HR業界TOPインタビュー「人・組織」ビジネスを牽引する希代の経営者

株式会社 ジェイ エイ シー リクルートメント 代表取締役社長

松園 健さん

人材紹介専業の企業として唯一、東証一部に上場
「両面型」ビジネスモデルのプロフェッショナル集団を率いる [3/4ページ]

(2015/12/24掲載)

グローバル対応を求め、リクルートからジェイ エイ シー リクルートメントへ

―― 2008年にジェイ エイ シー リクルートメントへと移られたわけですが、その理由・経緯についてお聞かせいただけますか。

かなり以前から、大手企業にとってグローバル化への対応が課題となっていました。当然、リクルートにいた際も相談を受けるわけですが、このころのリクルートは、グローバルの人材紹介をできるような状況にありませんでした。私自身、グローバル化対応について何もできないというストレスが非常に大きくなっていったのです。

そうした時、現在の当社の会長・田崎と出会う機会に恵まれました。当社は1975年にイギリスで創業して以降、当たり前のようにグローバル対応を行っています。イギリスに居住する日本人向けサービスの充実を目的として、ロンドンで誕生しましたが、社名のJACには、現地で活躍する日本(Japan)の方の代理人(Agency)、相談相手(Consultancy)として役に立ちたいという想いが込められています。グローバル化対応をしたくてもなかなか具現化ができていなかった私にとって、非常にまぶしく映りました。それと、スピード感を持って経営していることに驚きました。特に、意思決定のスピードが非常に速いのです。これが、リクルートとの大きな違いでした。

私にはリクルートグループで人材紹介に携わっていた原体験があり、この事業をもっとグローバルに拡大していきたいという思いがありましたから、田崎と会った時、共感し、波長が合いました。「ジェイ エイ シー リクルートメントでなら、プロフェッショナルのコンサルティングスタイルで人材紹介ができる、グローバル対応ができる、そして規模の大きい仕事ができる」と考え、思い描いていた人材紹介会社が実現できると思ったのです。だから迷うことなく、転職することを決め、2008年に営業の責任者として入社しました。

―― しかし、2008年というのはリーマン・ショックがあった年です。この頃の人材業界は、大変な状況にあったと思うのですが。

田崎からは「焦らずゆっくりとやりなさい」と言われました。とはいえ、11月に入社した時、いきなり売上が半分に落ち込みました。2008年10月に当時のトヨタ自動車の渡辺社長が、「決算予測が出せない」と言われた衝撃的なコメントを今でも覚えています。今思い出しても、当時は全世界でマーケットの底が同時に抜けた感じがしました。

とにかく、毎月大赤字です。キャッシュがどんどん目減りしていきました。ここは断腸の思いでしたが、一度リセットして、構造改革をしないと会社が立ち行かない状態でした。そこでまず、当社が何者であるかを、はっきりとさせようと徹底的に役員で議論し速やかに方向性を決めました。元々、創業者である田崎が描いていたコンサルティングスタイルでグローバルに対応し、ターゲットはミドルからエグゼクティブ、または専門性が高い求人、そういう会社です。だからもう一度、お客様である企業経営にとって影響力のあるゾーンにシフトしていくことで生まれ変わろうと意思決定を行い、同時にいろいろな改革を進めていきました。

―― 具体的に、どのような改革を行ったのでしょうか。

松園健さん インタビュー photo

当時は、リクルート、インテリジェンス、当社が人材紹介の大手3社と言われていましたが、我々はほかの2社とは違う独自の路線を進み、年収の高いポジションで、企業経営に影響力のある人材へとシフトチェンジし、リフトアップを図りました。

ただ、このスタイルを進めるためには、一人のコンサルタントが企業側にも求職者側にも対応する「両面型」でなければなりません。「分業型」では、このゾーンの人材に対応するのは難しいのです。そのため、田崎が創業から生み出した「両面型」を私が2011年に社長に就任してから、変えることを方向性としてはっきり打ち出しました。しかし、一時期から当社は「分業型」でやっていましたから、社内の反発は非常に大きかった。この点について私たち全役員がぶれずに言い続け、さまざまな改革とそれに伴う施策を意思決定していきました。一方、具体的な施策に関しては、徐々に社内に浸透していくよう、段階を踏んで行いました。

