弁護士 浅井隆(第一芙蓉法律事務所)
今回は、“問題社員の段階までは至らないがそれに近いグレー問題社員”にどのように対応したらよいかにつき、筆者のこれまでの経験を基に解説することとします。
本記事で取り上げる「グレー問題社員」の、いくつかの具体例を挙げてみましょう。
上記(2)の具体例からもわかる通り、このような社員を放置しておけば、その問題行動が改善されることなく永遠に続くことになります。
それは、上司には苦痛でしょうし(もし苦痛を感じなければ、上司としての能力がないということ)、同僚もそんな勤務状況で許されるのかと思い、向上心のある同僚は、やる気を失い見切りをつけて転職したりしてしまいます。向上心のない同僚なら、この「グレー問題社員」と同じような問題行動をすることになります。
そういったことが続けば、組織は傷つき、業務効率は落ち、企業の存続すら危ぶまれることになります。最高裁も、「企業は、その存立と事業の円滑な運営のために、それを構成する人的要素(労働者)と物的施設を総合し、合理的・合目的的に配備組織して企業秩序を定立し、その下に活動を行うもの」(国鉄札幌運転区事件・最3小判昭54.10.30)と判示しており、要するに、企業は人(と物)の有機的結合体であって、単なる人の集合体ではないこと、その結合体は一定の「合理的・合目的的」なものであること、を明確にしています。
したがって、企業(使用者)としては、グレー問題社員の行動が改善されないまま上記の事態になることを回避するため、しっかりした人事労務上の対応をする必要があるのです。
グレー問題社員への対応を考えるうえで、類型化はとても大切です。なぜなら、その問題性の特徴に応じた効果的な手段を考えることが容易になるからです。そこで、グレー問題社員を次のように類型化し、上記1(2)の典型例も含めて、さらに具体例を挙げてみましょう。
その問題社員の前段階であるグレー問題社員も、その延長線上に整理することが可能です。上記類型化とパラレルに整理します。
これらがよく相談を受ける例です。いずれにしても、労務提供の量的不良であって不完全履行(民法415条)であるとともに、職場秩序に悪影響を与える非行と言えます。
労務提供は量的には不足はないですが、企業や職場は「合理的・合目的的」に一定の目標に向かって社員みんなが働くところなので、上記のような労務提供は、質的には不良、その意味で労働能力としては欠如していると言え、不完全履行(民法415条)であるとともに、職場秩序に悪影響を与える非行と言えます。
セクハラ・パワハラ一歩手前の行動をとる、すなわち、聞く側にとってはセクハラ・パワハラに感じられるような言動をする類型のことです。
例えば、次のようなものがあります。
これも最近多く受ける相談です。
読者の皆さんが抱えるグレー問題社員の多くは、上記の具体例に類似することが多いと思います。その場合には、皆さんのケースに類似する型について次ページ以降の解説を参考に対応していただければと思います。