給与計算システムの機能・種類・選び方と比較ポイント
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給与計算システムの機能・種類・選び方と比較ポイント

専門的な知識が必要で、ミスが許されない給与計算業務。勤怠情報などを基に給与計算業務を自動化する「給与計算システム」は、人事労務の仕事を効率化する上で重要なツールです。集計ミスなどによる間違いを防止できるほか、法改正による変更にも自動的に対応するなど、正確性も担保しやすくなります。

給与計算システムには、クラウド型やインストール型といったサービス形態による違いがあります。システムを利用する人数や期間、使用する場所やデバイスといった前提条件を踏まえて選ぶと良いでしょう。また、組織の規模や、雇用形態の複雑さなど自社の給与計算の業務フローを踏まえた上で、「給与計算特化型」「労務管理一括型」「ERP型」といった機能タイプを選定します。

1.給与計算とは

給与計算とは、勤怠データなどに基づいて総支給額を計算し、税金や保険料といった各種控除を算出して手取り額を決定し、従業員に給与を支払うまでの一連の業務を指します。給与計算業務には、正確性だけでなく、給与を期日までに支払う業務遂行能力や、人事労務関連の法律に関する専門知識が求められます。企業にとって、給与計算は経営活動の基盤であり、従業員との信頼関係にも影響する重要な業務です。

1-1 給与計算のやり方

給与計算の方法は、会社の従業員規模や拠点の数などによって、最適な方法が異なります。

たとえば従業員数10人以下の企業であれば、エクセルを用いた勤怠管理表をベースにするなど、アナログな管理でも対応が可能です。ただし正しく給与計算を行う上では、所得税の計算や保険料の算出方法、残業代の計算など専門的な知識が求められます。

そのため、給与計算業務の経験者など、知識を有した従業員が行う必要があります。会社によっては、給与計算の業務がマニュアル化され、未経験者でも業務ができるように整備されているケースもあるでしょう。その場合も、給与計算に関連する法改正があった際には、業務の見直しが求められるので注意が必要です。

従業員数が増え、さまざまな雇用形態の従業員を雇用するようになると、給与計算はより複雑になります。非正規社員の社会保険の取り扱いや、月給と時給の賃金計算、夜勤の割増賃金など、従業員ごとに適用されるルールを確認しなければいけません。複雑化した給与計算業務を効率的に行うためには、アウトソーシングや給与計算システムの導入という選択肢があります。

また、大手企業では管理部門がコア業務に集中するため、アウトソーシングを選択することもあります。専門的な知識が必要になる業務を外注することで、人事労務担当者はより戦略的な業務に注力できます。さらに、アウトソーシングすることで、たとえば本社周辺で災害が起きた場合も給与計算業務を継続できる可能性が高まるので、事業継続計画(BCP)を策定する観点からアウトソーシングを検討する企業もあります。

専門知識を持つ経験者の人数が十分ではなく、効率化を求める企業の選択肢になるのが、給与計算システムの導入です。多岐にわたる計算業務や複雑なルールを一元管理して簡素化でき、さらには法改正にもスムーズに対応できるため、人材を育成するよりも短期間でメリットが得られます。

2.人事管理システムの一つ、給与計算システムとその機能とは

給与計算システムとは、人事管理システムの一機能を特化させたものです。

2-1 人事管理システムとは

人事管理システムとは、人事部門のさまざまな業務を効率化・省力化し、スピーディーに処理するためのシステムを指します。人事管理システムには、給与計算や法定調書の作成といった定型業務を効率化するもののほか、採用管理や人材戦略マネジメントなどの業務進捗の可視化などを通じて、人事の仕事の生産性を高めるものがあります。

人事管理システムの種類

2-2 給与計算システムとは

人事管理システムの中で、給与計算業務に特化しているのが給与計算システムです。勤怠情報に基づき、支給額や控除額の計算を自動で行えるようになるため、人的ミスの減少につながります。

従業員の勤怠管理を、タイムカードやエクセルなどを用いて行っている場合は、勤務時間を集計したのちに給与計算システムに情報を取り込みます。勤怠管理システムであれば、多くの給与計算システムと連携できます。勤怠管理のシステム化を進め、給与計算システムと連携させることで、業務をより正確で迅速に進めることができます。

