コンピテンシー適性検査をはじめ次々に「新しい常識」を創り出す原点とは?

株式会社ヒューマネージ

齋藤亮三さん

戦略的パートナーになることが求められる人材会社 目先の利益ではなく本質を追求する姿勢が大事

 現在の採用ソリューション業界をはじめとする人材ビジネス業界について、どのようなことをお感じになっていますか。

齋藤亮三さん インタビュー photo

一時代前の人事部門の役割は、上層部から降りてきた目標を達成するために、人材採用や、労務管理業務をつつがなく遂行することに重点を置いた、オペレーションタイプのものでした。それが、経営戦略における人的資本管理の重要性が高まるにつれて、経営者の発想で、経営目標を達成するために必要な人材ポートフォリオを構築し、それを最適な形でマネジメントして、持続的に成果を生み出していく、戦略的なものに変化しています。

そうした中で、採用ソリューション事業も、オペレーション部分のアウトソース先にとどまるのではなく、科学的指標(エビデンス)に基づく現状分析や戦略立案のコンサルティングサービスといった、より高い次元の価値を提供していく必要が出てきたと考えています。

そのような「戦略的パートナー」にならなければ、淘汰の波をくぐり抜けて、事業を成長させることはできません。ですから、そのための人材への投資、設備投資がますます必要になってくると考えています。

 企業の人事部門の役割などにも、大きな変化を感じられているということですね。

新卒採用だけを考えてみても、経団連の指針の変更、通年採用の普及、雇用形態の多様化など、大きく環境が変化していますし、さまざまな制約の中で成果を求められるので、難易度は高まっていくはずです。採用支援会社には、人事部門の戦略パートナーとして、変化に対応し成果を上げるための知見を提供することが求められますが、人事部門で活躍される方々にも、今まで以上に専門性が求められると思います。

たとえば、経営戦略の根幹に関わる人材・採用戦略を立案するためには、経営に関する総合的な知見が求められるはずです。また、ダイバーシティが重視されるこの時代、採用の公平・公正性を保つためのコンプライアンス徹底が必要なため、法務知識もより深いレベルで求められるでしょう。また、特に採用においては、自社が求める人材要件の明確化や、どのような尺度、ツールを使用するのが適当かを判断するために心理学の専門知識も求められると思います。欧米の相当規模の企業の人事部門では、大学院で産業心理学を専攻した人材が活躍していると聞きますが、日本でも人事スタッフのスペシャリスト化が進む可能性があると思います。

 貴社の今後の展望をお聞かせください。

当社では、三つの方向で事業を発展させていきたいと考えています。一つ目は、採用から入社までだけではなく、退社までのエンプロイメントサイクル全般にわたり、貴重な人材の可能性を引き出すお手伝いができるようにすることです。その第一歩として、当社は2014年、『i-web 新入社員フォローモデル』をリリースしました。それまでの母集団形成から入社までをサポートする採用ソリューション事業の対象範囲を、入社後にまで拡大したものです。このシステムを活用するメリットの一つは、それまで採用担当者のみが活用していた、アセスメント結果から得られた各人材の特性に関する情報を、配属先の上司など、現場で新人育成に従事する人も共有できるようになることです。それにより、個々の新入社員の特性や志向を考慮したOne to Oneのきめ細かい対応が可能になり、組織への定着と早期戦力化を図ることができます。今後は、人材育成や能力開発の領域まで事業範囲を広げていきたいと考えています。

二つ目は、労働人口の減少が避けられない中で、従来の新卒正社員採用主体のサポートではなく、中途やパート・アルバイト、高齢者など、多様な人材の採用をサポートできるように事業を進化させていきたいと考えています。

三つ目は、事業のグローバル展開。すでに、韓国で適性アセスメント事業を展開していますが、今後は、成長著しいアジアのほかの地域にも積極的に進出していきたいと考えています。

 人材ビジネスに携わる人々へ、メッセージをお願いいたします。

当社は、クレドの中で「いまよりも、人が幸せに働くことができれば、この国はもっと幸せになれると思う。私たちヒューマネージは、日本にとって何よりも貴重な財産である人材の可能性を最大限に引き出すことで、元気な社会づくりに貢献し続けます」と事業ビジョン(HUMANAGE VISION)を定めています。

また、「ヒューマネージの働き方(HUMANAGE WAY)」として、「働く人をもっと幸せにするために、まず自分たちから幸せに働こう」として、「働くことを、楽しもう。」(仁)「胸を張れる仕事をしよう。」(義)「感謝の気持ちを忘れずにいよう。」(礼)「知恵で競える人になろう。」(智)「どんなときでも誠実でいよう。」(信)の五つを、儒教の五常(五つの徳)にあやかって掲げています。

今、人材ビジネスに携わる方々、特に今後、この業界での起業を考えている若い方々には、目先の利益にとらわれるのではなく、「人や社会、そして国を幸せにする」といった理念を掲げて、どうしたら、皆が幸せに働き、よりよい社会を築くことができるかという本質的な課題を追求していただきたいと思っています。

これは単なる理想論ではなく、常に本質を追求することが、最終的には、事業の持続的な成長も可能にすることを私自身が実感しているからです。また、他者に幸せになってもらうためには、まずは、自分たちが幸せでなければなりません。その際に、名声や金銭などの外的な報酬だけではなく、「働くことを楽しむ」「仕事に誇りをもつ」「感謝の心で人とのつながりを大切にする」といった、当社が「HUMANAGE WAY」で掲げているような内的な充実感を大切に、仕事に取り組むことも大切ではないでしょうか。

人材の成長とともに事業も成長していく、人材ビジネスに携わる企業だからこそ、たとえ時間がかかっても、そうした人と組織の良好な関係を常に最優先にしていきたいと私自身は考えています。

齋藤亮三さん インタビュー photo

(2015年2月12日 東京都・千代田区・ヒューマネージ本社にて)

社名株式会社ヒューマネージ
本社所在地東京都千代田区平河町2丁目16番1号 平河町森タワー11階
事業内容HCM(ヒューマン・キャピタル・マネジメント)事業
採用ソリューション事業
適性アセスメント事業
EAP (Employee Assistance Program=従業員支援プログラム)事業
設立2004年12月1日

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「HRペディア「人事辞典」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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