―― 「両面型」に変わるために、コンサルタントの数を増やしたのでしょうか。

中途採用の人数を急激に増やし、年間で約70~100人を採用しました。専門性が高い、いろいろな業界で実績がある人を採用しました。以前は「分業型」を推し進めるために新卒採用が中心でしたが、「両面型」でコンサルティングを進めるためには、さまざまな業界でいろいろな経験を持った人材が不可欠だからです。プロフェッショナル集団になるためにも、これまでの「分業型」の文化を変えなければいけないと思いました。とにかく人材紹介のプロとして、主体的にモノを言って、自ら動くことのできる集団にしていきたかったのです。

―― そのほかにどのような改革を行ったのでしょうか。

プロフェッショナルの定義を明確にするために、「求人成約率」「人材(登録者)成約率」のKPI(重要業績評価指標)を定めました。そして、その根底にある当社の文化を作っているフィロソフィー&ポリシー(フィロソフィー:自由と規律、公正さ)(ポリシー:速さ、誠実さ、態度)を理解し、具体的に実践することを皆に徹底しました。

我々はプロフェッショナルですから、自分自身が主体性を持って自立して行動を起こすことが求められます。誰かから言われて動くとか、ルールがあるので動くといったことではなく、常に自分が自由な発想で仮説をもって動くことです。と同時に、それが一人だけのことになっては意味がありません。組織で成果を出すためには、規律が大事なのです。組織としての規律が定められ、実践されることによって、パフォーマンスにつながります。そうしたことを迅速に誠実に行うことを定めているのが、フィロソフィー&ポリシーです。

また、ダイバーシティ施策を強く推進しています。社員に占める女性比率は46%、女性管理職は19%。ワーキングマザーも非常に多くいます。外国人社員も多く、13ヵ国28人の人たちが働いています。

結局、プロフェッショナルを目指すにしても、フィロソフィー&ポリシーを理解し、共有できる集団にならないと、組織としてのパフォーマンスが上がりません。これらは、我々の成長と発展の礎となる、ゆるぎない価値観なのです。これができた上で、マーケットのセグメントなどの戦略が存在しうるのです。

あと、もう一つ大きく変えたことは、「マネジャーがプレイングマネジャーにならなければならない」という方針を打ち出しました。マネジャーと言っても、号令だけをかけるマネジメントをするのではなく、まずは自らコンサルティングをすることを重要視したのです。

というのも、マネジャーが現場の仕事をできなければ、良いリードができないからです。マネジャーが自ら何もできないのに、メンバーに指示だけしても、メンバーはしらけるだけです。特に、我々は変革を進めているので、今までのやり方を踏襲するだけなら、指示・命令をするだけでいいのかもしれませんが、置かれた状況が全く異なります。

リーマン・ショックの後、大きく変革を進めている最中ですから、マネジャー全員に対して、私自身も含めて、プレイングマネジャーになることを宣言させ、具体的な目標を持たせました。

―― マネジャー一人ひとりの持つ能力が高くなければできないことですね。

ただ、人間にはポテンシャル(潜在能力)があると思っています。今まで、経験していかなったから、できなかっただけの話なのです。実際、改革を始めると、すさまじい勢いでレベルが上がってきました。環境や場が、人を育てるのです。「両面型」へ移行したのも、同じような意味でのチャレンジです。

人間は、誰もが変わりたくないという気持ちを少なからず持っています。今までやっていたことを続けるのは安心だし、ある程度の数字を上げられるイメージを持てます。しかし、それでは成長しません。だから、先ほども言ったように、プロフェッショナルとして求められるKPIを設定したのです。

例えば、求人成約率は「10件のうち最低でも2件を決める」と求める基準を定めました。生産性についても、コンサルタント一人当たりの月間成約額や営業利益率も明確に決めました。また、国際領域の事業比率も、「半分以上は海外関連求人領域で稼ぐ」と定めています。プロフェッショナルとして付加価値の高い事業を行っているのであれば、当然、その対価としての高い利益を生み出せるようにしなければならないからです。漠然としたスローガンや戦略を打ち出すだけでなく、KPIを具体的な数字として掲げ、可視化したわけです。


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