勤怠管理システムの中には、給与明細の電子化、年末調整、雇用保険被保険者離職証明書の手続きなど、給与計算に関連する業務に対応した機能を持つものもあります。

給与計算システムの主な機能
給与、賞与の自動計算 正社員・アルバイトなど雇用形態に合わせて給与体系を設定可能。複雑な計算式を自動化できるため、所得税や社会保険料などの控除額をエクセルなどで別途計算する手間が不要になります。
勤怠管理情報との連携 給与計算に必要である就業情報は、CSVデータでアップロードしたり、勤怠管理システムとの連携し自動で取り込めたりする機能があります。
給与明細書発行 計算した給与情報に基づき、給与明細書を発行できます。また、WEB給与明細に対応するシステムもあります。
社会保険・労働保険に関する書類管理 算定基礎届や月額変更届など、社会保険・労働保険に関する書類や台帳を管理できます。
年末調整 扶養控除等(異動)申告書など、年末調整に必要な書類をシステム上で回収・集計し、年末調整の控除額・過不足税額を自動で計算します。給与支払い報告書や源泉徴収票の発行にも対応。システムによっては、年末調整機能はオプションとなることもあります。
マイナンバー管理 法律に即したマイナンバーの収集・管理に対応します。

3.給与計算システムの分類と種類

給与計算システムは、「製品形態」もしくは「機能」を軸に分類できます。

3-1 製品形態での分類

製品形態では、「クラウド型」「インストール型」「オンプレミス型」の3種類があります。

3-1-1 クラウド型

クラウド型とは、オンラインのサーバー上で提供されるサービスを、インターネットを介して利用する形態を指します。クラウド型のシステムの特徴は、利用者がソフトウェアをダウンロードしたり、サーバーを構築したりといった手順がないことです。クラウド型サービスの中には、メールアドレスとパスワードの設定だけで使い始められるものも少なくありません。導入までの手間が少なく、利便性に優れた形態といえます。

このほかの特徴として、ネット環境があればデバイスを問わずに利用できる点が挙げられます。自宅やコワーキングスペースなど、オフィス以外の場所で仕事をするリモートワークにも適しています。さらに法改正など業務に変更があった場合は、システムが自動的にアップデートされます。

費用面でいえば、利用人数に応じて月額費用がかかるのが一般的です。そのため、少人数規模の組織の導入に適しています。逆に利用者数が大人数になる大企業の場合は、利用人数に応じた価格設定ではないものや、インストール型やオンプレミス型が選択肢に挙がります。

3-1-2 インストール型(パッケージ型)

インストール型とは、専用ソフトをパソコンにダウンロードして利用する形態のことをいいます。基本的には、システムをダウンロードしたデバイスを使うため、利用者が複数いたり、在宅勤務など利用拠点が多岐にわたったりする場合は不向きと感じる可能性があります。

一方でインストール型は買い切り型であり、ネットショップなどで気軽に購入できる点がメリットです。クラウド型と比較して初期費用はかかるものの、ランニングコストも抑えられます。以前は法改正のアップデートなどについては、オプションで別途料金がかかりました。しかし近年は、購入料金にアフターフォローや自動アップデートを含むサービスも登場しています。

3-1-3 オンプレミス型

オンプレミス型とは、自社サーバー内にシステムを構築し利用する形態を指します。自社の業務フローに合わせて、システムの機能をカスタマイズできる点が特徴です。セキュリティ対策を施し、高い安全性を確保できますが、保守・運用のための専門人材を社内に有している必要があります。

導入準備のための期間や費用はかかりますが、一旦システムを導入すると、クラウド型のように月額の利用料金は発生しません。そのため、大規模かつ長期間の使用を想定したケースに適しています。

3-2 機能の分類

給与計算システムのもう一つの分け方が、製品タイプ(機能)によるものです。具体的には、ERP型、労務管理一括型、給与計算特化型の三つに分けられます。

3-2-1 ERP型

ERP(Enterprise Resource Planning)とは、給与計算の機能を包括した業務基幹システムです。このタイプの給与計算システムは企業内の情報を一元管理できるため、勤怠管理情報だけではなく、販売や会計といった別の領域とデータを共有できます。

そのため、従業員の評価をベースに賞与計算を自動で行ったり、営業担当者の販売実績と合わせて歩合給を計算したりといった複雑な処理ができます。導入には時間がかかりますが、企業内の情報を活用できるため、経営資源の最適化を実現できます。従業員が多数在籍している会社や、複数の拠点でサービスを展開している会社、複雑な給与計算の方法を採用している会社に適しています。

3-2-2 労務管理一括型

労務管理一括型とは、人事労務の各種業務を一つのサービス内で行えるタイプのシステムのことです。従業員情報を登録すると、労務管理に必要な書類作成や給与計算を自動化できます。豊富な機能連携で、労務管理から給与計算までワンストップで業務を効率化できる点が特徴です。

