家」の成功方程式』(東洋経済新報社)等がある。

年間700名以上が入学する日本最大のビジネススクールに成長

―― グロービスは創業から約四半世紀。今年は、経営大学院として10周年の節目を迎えました。堀学長は、既存の教育界とは異なる独自の立場で、ゼロからビジネススクールをつくりあげ、日本にMBA教育を根づかせてきた先駆者でいらっしゃいます。ここまでの手応えはいかがですか。

ビジネススクールの数でいうと、日本はまだ米国の2割にも満たない。MBAを学ぶ人の数でも、彼我の差は依然大きいと言わざるをえません。それでも、僕が米国留学した当時、国内では慶應義塾大学と国際大学の2校しかなかったのが、いまやグロービス経営大学院のような専門職大学院も約30校あり、従来の大学院を合わせると、ビジネススクール全体では100校程度まで増えてきました。実際、MBA取得に対する内外の社会人や学生のニーズの高まりには、大きな可能性を感じます。後発でゼロから始まったグロービスが、年間入学者数700名以上、在校生約1600名を擁する、日本最大のビジネススクールに成長したのですから。しかもその規模は、年々拡大しています。

グロービスは企業研修部門も好調で、MBAメソッドを活用して各社のニーズに沿ったリーダー育成を行う研修プログラムを、国内外約500社のクライアントに提供。年間約6万人のリーダーおよびリーダー候補の方々に学んでいただいています。また、経営全般に関する知見の蓄積を広く発信するために力を入れているのが、本の出版、ウェブサイトとスマホアプリ「GLOBIS知見録」の運営です。すでに出版総部数は250万部超に達し、発行するアプリのダウンロード数はHBSのそれを超えました。こうした事業全般を通じて、日本のリーダー層の底上げや経営人材の育成に、少なからず貢献してきたという自負はあります。

―― MBAに対する日本の企業社会の評価は、この四半世紀の間にどう変わりましたか。

堀 義人さん インタビュー photo

僕がHBSへ行った頃はまさにバブルの絶頂期。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代で、「もうアメリカから学ぶことはない」といった空気が日本の企業社会をおおっていました。それがバブル崩壊で一転、謙虚にならざるをえなくなった。やはりいいものは学ぼうじゃないかということで、米国経済のダイナミズムを支える先端的な教育や研修の手法を取り入れる動きが出てきたんです。一方で、山一ショックなどを機に終身雇用が崩れ、転職が当たり前になったこともMBAが浸透した要因の一つでしょう。個人のキャリア形成という観点から、働く側のMBAに対する関心が高まっていったのです。

―― 堀学長はグロービスを、「社会認知型ビジネススクール」として育ててこられました。教育の価値は政府が決めるのではない、社会が決めるのだという発想ですね。

そうです。企業の価値を決めるのも政府ではなく、顧客やマーケットが、すなわち社会が決めますよね。学校も同じで、その価値は国や他の大学といった外的権威に裏付けられるのではなく、本来は教育の内容や成果によって、社会から実質的に認められるべきでしょう。MBAプログラムにはそれだけの価値がある。良い教育機会を提供すれば日本でも必ず認められると、確信していました。もちろん規制改革で株式会社立大学院や専門職大学院の制度が創設された結果、民間のグロービスが、いわゆる公式の経営大学院として認可され、大きなメリットを享受することもできました。それまで修了者には、学位の代わりにグロービス独自の「MBA」である「GDBA」という認証を出していましたが、経営大学院になり、経営学修士の学位を発行できるようになった。しかしそれは、あくまでも“制度”に認められただけのこと。ビジネススクールにとって最も重要なのは、文部科学省の認可でも、自前の校舎でも、名誉や権威でもありません。欠かせないのは、MBAを学びたいという受講生からの支持です。創業以来、僕は一貫してその思いを大切にしてきました。

―― ビジネススクールでMBAを学ぶ意義とは、つまるところ、何ですか。

メリットは大きく三つあります。一つは、リーダーとしての能力を開発できること。僕もHBSで鍛えられ、自分の能力が明らかにストレッチされていくのを実感しました。経営全般に関する知識やノウハウはもちろん大切ですが、リーダーはそれらを使いこなす方法論、すなわち考える力や伝える力も含めた能力を開発しなければいけません。これを効率的に学べるのが、MBAの教育メソッドなのです。二つ目は、人的なネットワークが生まれること。かけがえのない同窓の士は、真剣に学び合い、語り合い、ときに酒を酌み交わしながら、厳しいカリキュラムの下で切磋琢磨してこそ得られるものでしょう。

そして三つ目は、「志」が見つかることです。自分は何をなすべきか、何のために働くのか、MBAを目指して学び、仲間から多くの刺激を受けることで、内なる使命感に目覚めるきっかけがつかめるはずです。能力開発、人的ネットワーク、そして志――この三つがMBAを学ぶ真の意義であると、僕は身をもって確信しました。


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