『ビジネスガイド』提携

労働関係・社会保険の改正項目を一元整理

社会保険労務士

安部敏志

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3 複業の推進とセーフティネットの整備

高年齢者の活用と同様に、少子高齢化に伴う労働力不足への対応として期待されているのが複業です。

実際、複業に対する働く人のニーズは高まっており、そうしたニーズを踏まえ、国も近年複業を推進している状況です。

しかし、現在の雇用保険制度や労災保険制度は、「一人が1社で働く」という前提で設計された制度となっており、複業の推進の阻害要因となっています。例えば、現在の雇用保険制度では、複数の事業所で働いている人であっても、雇用保険被保険者になれるのは一つの事業所でのみであり、週の所定労働時間が20時間未満であれば被保険者の対象になりません。

また、現在の労災保険制度では、例えばA社とB社で複業していてA社で業務災害に遭った場合、労災保険給付はA社の賃金額のみを基に計算されますが、実際にはA社だけでなくB社でも勤務できなくなるはずであり、B社からの賃金をまったく得ることができなくなってしまいます。

このように国が複業を推進する一方で、失業や被災した場合の法制度のセーフティネットとして不備がある状態であったことから、改正がなされたものです。

1.被保険者期間の算入基準に労働時間を追加

まず、令和2年8月1日から、被保険者期間の算入基準として、労働時間が補完的に追加されます。失業等給付の受給のための被保険者期間に算入する基準として、従来から「賃金支払の基礎となった日数が11日以上である月」という条件がありますが、これを満たせない場合、「当該月における労働時間が80時間以上」という条件を満たす場合には、被保険者期間に算入されることになります。

現在、週の所定労働時間が20時間以上、雇用見込み期間が31日以上である等の要件を満たせば、雇用保険被保険者として適用されますが、例えば、週2日と週3日の労働を定期的に継続する場合には、雇用保険被保険者の資格を満たすにもかかわらず、賃金支払の基礎となる日数が11日未満となることがあり、失業等給付の受給のための被保険者期間に算入されない状況が生じています。法改正により失業等給付の受給者の増加が期待されます。

2.複数業務要因災害に関する保険給付の導入

また、公布後6月を超えない範囲内で政令で定める日ということで、令和2年中に施行される改正内容ですが、複数就業者の複数事業の業務を要因とした労災保険給付制度が創設され、複数就業先の賃金に基づき給付基礎日額が算定されます。これにより、上記のようなA社で業務災害にあった人が労災保険給付を受給する際には、A社の賃金額だけでなく、B社の賃金額も基に給付額が計算されることになります。

通勤災害についても、通勤は労務の提供と密接な関連をもった行為であり、業務災害に準じて保護すべきものであるとの考えから、複数就業先の賃金を合算したうえで給付額が算定されることになります。

ただし、労災保険制度における複数就業者とは、被災(疾病の発症を含む)したときに以下に該当する者を指します。

① 同時期に複数の事業と労働契約関係にある者
② 一以上の事業と労働契約関係にあり、かつ他の就業について特別加入している者
③ 複数就業について特別加入している者


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