3-2-3 給与計算特化型

給与計算特化型のシステムは、労務管理一括型とは逆に、給与計算に機能を絞ったタイプです。給与計算・賞与計算の自動化や、給与明細書の作成ができます。システムにかけるコストを抑え、給与計算業務のみを効率化したい企業に適しています。

システムの中には、正社員・パートといった多様な雇用形態に対応しているものもあり、社内の管理システムの導入状況によっては、給与計算特化型システム一つでも大きな効率化が期待できます。ただし、既存システムとの連携の可否は事前の確認が必要です。

オプションとして、マイナンバー管理や年末調整など給与計算の関連業務に対応しているシステムもあるため、社内の必要性に応じて選ぶと良いでしょう。

3-3 機能と最近の傾向

給与計算システムの最近の傾向としては、他業務との連携性の強化だけではなく、使う側の需要に合わせたアップデートが進んでいます。

たとえばクラウド型の場合は、サービスを提供する側が保守・運用に責任を持つため、小規模のスタートアップでも安心して使用できます。法改正のたびに自動アップデートされる点も、人材が限られている組織から支持されています。

場所やデバイスを選ばないシステムへの需要も高まっています。リモートワークを導入する企業では、自宅やコワーキングスペースなど、オフィス以外の場所でいかに生産性を高めるかが大きな課題となります。場所や使用するパソコンが変わっても利用できるクラウド型のシステムは、働く場所にとらわれない柔軟な働き方を支えているといえるでしょう。従業員がスマートフォンで明細書を確認できる機能も、近年の働き方に対応したものといえます。

利用者の「使いやすさ」も追求されています。給与計算についての専門知識を持たない人でも使いやすいよう、入力項目をわかりやすくしたり、直感的に操作できるようにしたりするなどの工夫が見られます。システムを導入する裾野が広がるにつれ、操作性の向上に対する需要は高まっていくでしょう。

給与計算業務は、従業員の成果・評価と密接に関連しています。システムに蓄積された情報をどのように活用するかは、企業の経営戦略に影響します。そうした観点から勤怠管理情報・給与計算情報と連動し、個々の従業員が持つ情報を可視化させ、配属や育成に活かすようなタレントマネジメントシステムを選択する企業もあります。

4.給与計算システムを選ぶ際のポイント

給与計算システムを導入するにあたって、複数のシステムを比較する際に押さえておきたいポイントを説明します。
前提として、給与計算業務における自社の課題を明確にし、どのような機能が必要か考えられるようにします。

給与計算システムを選ぶ際のポイント

4-1 自社の規模に適しているかどうか

検討の際には、システムの機能や予算プランが、自社の従業員規模や雇用形態、使用を想定している業務に適しているかを確認します。

数百人規模の企業であれば、カスタマイズの自由度が高いERP型が適切な場合もあります。一方で規模が拡大中のベンチャー企業であれば、はじめは給与計算特化型のシステムを採用してコストを抑えつつ、組織の成長に合わせて労務管理システムなどのシステムとの連携を強めるほうが良い場合もあるでしょう。

4-2 勤怠管理など他のシステムと連携できるか

給与計算システムは、従業員の勤怠情報を基に計算します。自社の勤怠管理の方法によっては、給与計算システムに取り込む際に、適したフォーマットへ変換する作業が発生する場合もあります。

給与計算は、従業員情報や経費精算など、他の情報とも密接に関連しています。うまく外部システムと連携することで、業務の大幅な効率化が期待できるため、すでに導入している業務システムがある場合は、連携可能なサービスを選ぶと良いでしょう。
特にインストール型の場合は、既存の勤怠管理システムと連携できるかどうか、事前によく確認することが大切です。

4-3 セキュリティ対策は優れているかどうか

給与計算業務では、従業員の個人情報など、会社の機密情報を扱います。万が一、情報が漏洩するようなことがあれば、会社の信頼に大きな影響を与えるため、導入する給与計算システムのセキュリティ対策はしっかり確認します。

サービスを提供するベンダーによって、セキュリティリスクへの対応は異なります。通常のセキュリティ対策のほか、事故が発生した場合の対応や責任の所在を調べておくことをおすすめします。

また、システムを利用するアカウントごとの権限設定や、2段階認証の設定が可能であれば、より高次元のセキュリティ対策を実現できます。

5.給与計算システムを導入する際に注意すること

給与計算システムの導入にあたっては、業務フローの変更などが発生します。スムーズに運用するために、事前の準備や利用方法の説明、社員への周知など、ステップを踏みながら導入を進めます。

