『ビジネスガイド』提携

監督行政が“ブラック企業”対策強化!
今こそ確認しておくべき、長時間労働者の「健康管理」の実務
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労働衛生コンサルタント 村木 宏吉

2014/1/20
ビジネスガイド表紙
『ビジネスガイド』は、昭和40年5月創刊の労働・社会保険の官庁手続、人事労務の法律実務を中心とした月刊誌(毎月10日発売)です。企業の総務・人事・労務担当者や社会保険労務士等を読者対象とし、労基法・労災保険・雇用保険・健康保険・公的年金にまつわる手続実務、助成金の改正内容と申請手続、法改正に対応した就業規則の見直し方、労働関係裁判例の実務への影響、人事・賃金制度の構築等について、最新かつ正確な情報をもとに解説しています。ここでは、同誌のご協力により、2013年12月号の記事「行政指導・監督の傾向を踏まえた長時間労働者の健康管理の実務」を掲載します。『ビジネスガイド』の詳細は、日本法令ホームページへ。

むらき・ひろよし ● 1977年(昭和52年)に旧労働省に労働基準監督官として入省。北海道、東京、神奈川局の各労働基準監督署および局勤務を経て、2009年(平成21年)に退職。町田安全衛生リサーチ代表。労働衛生コンサルタント。元労働基準監督署長。労働基準法、労働安全衛生法、労災保険法等の著書多数あり。近著に「社労士のための建設業安全衛生コンサルティング実務マニュアル」(日本法令)がある。

2013年9月から、労働基準監督署による、いわゆる「ブラック企業」への集中的臨検(立入調査)が行われました(結果は http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000032425.html 参照)。また、神奈川労働局が行った調査によれば、申出のあった長時間労働者に対して義務付けられている医師による面接指導が徹底されていないことがわかりました。今後、これらの過重労働・長時間労働対策に関する指導・監督がさらに強化されていくものと思われます。

そこで、これらの指導・監督の傾向を踏まえた長時間労働者に対する健康管理のチェックポイント、実施するにあたり陥りやすいミスなどの留意点について説明します。

1. 2001年の労災認定基準改正以後、取締りが強化された理由

(1)発端は労災認定基準の改正

2001年に労災保険における過労死等に関する認定基準が改正され、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(平成13年12月12日付け基発第1063号)が発出されました。これは、前年に過労死等に係る訴訟において、労働省(当時)が最高裁で“3連敗”したことを受けて改正されたものでしたが、この改正により、厚生労働省は大変な危機感を抱きました。

なぜなら、改正内容が、週40時間労働を基準として、脳・心臓疾患を発症した直近1ヵ月に100時間を超える時間外労働等が認められるか、または、過去2ヵ月から6ヵ月を平均して80時間を超えていれば、業務の内容(過重性等)を見ることなく業務に起因するものとして労災給付を認めるという内容であったからでした。

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かつての高度経済成長期のような1週48時間労働制の時と比較すると、改正後の法定労働時間は、1週にして8時間、1ヵ月にして30時間あまり違います。ということは、改正前当時の基準からすると、1月に10数時間程度の残業を行う労働者が脳・心臓疾患を発症すれば、労災認定される可能性があるということになります。

これは、労災認定されるケースが増えるというだけで済む話ではありません。労働災害に基因する民事訴訟において1億円を超える賠償額が少なからず認められている昨今からすれば、この基準では、多くの企業が存亡の危機に立たされかねないということを意味していたのです。

そこで、その予防対策として「過重労働による健康障害防止のための総合対策」(平成18年3月17日付け基発第0317008号。平成20年3月7日付け基発第0307006号で一部改正)が発せられました。このところの長時間労働・過重労働による健康障害防止対策としての立入調査の強化は、これを根拠にしています。

(2)労災認定と取締りの強化の関係

近年マスコミを賑わせている事案に、印刷会社で働いていた労働者に胆管がんが多発しているというものがあります。2013年3月にそれらの業務に従事していて胆管がんが発症した場合には労災認定されることが認められ、それと同時に取締り(立入調査と行政指導)が強化されました。

同年10月1日からは労災認定に関する労働基準法施行規則が改正され、労働安全衛生法施行令の改正により原因物質が規制対象に加えられました。さらには、多数の被害労働者が出た大阪の印刷会社に対し、衛生管理者、産業医が選任されておらず、衛生委員会が開催されていないなど労働者の健康管理を怠っていたとの容疑で、4月に強制捜査が行われました。

労災補償の対象となる部分が拡大されると、取締りがその分厳しくなるという関係の典型的な例と言えましょう。

(3)長時間労働による健康障害防止対策は過労死予防対策

脳・心臓疾患の発症を予防するためには、健康管理をきちんと行うことと、長時間労働を抑制することが必要です。長時間労働を抑制するためには、労働時間を正確に把握する必要があります。正確に労働時間を把握していれば、賃金不払い残業(いわゆる「サービス残業」)は生じないはずです。逆に、賃金不払い残業の存在は、長時間労働の放置を意味しています。

2012年の労働基準法改正により1ヵ月当たり60時間を超える時間外労働の割増賃金の割増率が5割以上(中小企業は猶予)とされたのは、長時間労働抑制の目的も含んでいます。1ヵ月当たり60時間以下であれば、労働者が脳・心臓疾患を発症しても、それが労災と認められるケースはかなり減るからです。


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