HR業界の注目情報掲載日:2018/11/22

AI・テクノロジーの時代、人材開発部門に求められる「リスキリング」と「学び方を学ぶこと」

人材開発部門の人たちにこそ、「学び方を学ぶこと」を知ってほしい

今後、グローバル展開を進めていく上で、重要なことは何でしょうか。

中原:グローバル企業において重要なのは、ビジネス環境や地域の文化・構成員などの違いを意識した、事業戦略の使い分けです。その中で、高いパフォーマンスを得るために、最適な運営を行うことが大切だと思います。

浦山:まさに、「ダイバーシティ&インクルージョン」の考え方が需要になってきます。イノベーションを生み出すためには、とにかく多様性が必要。性別、年齢、人種、民族、宗教、性的指向、価値観、働き方など、いろいろな人たちがいる中、その人たちが一つになり、かつ多様な眼で新しいサービスや製品を開発していくことが求められます。その際にリーダーに必要なのは、多様な人たちを受け止め、尊重すること。グローバルを語るときに重要なのは、「違い」を認識するよりも、「目指す方向が同じである」などの「共通項」を見つけることです。

宇野:日本企業の場合、自社のDNAや経営理念など、自分たちが背負って立つもの、何かあったときに帰れる「共通の価値観」などが「長所」になります。ただしグローバルでは、それを「暗黙知」のままにしないことがポイントです。例えば「グルーバル人材開発」と言うとき、それをどれだけ明文化(テキスト化)できているか。どのカルチャーの人に対してもわかりやすく自社のDNAを言葉にすることができているか、またそれを下支えするストーリーと共に語ることができているか、といったことがとても重要だと思います。

こうしたことが実現できれば、確実に「共感」を生みます。そして、この会社で働いて良かったと言われるようになります。どんな国でも、どのようなビジネスを行っていても、「求心力」となっていくことでしょう。日本企業がグローバル展開をする上で、一つの有効な方法だと思います。

中原:確かに、そうした側面からビジョンの浸透を行っている企業はあります。ところが、それが目的となってしまっているケースも少なくありません。何のためのビジョンの浸透なのか、戦略的な意味合いで、今一度考える必要があると思います。

この先、人材開発部門が考えていかなければならない課題とは何でしょうか。

中原:今後、戦略的にAIが入ってくることによって、人材開発部門の人たちは、多様な知識・情報を戦略的に使えることが求められます。そのためにも、人間ができること、機械ができることの見極めが大切です。

宇野:先々が不透明なこれからの時代、人材開発部門の人たちこそ、「学び方を学ぶこと」を知らなければならない。そのためには、自分自身が「体験者」となることです。新しいテクノロジーが出たら、まず使ってみる。そこには新しい世界があり、新しい発見や気づきがあります。何より、ワクワク感があります。そこから、新たな学びが始まります。人材開発部門の人たちには、そうした体験者になってほしいと思います。

中原:まさに、「デジタル・エバンジェリスト」(伝道者)ですね。AIの時代だからこそ、人材開発部門の方々が自ら「学び方を学ぶこと」が、とても大事だと思います。

浦山:そのためにも、ぜひ「ATD Japan Summit」にお越しください。必ず、新しい発見や気づきが得られることでしょう。

そうした人材開発部門の方々や従業員の方々の学びを支援する、という重要な役割を担っているのが、教育研修会社やコンサルティング会社というわけですね。本日は貴重なお話、ありがとうございました。

浦山氏、宇野氏、中原氏

(取材は2018年10月23日、東京・千代田区の株式会社IPイノベーションズにて)

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「HRペディア「人事辞典」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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