5-1 事前準備

運用開始に向けて、既存の業務フローを見直します。給与計算システムに必要なデータ項目の確認、計算式の定義づけ、セキュリティ設定、給与計算後の処理定義などの事前準備が発生します。スムーズな利用開始のために、システムを利用する人員や権限の設定を確認しておきます。

5-2 ルール・操作説明

導入前に従業員に向けた研修会などを開催し、システムの運用ルールと操作について説明します。質疑応答の時間を設けることで、担当する従業員の不安を解消できます。運用ルールについて現場からの意見をヒアリングできるため、より効率的なルールへと見直すことも可能です。毎月の給与計算や、算定基礎届や年末調整など給与計算の関連業務の際にトラブルが発生しないよう、ルールを整えます。

5-3 従業員への周知

従業員への周知が必要になるのは、「給与明細書の閲覧」や「年末調整の書類入力」など、従業員が直接システムを利用する場合に限られます。周知の際は、「いつから」「なにが」「どのように」変更となるのかを、わかりやすくまとめると良いでしょう。社内ポータルなどに文書を掲載し、関係者がいつでも閲覧できるようにしておくことが重要です。

6.給与計算システムを提供する全国のソリューション企業一覧

企業名 サービス名
アカウンティング・サース・ジャパン株式会社 A-SaaS クラウド給与システム
アマノ株式会社 CYBER XEED
エフアンドエムネット株式会社 助っ人!給与
株式会社エフエム Sociaクラウド 給与システム
株式会社オービックビジネスコンサルタント 給与奉行11
株式会社オービックビジネスコンサルタント 給与奉行クラウド
株式会社クレオ ZeeM 人事給与
jinjer株式会社 ジンジャー給与
スーパーストリーム株式会社 SuperStream-NX 人事給与ソリューション
株式会社スマイルワークス スマイルワークス
株式会社Donuts ジョブカン給与計算
株式会社パトスロゴス Composite人事給与
株式会社BBSアウトソーシングサービス Bulas Payroll
富士通株式会社 GLOVIA きらら人事給与
freee株式会社 freee人事労務
株式会社フリーウェイジャパン フリーウェイ給与計算
合同会社Pay-book.jp PayBook
株式会社マネーフォワード Money Forward クラウド給与
三菱総研DCS株式会社 PROSRV
弥生株式会社 やよいの給与明細オンライン
株式会社Works Human Intelligence 「COMPANY(カンパニー)」給与計算システム
株式会社日本デジタル研究所 JDL IBEX給与net2
日本電気株式会社 (NEC) 給与計算システム EXPLANNER/S

7.おすすめの給与計算システム

株式会社マネーフォワードの「マネーフォワード クラウド給与」は、給与計算からweb明細発行、振込といった業務を効率化できます。日給制や時給制の割増賃金の計算に対応しているほか、web給与明細はスマートフォンやタブレットにも対応しています。

株式会社クレオの「ZeeM 人事給与」は、電子申請などによる業務効率化のほか、人事データを活用した人材マネジメントも支援します。システムの人事データから、現場の人材検索や人員統計・分析などのレポートがスピーディに作成できます。

スーパーストリーム株式会社の「SuperStream-NX 人事給与ソリューション」は、複雑な給与体系の計算に対応しているほか、タレント管理機能もあります。社員情報とスキル情報を管理することで、人材リソースを有効活用できます。

三菱総研DCS株式会社は、人事給与計算システムおよびアウトソーシングサービス「PROSRV」を提供しています。クラウドシステムのみの利用から、段階的にアウトソーシングを利用できるほか、人事業務そのものの効率化のため、業務改善の提案をします。

株式会社Works Human Intelligenceの「COMPANY(カンパニー)」は、給与計算から従業員ワークフロー、行政手続きまでを支援します。多様な給与制度、福利厚生に対応しているほか、元データ収集からチェック処理といった一連の作業を自動化できます。

株式会社オービックビジネスコンサルタントの「給与奉行クラウド」は、給与計算から年末調整までの業務を自動化し、業務時間を削減します。また、世界トップレベルのセキュリティ「Microsoft Azure」を採用しています。

8.まとめ

給与計算システムの導入によって、ミスができない重要な業務を効率化できます。自動計算による人的ミスの減少や、勤怠管理情報との自動連携などは、担当部署の業務負担を大幅に削減するでしょう。また、システムに情報を蓄積することで、経営資源を有効に活用できます。
給与計算システムの機能や予算は、サービスによってさまざまな違いがあります。自社の課題を明確にし、最適な給与計算システムを選ぶことが求められます。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「HRペディア「人事辞典」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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