-変化する労働市場における人材派遣業界の役割を考える-
「Ciettリージョナルワークショップ」
2012年3月6日(火)、社団法人日本人材派遣協会が主催する「Ciett リージョナルワークショップ―変化する労働市場における人材派遣業界の役割を考える―」が東京国際フォーラムで開催されました。本イベントは、人材派遣業の国際団体である「Ciett」(国際人材派遣事業団体連合)のアジア地区「リージョナルワークショップ」という位置付け。Ciettが2011年10月に発表した調査レポートをもとに、講演やパネルディスカッションが行われ、人材派遣がより良い労働市場の形成とディーセントワークの促進にいかに貢献できるかが議論されました。会場は、600名の定員がほぼ満員となる盛況ぶり。海外からも多くのゲストが来場し、人材派遣業界の関係者が一堂に会したこのワークショップは、まさに人材派遣業界の一大イベントという印象を受けました。本レポートでは、当日の模様をダイジェストでお伝えします。
日時 | 2012年3月6日(火)13:30~17:00 |
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場所 | 東京国際フォーラム ホールB7 |
主催 | 社団法人 日本人材派遣協会 |
■基調講演
「Adapting to Change」
Ciett専務理事 デニス・ペネル氏
■パネルディスカッション
「日本の労働市場の変化と人材派遣業界の役割」
◇ファシリテーター
八代 尚宏氏(国際基督教大学教養学部 客員教授)
◇パネリスト
鶴 光太郎氏(独立行政法人経済産業研究所 上席研究員)
濱口 桂一郎氏(独立行政法人労働政策研究・研修機構 統括研究員)
龍井 葉二氏(公益財団法人連合総合生活開発研究所 副所長)
松井 博志氏(社団法人日本経済団体連合会 国際協力本部副本部長)
アンネマリー・ムンツ氏(Euro-Ciett 会長)
坂本 仁司氏(社団法人日本人材派遣協会 会長)
基調講演「Adapting to change」(変化への適応)
Ciettのぺネル氏により「Adapting to change」(変化への適応)と題した基調講演が行われました。Ciettの調査レポートの要点を報告する形式で話が展開。世界の労働市場、人材派遣業界の現状などについての報告がありました。欧州の人材派遣は、「正規雇用の代替ではない」「労働市場の分断化を抑止している」という点が特徴で、日本との違いが浮き彫りになりました。ペネル氏は、政策立案者に対して「人材派遣業界に適切な規制の枠組みが整備されるよう確保」「人材派遣業界を独立した産業として認識すべき」「積極的な労働市場政策の立案・実施には人材派遣業界が関与すべき」の3点を提言しました。
パネルディスカッション「日本の労働市場の変化と人材派遣業界の役割」
次に、基調講演の内容を受け、「日本の労働市場の変化と人材派遣業界の役割」と題したパネルディスカッションが行われました。国際基督教大学の八代氏によるファシリテーションの下、経済学者、研究員、労働者側の代表、使用者側の代表、派遣業界の代表といった異なる立場のパネリストによって、幅広い議論が行われました。
まず、独立行政法人経済産業研究所の鶴氏が基調講演の内容をもとに、「派遣の浸透率が低下し続けている」「派遣社員が正規雇用に転換しにくい」「派遣社員の幸福度が低い」という3点を、欧州と異なる日本の人材派遣の特徴として挙げました。
そのほか、本ディスカッションでは、人材派遣業界に対して意見・提言や要望が数多く突きつけられました。
独立行政法人労働政策研究・研修機構の濱口氏は、「2000年代半ばから強化された派遣業界に対する規制は、派遣業界の戦略の誤りが原因なのではないか」という見方を示すとともに、業界が派遣労働者の声をすくい上げる仕組みをつくることを提言しました。労働者側の代表として、公益財団法人連合総合生活開発研究所の龍井氏が「派遣業界の皆さまには、将来的に業界が持続可能かどうか、真剣に考えていただきたい」と業界に対する要望を投げかけました。社団法人日本経済団体連合会の松井氏も「派遣法の改正は“妥協の産物”。派遣業界が法令順守を怠った結果」とした上で、法令順守の徹底を要請しました。
これに対して、日本と欧州の人材派遣業界を代表する立場から二人のパネリストがコメントしました。
社団法人日本人材派遣協会の坂本氏は、昨年の東日本大震災の際に人材派遣会社が果たした役割を強調するなど、人材派遣業界が果たしている役割を正しく理解してもらえるよう努力していく旨を述べました。Ciett欧州代表 欧州人材派遣事業団体連合のムンツ氏が、欧州と日本の人材派遣の違いを紹介した上で「このような対話の場、国際的な大規模イベントの開催が大変意義深いことであり、今後も進めていきたい」と述べました。
八代氏は、「パネリストの意見は『派遣労働者を保護する』という方向性では共通している」と総括した上で「派遣労働者のみを特別視するのではなく、正社員の問題とセットで議論する必要がある」と提言しました。
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海外との比較や、国内の異なる立場からの意見により、人材派遣業界が果たすべき役割について考えた、本イベント。人材派遣業界の皆さまにとって、今後のビジョン策定や事業活動の推進のヒントが得られたのではないでしょうか。
『HRプラザ』では、今後もHR業界のプロフェッショナルとしてぜひ聴いておきたい講演や、参加しておきたいセミナーなどのレポートをお届けしていく予定です。どうぞご期待ください。