『ビジネスガイド』提携

改善コンサルタントが教える過重労働対策
残業削減&企業リスク軽減につなげる
「業務終了命令書」「帰宅命令書」の活用方法
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特定社会保険労務士 橋本智明

3. 残業削減策・企業のリスク軽減策としての
   「業務終了命令書」「帰宅命令書」の作成方法・活用方法

(1)業務終了命令書

【1】業務終了命令書の意義

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まず、会社が労働者に時間外・休日労働を行わせる場合は、時間外・休日労働申請書(以下、「申請書」という)を労働者から提出させて、これに対して会社が承認を与える方法が有効とされます。ただ、申請書を導入しても、制限せずに時間外・休日労働を認めることは、労働者にとっても、健康上問題がありますし、会社にとっても大きなコストとなってしまいます。それに労働者の中には、周囲のことも顧みず心ゆくまで残業を行う労働者も見受けられます。このような場合に、申請書に、これから述べる業務終了命令書を付加することで、無駄な残業、健康上問題となる長時間残業や一定以上の時間外労働をストップさせることが期待できるのです。

業務終了命令書は「どんな業務を、どこまでやったら、業務を終了するように」と、明確な業務命令として、労働者に業務終了を促します。労働者は、明示された範囲で就労すれば足りる反面、使用者が明示した以上の仕事を自ら行ったとしても、その時間は労働時間とは認められません。

このような扱いは、ニッコクトラスト事件(東京地裁判決平成18年11月17日)において、労働者自身の判断で、使用者から指示された実労働および業務委託の範囲をはるかに超えて業務に従事した結果、実労働時間が増加しても、時間外労働とは認められないとして、示されているものです。

【2】業務終了命令書発行の流れ

業務終了命令書発行の流れは、次の通りです。

1.申請者が仕事の内容、計画、手配、段取り、後工程などを含めて「業務内容」、「達成目標」、「理由」を考えて、申請書を作成し、上長に提出

2.上長が申請内容を検討し、時間外労働を許可した場合は、課長に申請書を渡す

3.課長は受け取った申請書を確認し、業務終了時間や目標を達成できなかった場合の対応を記載して、申請者に業務終了命令書を発行する

4.申請者は、時間外労働を行った日の翌日に勤務結果を報告し、申請内容と誤差が出た場合は、その理由を明らかにして業務終了命令書に明記する

5.課長は申請者から「時間外・休日労働申請書」「業務終了命令書」を回収する

【3】時間外・休日労働申請書付き業務終了命令書の効果等

「業務終了命令書」は、時間外労働時間が特に長い労働者に特定して使用するものです。

特徴は、「時間外・休日労働申請書」と「業務終了命令書」が接着している点で、労働時間削減効果がすぐに出やすい形式となっていることです。時間外労働時間がさほど長くない労働者については、申請書だけでもよいと思いますが、労働時間削減意識、業務改善意識を継続させるために、勤務結果報告はさせるべきです。

■ 業務終了命令書の作成例
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(2)帰宅命令書

【1】帰宅命令書の意義

さらに、会社が業務終了命令書を発行したにもかかわらず、労働者がその指示命令を無視して時間外労働や休日労働を続けることに対して、威力を発揮するのが、次に述べる「帰宅命令書」です。

「帰宅命令書」は、主に次の2つの理由から発行します。

1.労働基準法36条の協定を超える労働は同法32条違反になるので、時間外労働、休日労働をさせないため
2.使用者は労働契約に付随して安全(健康)配慮義務を負うことから、すべての労働者の安全(健康)を守るため

【2】帰宅命令書発行の流れ

次に掲げる安全(健康)配慮のための基準に該当する、あるいは、該当しそうな場合に帰宅命令書を発行します。

■発行基準の参考例

裁判上の基準
年間総労働時間3,000時間を超えてはならない。
川崎製鉄(水島製鉄所)事件(岡山地裁倉敷支部判決平成10年2月23日)

過労死認定基準
・ 1ヵ月100時間(休日労働含む。以下同じ)を超す時間外労働。
・ 2~6ヵ月平均80時間を超える時間外労働。
・ 毎月45時間を超える時間外労働。

適法基準
労働基準法36条の協定時間を超えて労働させてはならない。

【3】帰宅命令書の作成例

この「帰宅命令書」は、発行基準を超える時間外労働をした労働者に出すものです。

■ 帰宅命令書の作成例
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4. 労働者の自己保全義務を喚起する

本記事では、「特に労働時間の長い労働者」の是正方法を企業側の視点だけで考えましたが、自分の健康は自分で守ることは当然ですし、労働者には通常の労働力を提供するために、勤務時間終了後、または休日・休暇には十分な休養をとる義務があります。

最近は、企業の健康管理責任が強調されるあまり、労働者の自己保全義務の必要性に対する意識が低いケースが見受けられるところですが、本記事で紹介した書式を活用することは、それを再認識してもらううえでも有効かと思われます。


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