『ビジネスガイド』提携

環境型、対価型のほかに「制裁型」「妄想型」が!
最近増えている新型セクハラの類型と、企業がとるべき対処&未然防止策
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一般財団法人女性労働協会専務理事・昭和女子大学特命教授 福沢 恵子

3. 新型セクハラその(2)―「妄想型」の特徴とケーススタディ

もう1つの「妄想型」は、自己中心的な思考と共感力・想像力の欠如が根底にあります。具体的には「彼女はきっと自分のことが好きに違いない」といった妄想を抱き、勘違いな行動に走るようなケースです。勝手な妄想に基づいて相手にアプローチし、断られても「彼女は嫌がるふりをしているけれど、本当は自分のことが好きなのだ」と固く信じ込み、女性からの「やめてください!」という拒絶もまったく意に介さず、執拗につきまといます。そして、強硬な拒絶にあった後は逆恨みに走ったりするので、非常に厄介です。

「妄想型」の場合も「制裁型」と同様、本人にはセクハラ行為をしているという自覚はないので、加害者になっている自覚も当然ありません。しかし、被害者は望まない相手からしつこく誘いを受けたり、愛情表現をされたりすることで対人恐怖に陥ってしまったり、「相手をこのような行動に走らせてしまったのは、自分にも何かスキがあったからではないか」と、激しい自責の念に駆られてしまったりします。そして、美しく装ったり化粧をしたりすることに恐怖心を感じるまでになったりもします。

(1)ケーススタディ

入社1年目のC子さんは、大学時代にミスコンテストへの出場経験もある美人です。3年先輩のDさんに付きまとわれる状態が、入社2ヵ月目からもう半年近く続いています。

Dさんは「C子の面倒は俺が見る!」と公言し、細かい仕事上の指導や生活上のアドバイスをしていました。最初のうちはC子さんも先輩の親切心からの指導かと思っていましたが、「この間の休日は何をしていたのか報告せよ」「次の休日は自分と一緒に過ごすべきだ」「今日の服装は自分好みではない」といった発言がなされるに至り、だんだん不快感や窮屈さを感じるようになりました。しかし、周囲は「面倒見のいいDさん」としか捉えておらず、C子さんは不安を感じていますが、相談できる人も見つからないまま途方に暮れています。

(2)解説
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DさんがC子さんの「新人指導」をするよう、会社から任命されていたとしても、その指導はあくまで業務遂行に必要な範囲でなされるべきものです。個人的な生活にまで及ぶ常軌を逸したレベルでの関与は、迷惑行為と判断すべきものでしょう。特に休日の行動について報告を義務付けたり、自分と一緒に過ごすことを強要したりすることは、職場での立場を濫用した行為と言えます。

このケースでは、DさんがC子さんの「教育係」となったのはあくまでも私的に立候補したからであって、オフィシャルに任命されたものではありません。したがって、D子さんがDさんの指揮命令に従う必要はなく、相談窓口ではまずその事実をD子さんに確認する必要があります。

そのうえで、新たな「教育係」を任命することで、DさんがD子さんに関与する機会を極力減らします。そのためには、まず直属の上司に「教育係」の人選等を相談する必要があります。

(3)とるべき対応

自分の職場でこのようなことが起きてしまった場合の対処について、以下では、同僚の立場と上司の立場に分けて考えてみたいと思います。

【1】同僚

ア 記録を取る
この種の被害を目撃したら、まずは記録を取るべきです。「制裁型」「妄想型」のいずれも、自分が攻撃の標的にならないとは限りません。その場で「いつ、どこで、誰が、誰に対して、どのような行為を行ったか」を簡単なメモで構いませんので、記録に残しておくことが大切です。

イ 被害者への声かけをする
被害者に「あれって、ひどいよね?」といった言葉をかけてみることも必要でしょう。被害者のダメージがあまりにひどい場合は、「傷ついた」ということを言語化できない場合もあります。被害者があまり多くを語らなくても「力になれることがあったらいつでも言ってね」というフォローの言葉をかけるとともに、上司や社内の相談窓口への相談を勧めるべきでしょう。

ウ 被害者から相談を受けた場合
また、被害者から相談を受けた場合、まずはひたすら傾聴することです。その際も事実関係を明確にするために、本人の同意を得たうえで記録を取ることを心掛けましょう。そのうえで、被害者がどのような解決を望んでいるかを確認して、必要なサポート体制を考えます。

【2】上司
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ア 被害者と加害者を引き離す
被害者の上司としてこの種の問題に遭遇した場合、まずは、被害者と加害者を引き離すべきです。これは被害者のストレスを最小限に抑えることが一番の目的です。

イ 被害者・加害者双方から事情を聴取する
そのうえで、加害者、被害者それぞれから事情聴取を行います。多くの場合、加害者にはセクハラ行為を行ったという自覚もないので、指摘を受けても「自分にはそんなつもりはなかった」という反応が返ってくる可能性が高いでしょう。しかし、上司としては、そこで「迷惑行為をしているつもりはないと思っていても相手は必ずしもそうは思っていない」ということを丁寧に説明する必要があります。

ウ 無自覚な加害者に対する指導
「相手に迷惑と思われる行為はすべきではない」という指導を行うべきでしょう。加害者のセクハラ行為が「制裁型」である場合には、「自分の独自の価値観によって相手に一方的な期待をしてはいけない」、または「そのような行為は懲戒対象にもなり得る」ということも同時に伝えるべきです。

エ 自力による解決にこだわらない
ア~ウのような対応をしても状況が好転しない場合については、人事部や社内の相談窓口に当事者を伴って相談するという方法もあります。管理職は「自分の力だけですべて解決しなくてはならない」と思い込まず、必要に応じて他者の力を借りることも積極的に行うべきです。


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