HR業界の注目情報掲載日:2018/11/22

AI・テクノロジーの時代、人材開発部門に求められる「リスキリング」と「学び方を学ぶこと」

新しい学びのためには、人材開発部門の「リスキリング」が不可欠に

そのためには、人材開発部門における意識改革が必要ですね。

浦山:「ATD ICE」や「ATD Japan Summit」などに参加すれば、これからの人材開発部門としての「目指すべき方向」を知ることができます。また、具体的にどうすればいいのかは、「T&Dコンピテンシー基礎講座」などに参加し、自社の方向性を考え直した上で、新しいアプローチを模索していけばいいと思います。

重要なのは、これまでのような研修の講座を創ることではない、ということ。仕事の現場における学びに代表されるように、いま関わっていることを取りまとめ、うまく学びとして使えるようにする「キュレーション」が大事なのです。学びのあり方として考えた場合、そのほうが効果的です。このような学びの環境を整えることが、これからの人材開発部門に求められる新しい役割だと思います。

宇野:その場合、「リスキリング(再教育)」が重要になります。これは、今年の「ATD ICE」でも出されたキーワードの一つです。まず、人材開発部門が率先して「リスキリング」をしなければいけません。新しいプログラムを創るために新しいスキルを得る、ネタを集めるということではなく、今、浦山さんがおっしゃったように、「キュレーション」することがポイントになります。

中原:現在は働き方そのものが、常に変わっていく時代。また、AIの発達により、仕事がロボットに置き換わっていくことが現実的になっています。「今、この仕事をするために、あなたが学ばなければならないことはこれです」というような「キュレーション」をAIが行うようなことも、ラーニングテクノロジーの中に組み込まれてきています。

このように考えると、人材開発部門の「リスキリング」は、どの部分をAIに置き換えることができるのか、どのようにニーズを捉えてよりスピーディーに学ぶ環境を整えることができるのか、という考え方の問題だと思います。

浦山:例えばAIは、従業員が1000人いた、1000通りの教育のインプットの仕方(各人のスキルや興味・関心に合わせたやり方)を提供できるわけです。そのような状況の中で、人材開発部門が従来のような階層別研修を続けているようでは、とても追いつきません。

ただ、組織にはフェース・トゥ・フェースの部分も必要です。そのため、アナログとAIをどのように組み合わせていくのかを、人材開発部門の方々は考えなくてはならないと思います。

中原:今日的な人材開発を行うには何が必要なのか、それを見極める「眼力」が求められているのです。特にAI時代においては、人材開発部門の方々にも、さまざまなデータに対する相応の分析力が求められます。

近年は、「チェンジマネジメント」の重要性が求められているように思います。

宇野:現在の職場は、大きく四つの世代が混在している「マルチ世代の時代」です。マネジメントする側は、世代や各人の特性・特徴に合わせて、対応していかなくてはなりません。これからは部下に対するマネジメントの仕方、エンゲージメントの高め方、動機づけの仕方など、組織としてありとあらゆる対応を変えていく必要があります。

また、マネジャー自身も世代が変わってきていることも見逃せません。現在のマネジャーの世代から、次の「ロスジェネ世代」へと移ると当然、マネジメントの仕方も「ロスジェネ世代」ならではの思考パターへと変わっていくでしょう。さらに、「ロスジェネ世代」が「ミレニアル世代」「Z世代」をマネジメントする時代を想定した場合、あらゆる点でこれまでのマネジメントとは異なってくることも予測できます。まさにこれからの10年は、「チェンジマネジメント」が待ったなしの状況となるわけです。

中原:世界ではすでに「ミレニアル世代」がマネジャーとなっています。宇野さんがおっしゃるように、待ったなしの状況であることは間違いありません。しかし、日本では依然として年功序列の制度・慣行が残っています。リーダーシップについても、残念ながら日本は「周回遅れ」の感が否めません。

思えば工場型のマネジメントは、決められた枠組みで仕事をこなす高度成長期には有効でした。しかし、変化の激しい現代では、そうしたマネジメントの仕方が通用しません。決められた枠組みは、どんどんと機械やAIに置き換わっていきます。そうした状況で、どのようなマネジメントを志向していくかが、問われているのです。

宇野:リーダーシップに関してはこれまで、自社が求める「リーダーシップ・コンピテンシー」がありました。しかし、それはもう過去のものになったと思います。これからの時代は、組織にいろいろなリーダーがいる方がいい。複数のタイプのリーダーがいる企業の方がいろいろな人材を活用することができ、成長し続けていくことができるからです。

「ミレニアル世代」の活用は、まさにその代表格と言えます。子どものころにほめて育てられた経験を持つ世代には、いろいろな「強み」や「尖った部分」を理解し、伸ばしていくアプローチが、才能を開花させる手がかりになると思います。

浦山:いずれにしても、旧来のやり方ではもはや通用しないことを、肝に銘じるべきです。これからは、リーダーをある型へとはめ込むのではなく、組織の中で「勝てるリーダーのパターン」を、できるだけ数多く作っていくことが大事です。人間は一人ひとり、違う素材で形作られているので、伸ばすべき方向も学び方も、人によって異なります。

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