日本には新たな人材プラットフォームが必要――
“人材市場の可視化”で企業に採用力を取り戻す

株式会社ビズリーチ

南壮一郎さん

“一人ひとりは違っていい”。その意識がイノベーションにつながる

南社長が思われるイノベーターの資質とは何でしょうか。

イノベ―ターに必要なものは二つあると思います。一つは社会に関心を持つこと。僕はよく周囲から「ビジネスモデルおたく」と呼ばれますが、何かに興味を持ったら、なぜこの会社は伸びているのか、なぜこの商品は売れているのかとトコトン調べています。まずは広く興味を持つことです。もう一つは、人に流されないこと。イノベーションは、他の人が気付いていなかったからこそイノベーションになります。何か新しいことをやろうと思えば、周りは反対することが多いのが世の常です。しかし、自分の考え方と同じ人ばかりでは、イノベーションは起きない。人は自分と違うからこそ新しいアイデアに批判的になります。だからこそ、自分の考えを信じ抜いて、周りの安易な反対の声を気にしないことも資質の一つになると思います。

南社長は小さいころから、人に流されないタイプだったのですか。

その点では僕は恵まれていたかもしれません。学生時代にカナダ、米国、日本と3ヵ国で教育を受けたからです。国が違うと「何が正しいか」も全然違います。そこで気付いたのは「一人ひとり違っていい」ということでした。何よりも自分の意見と考えを持つことが大事なのです。

株式会社ビズリーチ 南壮一郎さん インタビュー photo

例えば、カナダは移民の国で、基本的にすごくフランクで自由。いろんな人種が集まっているので、場所によっては排他的だったり、差別的なところもあったりしました。そこで学んだのは、自分に何か考えがあっても、人に伝えることができなければ、それは無価値だということです。そこに気付いてからは、周囲にどんどん伝えるようになりました。先生にもクラスメイトにもはっきり意見する。衝突もありますが、議論するために話すわけですから問題はありません。その点、日本人はなかなか自分の意見を言えない人が多いなと。せっかく意見を言っても、周囲から「それは言う必要がない」とまで言われることもある。日本だからこそ、しっかり意識すべきことだと思います。

でも、イノベーターは一人では想いを事業化することはできません。というのも、起業当時、僕は共に戦ってくれる仲間を集めるために、数ヵ月で数百人に声をかけ、自分の想いや事業構想を懸命に伝えました。でも、「無理だよ」「絶対に成功しない」と、誰も賛同してくれず、一時は自信を失いかけました。それでも、一人、また一人、各分野のプロフェッショナルが僕の想いに共感し、仲間になってくれたことで一歩を踏み出すことができたのです。肩書では僕が代表ですが、他の創業メンバーの一人でも欠けていれば、今のビズリーチはありません。彼らにも僕自身にも、仲間と共に創ってきて今があるという想いがあります。おかげさまで「ビズリーチ」は現在、1600社と29万人の求職者にご利用いただくまでに成長しています。

しかし、人材市場の可視化もまだ始めて5年ほどですから、全体の数%ほどしかできていません。最終的には、日本のすべての求人情報、すべての求職者がダイレクトにつながる市場をつくらないと意味がありませんから、まだまだ途上にあります。そこでサービスを見直しながら、より良いものをつくり、それらの市場を世界にも広げていきたいと思っています。

企業が優秀な人材を獲得するために、より主体的に採用活動ができること。求職者が自律して自らの選択肢や可能性を知った上で主体的に転職活動ができること。どちらも素晴らしいことだと思います。この二つが僕たちの目指す新しい社会の姿です。僕たちは、採用市場を可視化し、日本人の働き方や企業の採用のあり方をより便利に変えていきます。

最後に本サイトの読者である、人事向けを中心とした企業サービスを展開する企業の経営者や若手社員に向けて、メッセージをお願いします。

20世紀最高の経営者と賞賛される米GE前会長のジャック・ウェルチ氏は、自分の仕事の半分はピープル・ビジネスと言い、優秀人材の獲得に積極的でした。企業を成長さるためには、優秀な人材をいかに仲間として巻き込んでいくことが重要であり、そういう人材に振り向いてもらうためには、人材を採用したい企業が精一杯の労力と時間と情熱を注がなくてはなりません。僕は、企業が自らの手を動かし、自らのアタマで考えて人を採れるようになることは、日本経済のためになると考えています。採用の改革は、企業がより元気になる、その大きなきっかけになれる。だからこそ、企業に採用力を取り戻してほしいのです。ビズリーチでは、人事の世界がよりプロフェッショナルになれるよう、皆さまのお手伝いをしていきたいと考えています。

株式会社ビズリーチ 南壮一郎さん インタビュー photo

(2014年1月27日 東京・渋谷区・ビズリーチ本社にて)

社名株式会社ビズリーチ
本社所在地東京都渋谷区渋谷2-15-1
事業内容会員制転職サイト「ビズリーチ」の企画・運営。シンガポール、香港を中心としたアジア太平洋地域のハイクラス人材転職サイト「RegionUP」の企画・運営。インターネットを活用したサービス事業、ビジネス戦略コンサルティング事業、WEBサイトコンサルティング事業など。
設立2007年8月

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「HRペディア「人事辞典」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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